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101 おまけ➂




【自慢大会】



 五十鈴さんのいる1-1組。

 クラスの男子たちは放課後、教室に集まっていた。


「俺たち…ついに成し遂げたんだね。あの五十鈴さんと距離を縮めることが出来たんだ!」


 クラスの男子代表である池永くんが歓喜の声を上げる。


 学園祭の時、クラスのみんなは少なくとも一回は五十鈴さんと学園祭を回れている。それは華岡学校の全校生徒が羨む所業だ。


「俺は五十鈴さんと三回も学園祭を回れた」

「ふ…五十鈴さんと十秒も目を合わせたぜ」

「拙者は五十鈴殿と向かい合って食事しましたぞ」


 男子たちはどれだけ五十鈴さんと関われたか、自慢大会を始めていた。それだけ五十鈴さんとお近づきになれたことが嬉しかったのだ。


「黙って聞いていたら…片腹痛いね!」


 そんな男子たちの輪に割って入る女子の声。


「野田さんたちか…」


 池永くんたち男子の自慢大会に、野田さん率いる女子組が乱入してきた。


「私なんて五十鈴さんの腕に抱きついたもん」

「うちは喫茶店のケーキであーんした」

「五十鈴さんがくまのぬいぐるみ好きだっていう情報を聞き出したよ」


 女子たちはかなり大胆に五十鈴さんとの距離を縮めていた。こればかりは男子には真似できない。


「いや、だが俺たちだって…!」


「私たちなんて~!」


 クラスメイトたちは日が暮れるまで、五十鈴さんの話で盛り上がった。


 当然だがその話し合いに五十鈴さんグループは参加していない。


「…盛り上がってるな」


「前より団結力が高まってるよね」


 そんな教室の様子を廊下から覗き見している西木野さんと城井くん。


「西木野さんも輪に加わったら?」


「いや…私が今までのこと自慢したら大人げないでしょ」


 西木野さんたちはこれまで何度も五十鈴さんと一緒になって遊んでいる。その全てを自慢したら、折角の自慢大会に水を差してしまう。


「でも五十鈴さんの誤解がクラス内だけでも解けて良かったね。クラスの外では相変わらず冷徹なお嬢様だって誤認してるけど」


 城井くんは傍観者として、五十鈴さんの周囲で起きる出来事を観察して楽しんでいた。


「ふーん…ねぇ城井。五十鈴さんのノートって知ってる?」


 唐突に西木野さんはそんな質問を城井くんに投げかける。


「ノート?何の教科の?」


 だが城井くんは質問の意図を読めていない。

 五十鈴さんのあらゆる噂を集めている城井くんだが、あのノートに関しては知る由もない。


「いや、知らないならいいや」


「…なにその意味深な質問。どういうこと?」


「さーてね」


 城井くんに軽く情報でマウントを取ってから、西木野さんはこの場から立ち去った。


 何はともあれ一年生のクラスメイトたちは、五十鈴さんと関わることが出来て大満足のようだ。





【朝香さんと園田くん】



「お~い、園田くん」


 ある日、朝香さんが園田くんに話しかけてきた。


「どうかしました?」


「これをプレゼントするね~」


 徐に朝香さんは花の入った小瓶を園田くんに手渡す。


「これは?」


「私が作った鈴蘭のポプリだよ」


 朝香さんは花を使って香りを作ることが趣味で、作った香りをよく友人に振りまいている。星野さんや木蔭ちゃんから花の香りがする時は、朝香さんが原因だ。

 

「ありがとうございます。本当に朝香さんは花の香りが好きなんですね」


「花の匂いも好きだけど、人の匂いも好きだよ」


「人の匂いですか?」


「うん、嗅ぐだけで相手がどんな人なのか分かるよ~」


 すると朝香さんは急に園田くんとの距離を詰め、くんくんと匂いを嗅ぎ始めた。


「園田くんは良い人の匂いだね~」


「あ、朝香さん…?」


 急に距離を詰められ戸惑う園田くん。


「でたよ…希の悪い癖」


 そんな二人のやりとりを見ていた西木野さんが苦笑する。


「希は小さい頃から距離感を考えないから、それで何人もの男子を勘違いさせてきたんだ」


「に、西木野さん…何とかしてくださいよ」


 朝香さんに捕縛され身動きが封じられた園田くんは、西木野さんに救いの手を求める。


「え?私らにしょっちゅう囲まれて女馴れしてる園田なら平気だろ」


「この僕が女馴れするわけないじゃないですか!」


 一般男子代表である園田くん。

 これまで様々な女子たちと関わってきたが、女子に対する耐性はまったく成長していなかった。





【出雲さんと園田くん】



「おい、園田」


 ある日、出雲さんが園田くんに話しかけてきた。


「はい?」


「社会の窓が開いてるぞ」


「あ…」


 出雲さんに指摘され園田くんは慌てて身だしなみを整える。


「あ、ありがとうございます」


「気を付けろ。そんな状態で五十鈴さんの前に立ってみろ、その窓を叩き割るぞ」


「怖いこと言わないでくださいよ…」


 五十鈴親衛隊である出雲さんは常に目を光らせている。警戒対象に例外はなく、最も身近な園田くんですら警戒していた。


「おーい出雲さん」


 すると星野さんが現れた。


「次の休みの日、五十鈴さんたちみんなで買い物に行かない?」


 五十鈴さんグループからの遊びのお誘いだ。

 夏休みの時にバッタリ遭遇してから出雲さんは、他のクラスメイトより五十鈴さんたちと親しくなっている。五十鈴さんも出雲さん相手ならそこまで緊張することはない。


「いや…その日は家の用事がある」


「そっか~」


 だが出雲さんはお誘いを断った。

 家の用事なのだから仕方ないと星野さんは引き下がる。


「出雲さん、あまり五十鈴さんたちと遊んでませんよね」


「…」


 園田くんはずっとそのことに違和感を覚えていた。


 西木野さんたちはもっと出雲さんと仲良くなろうと、お昼を誘ったり遊ぶ約束をしたりしていた。だが出雲さんは大半を様々な理由で断っている。

 まるで五十鈴さんとの関わりを避けているようだった。


「…私は自分の立場をわきまえているだけだ」


 そう言い残して出雲さんはこの場から立ち去った。


「うーん…」


 どうやら出雲さんにはまだ心の壁があるようだ。

 その壁を一年生の間に壊せるのか、それとも壊せないまま別のクラスになってしまうのか。こればかりは園田くんの力ではどうにもならないことだ。

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