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第6話 二回目の評議会(後編)

 評議会の開かれている次元のはざまにある会議室にて、俺は邪竜姉妹を抱きしめてハーレムエンドを身近に感じていた。


 だが、しかし。


 唐突にルベルの声が響いた。

「同じ言葉、姉妹がドラゴンの姿に戻っても言えるとは思えないんだが」

 円卓の上座に座るルベルが、胸の前で腕組みをして俺を訝しそうに睨んでいる。


 ふと見れば、ドミナさんやスクラシスも不機嫌そうなジト目で俺を見ていた。


 ――あれ? 姉妹だけを構いすぎた?



 不穏な空気に戸惑いつつスクラシスをすがるように見つめると、彼女は銀髪を掻きながら呆れた吐息を漏らした。

「百歩譲ってハーレムを認めるとしてもじゃ、そもそもアレクはハーレムを勘違いしてはおらぬか? たとえば王侯貴族の作るハーレムは、女性一人に一つの部屋が与えられて、男が毎日別の部屋に通うのじゃぞ? なぜ全員と一緒に寝ようとしておるのじゃ」


「そんなの、誘われなかった女性が寂しい思いをするからに決まってるじゃないですかっ」

「一緒に寝る方が恥ずかしいではないかっ!」

 ルベルが紅の髪を乱して円卓を叩いた。何を想像したのか頬が少し赤く染まっている。


 俺は邪竜姉妹を抱く腕に力を込めつつ、笑顔で言い切った。

「俺は欲望のためなら不可能を可能にする男! 五人同時にムードを盛り上げてそのままベッドインしてみせますよ!」



「いや、さすがにそれは無理だ」

 呆れ顔のルベルに対して、俺は抱いている姉妹の頭をぽんぽんと優しく撫でた。二人の髪の柔らかさが指に心地よい。


「それにそういうムードに持ち込めるってことは、五人はすでにメロメロのはず。俺をサポートしてくれたっておかしくない状況ですよ?」


「ほほう。確かにいじわるしすぎたのう。そこまで言うなら協力してやるのじゃ」

 スクラシスが悪巧みするかのように、口の端をゆがめて笑った。


「ありがとうございます! それなら手強そうなスクラシスとドミナさんをまず落とします!」

 俺は姉妹を手放すと、瞬時に移動して邪神と魔女の間に立った。



 取り残されたケイが不安そうに眉を寄せる。

「ふぇぇぇ……最初はあたしじゃないんですかぁ?」

「妹を大切にしてくれって言ってんでしょ」


 俺はスクラシスとドミナを立たせて両手で抱き寄せつつ、ケイを見る。

「そう、それ! 邪竜姉妹はもう俺のこと好きでなんですから、サポートしてくれたらその分早く順番が回ってきますよ!」


 俺の堂々とした発言に姉妹が顔を見合わせる。

「どうしよう、お姉ちゃん」

「やるしかないでしょ。なんかそういう流れだし」


「アレクさんが二人を口説くムードを盛り上げたらいいんですね。やってみます」

 ケイが胸の前でちっちゃく手を握って気合いを入れた。



 姉妹が円卓を回って側へ来る。

 俺はまず、左手に抱くドミナを見下ろした。

「いつ見てもきれいですよ、ドミナさん」

                「「あ~、よいしょっ」」


「あら、そう? 胸しか見てないようだけど?」

「ふつうの男ならそれで終わりです。だが、あなたのおしとやかな内面まで愛でているのは俺だけですよ」

     「「はぁ~、どっこい」」


「うふっ。本当にわたくしのすべてを知ってるような言い方ね。嫌いじゃないわ」

 そういうとドミナは大きな胸を押しつけるように身を寄せてきて、俺の首筋に唇を添える。

 柔らかく濡れた舌がちろっと動いて、それだけで頭の先からつま先まで電流のように快感が走る。


 ――だが、ここで官能に身を任せるわけにはいかない!

 すると、スクラシスが俺の腕をつねりつつ、儚げな視線で見上げてくる。紫の瞳は寂しさに潤み、幼い頬をすねたように膨らませていた。

「わらわにはそのような言葉、かけてくれたことはなかったのじゃ」


 俺は銀髪を撫でつつ微笑んで見下ろす。

「その必要がなかったからだよ。世界がスクラシスをどれだけ邪神呼ばわりしようと、俺にとっては永遠に可愛い女神さまさ」

             「「あっ、そーれっ!」」


 スクラシスが喜びに頬を染めて微笑んだ。二人の顔の距離が縮まる。

「アレク……」

「スクラシス……」

      「「はぁっ、それそれそれ!」」



「――って、ちょっと待て! 邪竜姉妹! なんだよ、その合いの手! 祭りじゃないんだよ!」


 きょとんとした顔で首を傾げる姉妹。その仕草はよく似ていた。

「え~、盛り上がりませんか?」

「ドラゴンはだいたいこんな感じよ?」


「どんだけお祭り好きなんだよ、ドラゴン! 雰囲気ぶちこわしだよ! ドミナさんもスクラシスも、ほら――って」



 ドミナさんは人の話なんか聞いていないようで、舌先で俺を攻め続ける。ちゅくっとみだらな音が耳を打った。

 一方、スクラシスは小柄な体で抱きついて、俺の体をつねりながらたわわな胸を押しつけてくる。重なる肌が湿り気を帯びた。


 俺は二人の頭を撫でつつも、おそれおののく。

「すげぇ、聞いてない。さすが魔女に邪神……じゃあ、このまま続けちゃいましょう! 続いて、魔王ルベルとムードを盛り上げる!」


「私はイヤに決まってるだろう! 貴様なんか大っ嫌いなんだっ!」

「じゃあ、ケイとノクティを先に口説こう……おいで」


 金髪を揺らして一歩踏み出したケイだったが、すぐに戸惑いで足を止める。

「でも、アレクさん。どこに行けば?」


「え?」

 俺の両側はドミナとスクラシスに占領されていた。

「え、えーっと、後ろと前?」


「後ろはまあいいけど、前は割り込みにくいってば!」

 ノクティのツッコミに俺は反論できなかった。

 ぐぬぬっと言葉を詰まらせる。



 すると、腕を組んで呆れて見ていたルベルが言った。

「というかだな、見てて思ったんだが。……五人同時に相手するって、そもそも無理なのではないか? 物理的に」

「え、いや……きっと方法が……」


 俺のお腹にぐりぐりと銀髪の頭を押しつけていたスクラシスが顔を上げた。

「いや、アレクよ。五人じゃぞ?」


「でも、なにかテクニックが……」

「ならば、今この瞬間だけ。ここにいる五人の胸を揉んでもよいぞ。……ただし同時にな」

「わーい!」


 俺の右手はドミナさんを抱えつつ大きな胸を揉んだ。指の間から、たわわな肉があふれる。んふっ、と色っぽい声を上げた。


 左手はスクラシスの小柄な体のたわわな胸を掴んだ。指に心地よい柔らかさ。偉そうなことを言った割には、俺の指先に合わせて「ひゃぅっ」と可愛い声を出していた。唇から漏れる声を押し殺そうとしてか、幼い頬が紅潮していく。


 その様子を見ていたルベルは嫌悪感丸だしで眉間を寄せると、両腕で形の良い胸を隠した。



 ケイは一瞬、顔に怯えた表情を走らせたが、ぎゅっと目をつむって俺のそばへ来る。

「アレクさんになら、何されてもいいです。いえ、いろいろして欲しいですっ」

「揉めるものなら、揉んでみなさいよっ」


 ノクティは呆れたため息をはきつつ、妹の隣へモデルのように立つ。顔は背けていたが、その頬が赤くなっているのがわかった。



 ――が。


 俺は悲劇に気付いて叫んだ。

「も、揉めないっ! 目の前に、極上の美乳と貧乳があるのに、指一本触れられないのはなぜだ!」


「あんたの両手が別の胸を揉んでるからでしょ!」

 ノクティが冷たい声で突っ込んだ。


 俺は全身を雷が打たれたようにショックを受けた。

「し、しまったぁ! ――俺、腕が二本しかなかった!」



「今頃、気がついたのかの」

「やる前からわかるだろうに」

「どんだけ煩悩に目が曇ってたのよ」

「アレクさんのことは好きですけど、あたしを一番に触ってくれなかったのは、やっぱりイヤです」

 五人の視線が俺に集まる。好意的に笑ってくれている視線もあるが、それ以上の失望の眼差しが痛い。



 俺は高速で距離を取ると、すさまじい勢いで土下座した。

「すんませんでしたぁ! いろいろと修行が足りてませんでしたぁ!」


「修行の問題ではなかろ」

「足りてないのは貴様の頭だ」

「あとは常識ねぇ」

「理性も足りてないわよ」

「身の程を知るのも大切かと思います」

 五人からの言葉の攻撃。必殺技より心をえぐった。



 俺は床に頭をこすりつけると叫んだ。

「美少女ハーレムを作るといいながら、この体たらく。五聖勇者アレク、一生の不覚! ――今から、修行してきます!」

 俺は悔しさに五人を見ることができず、ただ扉を見て走った。


 後ろから声が聞こえる。

「修行でどうにかなるとは思えんがの」

 スクラシスの言葉が背中に刺さったが、俺は歯を食いしばって外へと飛び出した。


 どんなに困難だろうとも、俺は願いを諦めるわけにはいかない。

 ――絶対にこの五人を同時に抱いて、世界を救うために!


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