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――創世記―― 第一章 第三節 アナザーワールド

初めまして!

 このたびは アナザーワールド の 世界へ ようこそ!


 この世界ゲームでは あなたの 思い通りに 異世界を つくれるよ!


 さっそく エディット してみよう!


 まず はじめに ゲームマスターである あなたの 姿アバターを 創造してみよう!


 あなたの名前は?

 ――ユカリ。


 あなたの性別は?

 ――女。


 髪型を選んでね!

 ――セミロング。


 瞳の色を選んでね!

 ――……ゴールド。


 表情を選んでね!

 ――(あ、これあたしソックリ……)ネガティブの3。


 体格を選んでね!

 ――(も、もちろんグラマラスな感じに決まってるじゃな……あ、このスレンダー豊乳もいいかも……うぐっ……顔が似てるだけになんか現実が惨めに見えてくる……いやいや、現実なんてクソ喰らえよあたし! ゲームの世界くらい夢見させてよね)っと、こんな感じ。


 職業クラスを選んでね!

 ――(クラス? どんなのがあるんだったっけ……)ヘルプ、っと。


 職業クラスについて説明するよ!

 ゲームマスターは 自分の 作った 世界で 自由に 魔法や技を 作れるから そういった技能スキルは 関係なく 姿アバターとしての 見た目を 選ぶことに なるよ!

 もちろん あとから 変更も 可能だよ! どんな 職業クラスに なっても 魔法や技などは なんでも 設定 できるからね!

 例えば あなたの 作った 姿アバターなら これなんか いいんじゃ ないかな?


 ――(どれどれ……へー、なんか天使って感じの見た目。結構いいかも……でもなぁ、天使っぽい見た目ってなんかあたしじゃない気がする……)違うのは?


 じゃあ これは どうかな?

 ――(おー! なんかすっごくカッコイイ感じのローブ! 魔法使いというよりは、なんか賢者みたいな見た目だな……ま、確かに、私という優れた頭脳の持ち主なら、どんな教科の赤点課題もビクともしないほどできないわけで……はぁ……。まぁあれよ、できなんじゃなくて、やらないだけだからね! 勘違いしないでよね!)

 ってことで、私らしく賢者っぽいこの見た目にしよう!


 職業クラス最高司祭アークビショップで いいかな?

 ――(アークビショップ! って、教会とか神殿とかに居そうな人だよね! 賢者ではないみたいだけど、なんか見た目も可愛いし、これでいいかな!)YES!


 服の色を 選んでね!

 ――(え、まだ考えるの? 面倒くさくなってきた……けど、ここまでやったんだし、いっちょ最後まで作ったろか!)えーっと、白を基調にして……飾りは黄色にオレンジを混ぜてメタリックな感じ……うんうん、金色っぽい! これで、オッケー……っと!


 お疲れ様! これで あなたの 姿アバターは できあがり! すーっごく 可愛いね!

 ――(ま、まぁね! もともとが可愛いんだから当たり前よ!)


 ちなみに 作った 姿 は あとで 細かく 作り直す ことも できるから やってみてね!


 じゃあ 最後に 作りたい 世界を 選んでね!

 1つめ! 初心者に オススメの 2Dタイプ!

 平面の フィールドや マップ ダンジョンが 作れるよ! 平面 なので 俯瞰的に 管理が しやすいのが 特徴だよ!

 2つめ! 中級者向け 立体型2Dタイプ!

 マップや ダンジョン キャラの 動きや カメラを 動かせる 平面にして 立体的な 世界が 作れるよ! 360°の 角度で 作るから 少し チェックが 大変に なるかも!

 3つめ! 最後は 上級向け 3Dタイプ!

 フィールドマップの 凹凸から 建物の高低差 奥行を作れるよ!

 完成したら 今 流行りの ゲーム 顔負けの 自分好みの アクションRPG だって 作れちゃう!

 でも その分 隅々まで チェックして いくのに 時間が かかっちゃうかも! でも 安心して! 僕たち が あなたの 作りたい 世界を 作れるように サポート するからね!

 ――(ふふふ、これこそあたしの希望通り! AIを活用した思念伝達操作! これさえあれば楽勝よね)


 さぁ どのモードで 世界を 作りたい?

 ――(とはいえ、難易度だよなぁ)


(うーん、そうだなぁ……せっかくだから……)


 決まりだね! それじゃあ 夢と 希望に あふれる 新しい 世界を 作りに・・・ レッツゴー!



 ◇◇◇



 ユカリの元に1台の最新型ゲームが届いた。

「アナザーワールド」という名の、異世界創作ゲームである。

 豊穣ほうじょう ゆかりと幼なじみで同じ大学に通う櫟木くぬぎ 燈火とうか、後輩である勅使河原てしがわらの3人で企画を立ち上げ、ゲームメーカーとのコラボにより誕生した、未だ世界に一つしかないゲームだ。

 無事に完成させたご褒美ということで、テストプレイをすることになった。

 本当は他の二人と一緒にやるべきだが、二人を出し抜いて勝手に始めたのだった。


「いろいろと作っておいて、二人を驚かせるぞー!」


 そう意気込んでゲームを起動した。


 初めは何も無い、黒い空間が見えた。

 その中にぷかりと宙に浮かぶユカリの姿がある。

 辺り一面真っ暗だと言うのに、不思議と自分の姿ははっきりと見えた。


(すごい! まるでゲーム……って、ゲームの世界だった……さてと、どんな世界を作ろうかなぁ)


 頭の中に直接声が響くように、AIが話しかけてきた。


『ユカリ様の世界を作りましょう。手始めに、景色をイメージしてください』

(景色かぁ……)


 景色と聞いて無意識に思い出した光景があった。

 果てしなく広がる夜空――そこに降り注ぐ流星の雨、夜露に濡れた草原の匂い――子どもの頃、幼なじみのトウカや、家族で行ったキャンプで見た高原の景色。

 今はもう見ることのできないあの景色を――。


 そう考えているうちに、黒一色の世界が色を付け始めた――。


 草原の匂い――。

 星明かりに照らされた、小高い山のキャンプ場。

 幼い二人が寄り添いながら星を眺めている。

 背後には――二人の大人の姿がある――なぜだか表情がよくわからない。

 でも、きっとここにいる二人は――私の両親なのだろう――。


 頬を伝う雫。

 そんな感覚が仄かに感じられるというのに、今この場にいるユカリに表情はない。

 ただそこに映る世界を見つめ、宙に浮いているだけだった。


 ユカリは小刻みに頭を何度か揺さぶる。

 詰まる胸が張り裂けないうちに、と、この場にいる人物の姿を消した。


(怖いな――こんなことまで復元されちゃうんだ――)


 ユカリはその星の降る丘を飛び立つと、AIに用意された世界(デフォルトマップ)――もともとプログラムに組み込んでいた模造データ――を作るよう命じた。

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