第1話 美少女の集う会議場
真っ暗闇に包まれた広間。部屋の果てが見えない。
林立する太い石柱が高い天井を支えており、この世の空気ではない雰囲気が漂う。
そこに、ぼうっとろうそくの明かりが灯って、ゆらゆらと赤い光が近づいてくる。
手に持つ小さな明かりに照らし出されるのは、肩で切り揃えた赤髪をカチューシャで止めた真面目そうな少女。
すっと通った鼻筋に聡明そうな秀でた額。髪の一部だけが白かった。スタイルの良い肢体を黒のレザー服が、きわどく要所を隠している。すらりと長い手足と白い素肌が眩しかった。
彼女はマントをなびかせて広間の中央にある円卓まで来ると、上座に座った。
円卓にはすでに五人の男女が等間隔で座っている。特に女性たちはこの世のものとは思えないほどの美貌の持ち主だった。
赤髪の少女――ルベルが小さく咳払いをしてから発言する。鈴のような澄んだ声色が響く。
「みんな揃ってるようだな? では、先代から数えて第1076回、私たちでは第1回の、世界滅亡評議会を始めたいと思う。会議時間はこのろうそくが燃え尽きるまでだ。ではまず最初の議題は――次は誰が世界を滅ぼすか、だ」
彼女の左隣にいる俺はシャツにズボン、ジャケットを羽織った姿で座っていたが、勢いよく円卓に身を乗り出して挙手をした。顔にかかる茶色の前髪が揺れる。
「はいはいっ! 俺は、やっぱり、一番胸の大きなドミナさんがいいと思います!」
上座のルベルが鋭い目つきで睨んでくる。赤い瞳は怒りで吊り上がっていた。
「君に発言を許した覚えはない! ていうか、なんで人間の貴様がここにいるんだっ!」
「いいじゃないですか。ここにいるみなさんは最終的に、俺に倒されて服従されるんですから! 俺のハーレムがもうすぐ手に入るんですよ!」
「入るわけないっ! ったく、ここにいるみんなが誰だかわかっているのか?」
「もちろん! きっちり調べ尽くしてありますよ、俺のハーレムに相応しいかどうかをね!」
「ハーレムにならないって言っているだろうが!」
ルベルの可愛らしい声のツッコミは無視しつつ、俺は頬笑みを浮かべてルベルを見ながら顎を撫でる。
「そうですねぇ。まずは魔界を支配する魔王女ルベルディア」
「わ、私?」
「通称ルベルは、紅の髪に白いアクセントの一房が目を引く! しかも、惜しげもなく素肌を晒しつつ、ツンと向いたおわん型の美乳の下乳が見て取れる! 抱きしめたいぐらい素敵なスタイルの女性です!」
「気持ち悪い感想を言わないでもらおうか!」
ルベルが紅の髪を乱しながら立ち上がって抗議してきた。わずかばかりのレザーで覆われた半裸を超えた素肌が晒される。
思わず、ギンッ! と目を見開いて眺める。
すると俺の視線に気づいたルベルが、はっとして体を両手で隠して椅子に座った。
――恥じらう姿がそそる!
もっと眺めていたかったが、話が進まないどころか世界が終わることになるので、すぐに俺はろうそくの明かりが照らす広間の中、円卓を時計回りに見た。
次に座るのは、子供のように背が低いが円卓に載るぐらいの大きな胸をしている邪神の少女だった。
ゆったりとしたローブを着ているが、生地が薄く幼い体のシルエットが透けて見える。
長い銀髪が誘うように揺らめく。小さな手で頬杖をついて俺を見る瞳は、紫色に妖しく光っていた。
「ルベルの右隣に座るのが、邪神スクラシス」
「ふむ。貴様の目にどう映っているのか、楽しみなのじゃ」
「スクラシスは見ての通り、ロリ巨乳! しかも世間的に言う、のじゃロリババアって言うやつですよ! 小柄な体に大人の胸は、犯罪的なアンビバレンツさで、むしゃぶりつきたいぐらい妖艶です!」
「ふふっ、そんな勇気が貴様にあるのかのう? わらわは一筋縄ではいかぬのじゃぞ?」
「絶対、上に下にと頑張って屈服させてみせますよ、俺は!」
「三日三晩寝かせてやらぬわ。ふふん」
スクラシスは幼い顔に、大人のように挑発的な笑みを浮かべた。
それだけで俺の気持ちは応援をもらったかのように奮い立つ。
すると、ルベルがこぶしを振り上げて怒った。
「なに少し、やらしい話をしておるのだ! スクラシスは邪神だぞ? 人間の貴様にどうこうできる相手ではないっ!」
「ふふ、果たしてそうですかね? 俺は――っと、その前に俺がこのハーレムメンバーをどれだけ調べてるかの続きを教えましょう」
「ハーレムではない! 何度言ったらわかる! 次やらしいこと言ったが最後、出ていってもらうぞ!」
ルベルの説教に、俺は元気よく返事する。
「はい、わかりました! ――で、スクラシスの隣に座るのが魔女のドミナさん。あらゆる知識と秘術を極めただけあって、年上っぽい雰囲気とその豊満な肢体がたまりません! 特に物理法則を超越した超巨乳が目を見張ります! 揉みたいっ!」
魔女ドミナは緑の瞳を妖艶に細めると、余裕な態度で青い髪をかき上げつつ胸を反らした。胸元の開いた服を押し上げるように巨乳がたわわに揺れて強調される。
「あらあら、試してみてもいいのよ?」
「わーい!」
俺はドミナさんの言葉に甘えて床を蹴った。円卓を飛び越えて彼女の豊満な胸へと飛来する――。
「だから、やらしいことは禁止と言ってるだろう、この変態! ――【紅蓮爆嵐破】!」
魔王女ルベルが髪を振り乱しながら、右手に凝縮した燃え盛る炎を投げつけてきた。
空を飛んでいる俺には当然かわせない。ちなみに炎系魔法の最終奥義だ。
ドゴォ――ッ!
「うぎゃぁ!」
圧縮された劫火の直撃をお腹に食らって俺は盛大に吹っ飛ばされた。近くの円柱に背中からぶつかって、床へと叩きつけられる。
ルベルは手をパンパンと払うと、顎をツンっと上げて偉そうに見下した。
「たかが人間風情が、この厳粛な評議会の場にいること自体がおかしいんだ。激痛に苛みながら、しばらく大人しくしているといい」
そう言うとルベルは呆れたような溜息を吐いて、椅子に座り直した。
赤い瞳に聡明な光を宿して一同を見渡す。
「気を取り直して、評議会を続けたいと思う。世界を滅ぼしたい人はいるだろうか?」
暗黒竜ノクティが黒髪ツインテールを跳ねさせつつ、椅子を鳴らして立ち上がる。落ち着いた黒いドレスの、短い裾が揺れた。
「はーいっ! やっぱアタシの出番じゃないかしら!?」
俺も勢い良く立ち上がると、低音気味のいい声で一気にまくしたてる。
「彼女はノクティ・ニグレード! この世でもっとも恐ろしいドラゴンの一族と言われる、邪竜族の少女!」
「復活、はやっ!」
ルベルが赤い目を見張ったが、俺は気にせず言葉を続ける。
「細身ながらも引き締まった肢体。黒髪ツインテールに大きな黒目は、人の姿になっても暗黒竜の凛々しさを感じさせる! 大陸を一撃で吹き飛ばす力を持つとは思えない美しさ。胸はささやかだが、スレンダーな体は妙な色気を漂わせる。俺のハーレムに相応しい美少女! 胸はささやかだけど」
「胸、胸ってうっさいわよ!」
ノクティは黒髪を逆立てて怒鳴ったが、そんな姿も凛々しい。
俺は茶髪をかき上げつつ、最後の一人に眼を止める。
「円卓で、魔王ルベルの正面に座るのが、ノクティと同じ邪竜族の少女ケイ・ニグレード」
「こ、今度はあたしなんですかぁ……」
たれ目がちの青い瞳が伏せられる。怯えるように華奢な肩をすくませるケイ。白いワンピースのようなドレスにしわが寄る。その姿は守ってあげたくなるような儚さを感じさせた。
「ケイは豊かな金髪に青い瞳の美少女。十万年に一匹生まれるという突然変異の超希少種、世界を消滅させる力を持つ混沌竜! 病に臥せっていたからか誰よりも華奢で、か弱い。でもスタイルはよく、特に胸は姉以上! 絵に描いたような病弱美少女だ! 俺のハーレムに入った以上、確実に手取り足取り守ってあげるよ!」
「ふぇぇ……あたし、もうハーレムに入ってることになるんですかぁ」
「アタシの妹を、いやらしい目で見てんじゃないわよ!」
ノクティが黒髪のツインテールを後ろになびかせて殴り掛かってきた。
俺は軽くスウェーバックしてかわしつつ、両手を広げてみんなに促した。
「さあ、早く決めてください。俺に倒されてハーレムに入りたい人を!」
ルベルが額を手で押さえつつ眉をしかめた。
「貴様……自分の言ったことを理解していないのか? 私たちはな、一人ででも世界を滅ぼす力持っているんだ!」
「極めて困難な障害だからこそ、屈服してハーレムにする価値があるってものでしょう! 想像するだけでよだれが出ます」
ぐへへっと笑うと、俺を殴ろうとしていたノクティが大きく後ろに跳んで距離を開けた。
ドレスの裾からすらりとした脚を見せつけつつ、ウジ虫を見るような目で睨んでくる。
「き、気持ち悪い……」
「何を言うんですか! ハーレムはすべての男の夢ですよ! でも俺は子供のように指をくわえて夢を夢のままで終わらせたりしません! 夢を目標に変えて行動してきました! ――夢に向かって努力する男って、なんだかこう……輝いて見えませんか?」
俺は茶髪をかき上げた。きっと、きらきらと輝かしい粒子を放っているに違いない。
しかしルベルが円卓を叩いて怒った。感情のこもった高い声が可愛く響く。
「どこがだ! 欲望がどす黒く漏れ出してるだけだ! だいたい貴様は人間なんだから、人間の女性でハーレムを作ればいいじゃないかっ! なぜ私たちで作ろうとする!」
「そりゃあ、ここにいる人たち全員、人知を超えた美少女だからに決まってるじゃないですか!」
「見た目だけで選ぶな!」
「褒められて嬉しくないんですか? 俺のハーレムに入れるんですよ?」
「なぜそこで上から目線になれるんだ! 見た目だけで選ばれて嬉しいはずがないだろう!」
「冗談ですって。勘違いしないでください。選んだのは見た目だけじゃありません」
「じゃあ他に何があるんだ? その欲望まみれの貴様に」
ルベルが疑うようなジトっとした半目で俺を見てくる。
すると魔女ドミナが胸を押し上げるように腕を組んだ。服がはちきれんばかりに揺れる。
「ふぅん。見た目ってのは、当然胸の大きさも入るのよねぇ?」
試すような発言に大人の色気が漂う。
俺は頷きながら、落ち着いた声で語りだす。
「もちろんです、ドミナさん。――俺、これでも人々の間では結構有名人なんですよ。五聖勇者アレクって。伝説級の凶悪な魔獣、百匹ぐらい倒しましたし」
「なんなの? 唐突に自慢?」
ノクティが椅子に座ってつまらなそうに足を組んだ。
俺は真面目な顔をして答える。
「いえ、そういうわけじゃないんです。ただ有名人だから、人間の女性にはそこそこモテたんですよ」
「やっぱり自慢ではないかっ!」
ルベルが頬を膨らませて俺を見る。
だが俺は、額を手で覆うと辛そうな表情を半分隠した。
「でも綺麗な女性と仲良くなって家に呼ばれたりすると、お母さんが料理でもてなしてくれるじゃないですか。そこで思っちゃうんですよね。――ああ、この綺麗な女性も将来は、お母さんみたいにたくましい体つきになってしまうのだろうなぁ、と」
「貴様は今、最低の発言をしたからな」
「そのせいでいろんな女性と知り合いになっても素直に喜べず。勇者の仕事もやる気が出ずにひきこもって調べものばかり。そんな時、自分の戦う相手がこの世のものとは思えない美少女だってわかったんです! もう、これだ。これしかない! と。俺の理想とする若いまま年を取らない美少女ハーレムは、世界滅亡評議会にしかないんだってことを!」
ルベルがバンッと円卓を強く叩いた。
「見た目だけより、もっと悪いわ! ――ほんと、貴様みたいな下劣な人間がよく勇者になれたものだな、ふっ」
「どこが下劣なんですか! この欲望に対する素直さは、少年のように純真じゃないですか!」
ルベルが鼻で笑いつつ、呆れて肩をすくめる。
「ハーレムにしか興味がない勇者なんて、人間たちも後悔しておるのではないか?」
「アタシが人間だったら、まず最初にアレクを刺してる。いや、恥ずかしくて生きていけないわね」
ノクティが手を頭の後ろに組んでつまらなさそうに言った。
俺は円卓をバンッと叩いて反論する。
「何を言うんです! それはみんなが俺の努力を知らないから言えるんです!」
「ほほう? 何をしたと言うのじゃ?」
スクラシスが頬杖に乗せた幼い顔でニヤリと笑う。
俺は立ち上がると、こぶしを握り締めて熱弁する。
「人類史上最高の美少女ハーレムを作るために、俺は! 勇者、賢者、英雄、聖騎士、救世主、のすべてのクラスをマスターしたんですよ! 一つマスターするにも一生かかると言われた職業を、一人でですよ! 今やもう、あなた方全員を屈服させる力が俺にはあるんです! 美しすぎるあなたたちをこの腕で抱くために!」
思いの丈をぶつけた演説だったが、なぜか場の空気は凍った。
むしろ、寒い風が吹き抜けていった。
場の空気を変えるために円卓を叩こうとしたとき、ドミナが大人びた溜息を吐いた。
「あらぁ、わたくしも倒されちゃうのかしら?」
「残念ですけど、ドミナさん。魔女は賢者で倒せます。そのほか魔王は勇者、暗黒竜は英雄、混沌竜は聖騎士、邪神は救世主で討伐できます。ここにいるみんなはもう、俺のものですよっ!」
「まだなってない!」
「叩きのめしてあげるわよ!」
ルベルとノクティが声に怒りをみなぎらせて激しく抗議してきた。
一方、ケイは金髪を揺らして震えていた。
「人間のアレクさんがどうしてここにいるのかずっと不思議で、次に戦う相手を調べに来てるのかと思ってたんですけど。――本当に全員倒すつもりだったんですね」
「なんで怯えてるの。俺は怖くないよ。むしろ優しくするよ。大切に、ベッドの上で、一枚一枚薄皮をはぐようにさぁ」
「ふぇぇ……。その変態的な言い方がとっても怖いです」
肩を縮こまらせてますます怯えた。青い瞳の端には涙が溜まっている。
ノクティがこぶしを握り締めて立ち上がった。
「こらっ、妹を性的な目で見ないでって言ってるでしょ!」
俺は円卓を強く叩いて反論する。
「俺から性欲取ったら、ただの聖人君子になってしまいますよ!」
「それのどこが悪いのじゃ!」
すかさずスクラシスが突っ込んできた。
俺は茶髪をかき上げつつ、強気な笑みを浮かべて言う。
「悪いですよ。だってエロは男の原動力ですよ!? 吟遊詩人を目指すのも、英雄を目指すのも、女性にモテるからに決まってるじゃないですか! 俺には美少女ハーレムを作るという目標があったからこそ、ここに平然と来れるぐらい強くなれたんです!」
「欲望の塊じゃな……呆れてものも言えんのじゃ」
スクラシスが華奢な肩をすくめた。
すると突然、ルベルがニヤリと極悪な笑みを浮かべた。
「ようするに、こいつの存在が私たちにとっても、世界滅亡にとっても、一番邪魔ってことではないか?」
「そうなりますね。俺がいる限り、みなさんは俺のハーレムに入るしかないですからね」
「だったら、今ここで倒してしまえばいいじゃないか?」
「なんですって! それは話が――ッ!」
俺はバンバンと机を叩いて、不穏な流れを必死に止めようとした。
しかし次々と賛同の声が上がる。
「悪くない提案じゃの?」
「そうねぇ、一人の男をみんなで嬲るって素敵ですわ」
「はい、アレクさんは一回死んで人生をやり直すべきだと思うんです」
「賛成しかないわねっ! そうと決まれば、アタシの必殺技を喰らいなさいっ! ――【破局大災竜撃破】!!」
ノクティが大きく左足を踏み込んで、黒い波動に包まれた右手を振りかぶる! 細い腰がしなやかに回り、ツインテールの黒髪が弧を描く。
そして全身の力を余すところなく乗せた右こぶしが俺の顔面を直撃した。
ドゴォォォン!
「ぐひゃぁ!」
俺は天井高くぶっ飛ばされた。
さらに、か弱くも凛とした声が広間に響く。
「あたしも奥義いきます。あぽかり――こほっこほっ」
小さく握った右手を突き出そうとしたが、ケイは咳込んでしまう。
俺はその隙を見逃さなかった!
空中で指を交差させて魔力を込める。
「――【超越全回復】」
指先に温かな光が集まった。
しかし無情にもケイの声が響き渡る。
「えいっ――【次元消滅竜撃破】!」
彼女の右手から、漆黒に見える波動が俺へと飛来する。しかし黒ではなく透明。いや『無』そのものが暴虐に襲い掛かる。
ドゴゴゴゴォォォン!
「ほげぇぇぇ!」
避けることのできない空中では直撃を食らうしかなかった。
俺の身体は天井に激突して周囲を丸く凹ませる。
さらに妖艶な声が楽し気に響いた。
「あらあら、まるで張り付けですわ――【雷炎爆光破】」
笑みを浮かべたドミナさんの嗜虐的な声とともに、青白い電光に包まれた光球が飛来する。
ドォッ――バリバリバリッ!
「ひぎゃぎゃぎゃっ!」
光球が直撃すると同時に、全身が灼熱の炎と電光に包まれた。身を焼かれつつ、電撃が全身をさいなむ。
が、まだまだ彼女たちの攻撃は終わらない。
スクラシスが幼い顔に似合わない邪悪な笑みを浮かべて手を上に向けた。
「神の力をあますところなく味わうがよいのじゃ――【邪滅凝闇破】」
銀髪を逆立てるとともに、銀光を放つ無数の光球が彼女の周囲に生まれた。
細い指で俺を指さすと、光弾が風を切って集中砲火のように襲い掛かる。
ズドドドドドォォォン!
「うぎゃぁぁぁ!」
一発一発がとてつもない威力で、俺は破壊の嵐に翻弄された。茶髪がもみくちゃになる。
天井に半分ぐらい埋まったところで、勝ち誇った声が美しく響いた。
「これで終わりだ――【紅蓮爆嵐破】」
ルベルがしなやかな半裸の肢体を強調するかのようにモデル立ちして、口の端に笑みを浮かべつつ俺へ手のひらを向けた。
燃え盛る劫火が押し寄せる。
ドゴォォォ――ン!
「ほげぇぇぇ……!」
俺は鉄すら蒸発させる灼熱の炎にたっぷりと焼き尽くされた。
そして。
すべての処刑が終わると、ようやく天井から剥がれて床に落下した。
五聖職を極めたさすがの俺でも、床に伸びてぴくぴくと痙攣するしかない。みじめな虫のようだった。
すると、黒髪を揺らして近づいてきたノクティが、ひぃっと悲鳴を上げて下がった。
「な、なんですって……すごい、まだ生きてる」
「あり得ないです、お姉ちゃん。あたしたちの全力だったのに」
邪竜姉妹の感想に、スクラシスは腕組みをしつつ眉をひそめる。
「なんという生命力。いや、防御力かの? ……世界が滅んでも生きていそうなしぶとさなのじゃ」
「うふふ、とても楽しめそうな男ですわっ」
少し興奮気味に言うドミナさんは赤い唇を舌で舐めた。濡れた唇が妖しく光る。
ルベルは腰に手を当てつつ、吐き捨てるように言った。
「息の根を止めるには、もう一回やるしかないようだな――あ」
「ん? どうしたのじゃ?」
ルベルの前に半透明のウインドウが現れる。魔法による通達らしい。
文字を読んでいくルベルの眉間に可愛いしわが寄っていく。
「魔界でちょっと揉め事があったようだ。帰らないと」
「それは仕方ないのう。評議の時間もそろそろ……」
スクラシスが紫の瞳でチラッとろうそくを見た。
ずんぐりしたろうそくは今にも燃え尽きようとしていた。
ルベルが可愛く唇を噛んで唸った。
「くっ。無駄な時間を過ごしてしまったか」
「まあ、アレクはいつでも殺せるのじゃ。今日のところは帰るとするかの」
スクラシスが何気なく促した。
「わかった。では、本日の評議会は終了だ」
ルベルが宣言すると、邪竜姉妹も頷いた。
「議題は次に持ち越しね」
「みなさん、お疲れ様でしたぁ。帰ろう、お姉ちゃん」
「ケイ、上着を着て体を暖かくするのよ」
「はい、お姉ちゃん」
姉妹の後に続いてスクラシスが小さく伸びをしながら歩く。
「騒がしかった割には何も決まらず。やれやれなのじゃ」
「また次ですわね」
ドミナさんが腰を左右に振りつつ足を進める。大きな胸が揺れていた。
五人は俺を放置したまま闇の広間から出て行った。
俺は去っていく美少女の背中を眺めることしかできなかった。
――でも、よかった。今日のところはひとまず上出来だった。