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第2話 初会議後の通路を歩く滅亡美少女たち

 次元のはざまにある廊下。周囲は真っ暗闇の空間だった。

 赤い絨毯の敷かれた床がまっすぐに伸びている。

 壁の存在を教えるかのように、魔法の燭台が廊下の両側に点々と灯っていた。


 そこを五人の美少女たちが髪やスカートを揺らして歩いていく。

 紅の髪を揺らして先頭を歩く魔王ルベルが、はぁっと溜息を吐いた。

「議題が一つも片付かなかった……」


「ルベルは魔界のことは放っておいて、アレクにとどめさすかと思ったのじゃがのう?」

 邪神スクラシスの言葉に、ルベルが髪を派手に揺らして振り返る。


「う~ん、そうしたかったのだが。あいつは、一発目もほとんど効いていなかっただろう? 倒すのにすごく時間かかりそうだったから今回は諦めた……ていうか、みんなは手を抜いてたんじゃないのか? 私は全力で奥義を打ち込んだというのに」



「なにを言う。邪神としての究極魔法ぞ?」

「あらぁ、言ってくれるじゃない。わたくしも本気の魔法でしたわ」

 魔女ドミナが大きな胸を揺らしながら困ったように水色の髪を後ろに払った。


 ノクティが両肩をすくめつつ同意する。

「アタシだって全力だったのよ。本来なら大陸一つ吹き飛ばす極大範囲攻撃なんだから」


「ええ! 範囲でかっ! 危険ではないかっ!」

 赤い瞳を見開いて驚くルベルだったが、ケイが恐る恐る手を上げる。

「あのぉ……あたしのほうがもっとやばいです」

「えっ、そうなのか?」


「あたしの奥義【次元消滅竜撃破アポカリプスデトネーション】はこの世の理とか法則に干渉して、次元そのものを消し飛ばす攻撃です。本来なら誰にも防ぐ手立てはないんです。物質が存在してる意味や定義すら消してしまうので」


「えええええっ! そんな危険な攻撃をあの部屋でやってたというのか!? 私たちも危なかったではないかっ!」

「はい。ふつうみんな死にます。でも、アレクさんなら耐えてくれると思ったんです」

 ケイが胸の前で手を合わせつつ幸せそうに微笑む。



 ルベルは信じられないと言った表情で顔をしかめた。

「なにそれ。意外とあいつを信頼してるのだな」

「はい。アレクさんは、すっごく強いですからっ」

 ケイがにっこりと微笑んだ。


 しかしルベルはあくどい笑みで応える。

「でも私は、あいつの弱点に気付いたぞ。ふふん、なかなか偉いとは思わないか?」


「本当ですか? それは興味あります」

「うむ、本当だとしたら慧眼なのじゃ」

 スクラシスが感心した声を出しつつ、ルベルに言葉を促した。



 褒められて調子に乗ったルベルが歩きながら胸を反らす。

「ふふん。あいつが異常に打たれ強いのは、攻撃されたときに回復魔法を唱えてるからだ! だから魔法を封じれば倒せるんだ!」


 堂々と言い切ったが、残りの四人は歯に物が挟まったような顔つきになる。

「あー」

「いや……」

「まあ、そう思うのが普通よねぇ」


「な、なんだ、この感じはっ! 真実を把握していない子供は仕方ないな、みたいな反応になっている!」

 ルベルが地団太を踏んで悔しがる。



 ノクティが黒髪ツインテールを揺らして言った。

「まあねぇ、あいつはバカで変態のくせに、とっても強いからね~」

「どういうことだ?」


 ケイが目くばせしながら声を震わせる。

「あのぉ……アレクさんが唱えた回復魔法は自分にかけてたんじゃないんです」

「は?」


「あたしにかけてくれたんです」

「えっ、なんで!?」


「あたしの奥義は自分自身にも大ダメージで、撃つと一か月ぐらい寝込んじゃうんです。そうならないようにアレクさんは回復魔法で助けてくれたんです」

 ケイが申し訳なさそうに答えた。



 その答えにルベルが赤い瞳を見開く。

「え……っ! じゃあ、あいつは自分が死にかけてるって時に、ケイを守ろうとしたと言うのか!?」


「はい。だからあたしはアレクさんのことが好きです」

 ケイは夢見る乙女のような笑顔を浮かべた。



 ルベルが焦りつつ首を振る。

「いや、ちょっと待て! それ騙されてるから!」


「そうですかぁ?」

「そうだ! あいつはハーレム作ることしか頭にない変態なんだ!」


「そうですけど……アレクさんがいるから、あたしここにいられるんです」

「え? どういうこと?」

 ルベルが思わず素で問いかけた。



 すると、ノクティが黒髪を掻きながらバツが悪そうに答える。

「妹は病弱でね。ずっと寝たきりだったのよ」

「アレクさんが命を助けてくれて、それで好きになったんです」


「なにそれ! 命を握られて言いなりになってるだけじゃないかっ! むしろ病気という弱みに付け込んでるアレクがひどい男の証拠だ!」


「あっ……」

 困り顔で姉妹は目くばせしあう。

 姉のノクティは困ったように指で頬を掻いていた。



 ルベルがいぶかしそうに形の良い眉を寄せる。

「なんだ? 何かあるのか?」

「違うんです。本当にアレクさんに命を助けられて……」


「あー、わかった。アタシが言うわよ」

 ノクティは笑顔のまま、何気ない調子で語り始めた。

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