第一話「いつもと同じ」
第一話「いつもと同じ」
私の名前はカレン・ファン・フィオーネ。
あれから10年が経ち、私は17歳になった。
今日もまた、レイの声で目が覚める。
「・・・お嬢様、起きてください。お目覚めの時間ですよ」
「んー・・・?」
ゆっくりと目を開けると、レイが私の顔を覗き込んでいた。
「ほら。遅刻しますよ」
「休む」
ガバッと布団を頭までかぶり、もう一度夢の中に行こうとした・・・が、レイが布団を剝ぎ取り、それは阻まれた。
「またそのようなことを言って・・・お父様がまた嘆かれますよ。ほら。お早く」
そう言ってレイは制服を渡してきた。
そうなのだ。
お父様は物凄く過保護だ。
だから私が学校に行かなかったら、イジメと勘違いして学校まで乗り込んで来るほどだ。(経験アリ)
そんなことを考えていると、またもや睡魔が私を襲う。
「お食事の御用意ができましたよ・・・って、まだそんな格好でいらしたんですか?」
制服を半分だけ着て、ボタンは止まっていないまま私はうつらうつらとしていた。
「まったくあなたは・・・ほら、ちゃんとボタンも止めて」
「む〜・・・」
「むーとか言わない!」
レイって本当、お母さんみたい。
「まったく」とか言いながら、なんでもやってくれる。
そう言えば昔、街を歩いてたら、お店の人に兄妹と間違われたっけ。よくあることだ。ある時は、親子と間違えられた。でも未だ、「恋人」とは間違えられていないなあ・・・。
やっとの思いで朝食をとり、身支度を済ませた時には、もう授業10分前だ。ここから学校までは、早くても車で15分はかかる。
「これならいっそのこと休・・・」
「いけません」
ですよね・・・。行くっきゃないのか?
「忘れ物はございませんか?」
最終確認。最近は毎日される。それは、私がしょっちゅう忘れ物をして、レイに届けさせるからだ。レイもいい迷惑なんだろう。
「今日はないと思うよ」
「・・・アバウトですね。まあとにかく、ロビーへ降りましょう」
「ん」
2人は車の待つロビーへと向かった。
「おはようございます。お嬢様」
使用人の総勢300人が両脇に出迎える。「おはよう」や「いってらっしゃい」を何回返せばいいのだろう。だから私は、5人に一回の割合であいさつを返している。私を責めないでくれ・・・5人に一回でもキツイんだぞ。こんな小さな屋敷にこんなに使用人はいらないとお父様に交渉してみたが、これも過保護。私の管理を徹底させるためだそうだ。だからボディーガードも他のお嬢様より数倍多い。私はボディーガードに囲まれる毎日だ。でもレイが車を運転したり、レイと一緒に行く買い物などは、なぜかボディーガードは一人もつかないのだ。
「さあ、お乗りください」
いつのまにかあいさつの嵐を過ぎ、レイがドアを開けていた。
「ああ、ありがと」
「では、いってらっしゃいませ。お嬢様」