第三話「ハガキ」
第三話「ハガキ」
時刻はお昼を指していた。
いつものように、レイは庭の剪定をしていた。そんなとき、遠くから声が聞こえた。
「レイさーん!!」
向こうから走ってやって来るのは、使用人のマセル・ルーだ。マセルはメイドながらにして、物凄くドジな女の子だ。歳もカレンとほぼ変わらないくらいだが、カレンの方がはるかにしっかりしている。
「どうしたんです?マセル」
マセルは息を切らしながら、手に持っていたものを差し出した。
「こ・・・これ、カレン様宛てのハガキです・・・」
「ご・・・ご苦労様です」
そう言ってレイは、マセルからハガキを受け取った。確認のため差出人を見てみると・・・
「ん?」
そこには、
“すぐ行くぜ!!〜arva〜”
とだけ書かれていた。
背景にはなぜかペンギンの絵が描かれており、レイにはそっちの方が気になっていた。
この時期にアルヴァ様が・・・?一体何の用事だろう・・・。
レイが考えるのも無理はない。アルヴァはいつも、カレンの誕生日パーティーか、大きな催し事がない限り、仕事が忙しいのでこちら(イタリア)に戻ってくることはあまりない。しかし今回は、アルヴァの方からハガキを遣し、大きなパーティーも開かれる予定はない。
何か急用でもあるのだろうか。
「おっといけない。お嬢様のお迎えの時間だ」
そう言うとレイは、ハガキをポケットにしまい、車のある車庫へと向かった。
キーンコーンカーンコーン。。
チャイムが鳴ると同時に、カレンは目を覚ました。
「あ・・・寝てた」
ちょうどここは一番後ろの席なので、先生には死角になって寝ていても一切気付かれない。終わりのチャイムで目覚めることなんて、カレンにとってはしょっちゅうだ。
「ん〜・・・帰るか・・・」
大きく伸びをしたあと、鞄を持って外に出た。
そこにはちゃんと、レイが待ち構えている。
「お迎えに上がりました。お嬢様」
「ありがと」
「あ、お嬢様」
車に揺れながらうとうとしていたが、レイのハッとした声で目が覚めた。
「どったの?」
「先ほどアルヴァ様から、すぐ帰るというハガキが届きました」
「げっ!!!!まじかよ・・・アイツ苦手。すぐっていつ?」
「それがー・・・」
カレンは背中に悪寒が走るのを感じた。
まさか・・・
「もういらっしゃってます」