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シークレット僕  作者: ねむみざわ
第一部 始まりの音
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なんで僕はこんな事をしているんだろう?


さっきまで暇を持て余し、携帯で興味のない動画を見ていた。また腹を空かし、ただ家にあるあまり好みでないお菓子を探し、貪っていた。

おなかすいたなぁ…

今は、母親に頼まれた夕飯の肉じゃがの面倒を見ている。


「ねえ…!近所で不審者情報だって!」

家に帰ってきた母は言う。

へぇ…まあ大した事ねえだろ

「なんか刃物持ってるらしいよ!しかも2人!」

「えぇ…こわーい、ヤダよ〜」

いやいや、妹よ。俺はお前の入試のがこわーいよ。

「ご飯もう出来るから食べよう」

早くご飯を食べたい僕は、ボソッと言う。

本当今日一日も、時間を無駄にしただけだったなぁ…

昼のバイト、行けば良かったわ

僕の大学2年生の春休みは、寂しく徐々にただし確実に過ぎていた。



「それじゃあ、行ってくる」

夜勤に向かうべく、「いってらっしゃい」を遠くに聞いて家を出る。

時刻は22時15分前。

冷たくなった自転車のサドルにまたがると、白く照らされた道を走った。夜の匂いとアスファルトの濡れた匂いがした。

寒いなあ…マフラーしてくるんだった。

ここから職場までは10分かからないぐらいの所にある。

ペダルを踏みしめ、高層マンションの住宅街を抜ける。

出発して5分ぐらいの時、職場まで半分きた辺りだった。


ヴヴヴ…


携帯が振動する。

ポケットから携帯を取り出し、僕はそのまま電話に出た。

「もしもし?」

「えーと、パピリス君?」

ーーー聞き慣れた女の人の声

「違いますけどそうです」

「もうこっち向かってる感じかな?」

「自転車乗ってます」

そっかー、良かったーっと、電話先の彼女。そして、続けていつもより早口で言った。

「まだ勤務始まって無くて悪いけど、バスター依頼よ。東20番地にウイルスが、2体目撃されたわ。人型タイプのカモフラージュ型ね。」

結構近いんだな…?こんな近くに保護対象なんかあるのか?

「了解です。ヘッドホン装備するんで、端末にも位置送ってもらって良いですか?」

「分かったわ。ごめんね〜今日全然人居なくてさ直接壊すとなると今いる人だと出来なくてねえ」

「そうですか。こんな近くで仕事なんて珍しいですね」

自転車を止め、ヘッドホンをする。かわりに携帯は鞄の中にしまってしまう。

「なんかこれは、スパコンを狙った物じゃないわね、どちらかというと一般人を狙った住宅街テロみたいな物よ。さっき、上から出動要請が直々に来たから何かちょっと引っかかる物があるわね」

なるほどなぁ…?

「ふーむ、了解です」

「とりあえず気をつけてかかりましょう」


やれやれ…。開始早々、忙しいな。


「戦闘装備完了です。054-ヘッドホン、起動許可お願いします」

「ありがとう宜しくねえ」

明るい声のオペレーターは、夜中も元気そうだ。

僕は自転車を近くのコンビニに止めて、仕事の準備をする。


一瞬だけ、自転車止めさせてね…!


「054-ヘッドホン起動許可、近接セキュリティプログラム起動させます」

その明るい声と同時に、ヘッドホンに薄いノイズと起動音、それに「ペアリングしました」のアナウンス音がした。



2034年、僕は20歳になる斎藤 喜色(きいろ)。彼女は居ない。このクソみたいな日常にそろそろ蹴りをつけようとおもっている大学2年生だ。

オリンピックがあった2020年から14年経つ今も、世界は目に見えて大きく変化した点はない。強いて言えば、温暖化の進行と、人口爆発ならぬ縮小が起こった事だろうか。

また、いつからか世界の中心はリアルワールド、現実世界における事よりインターネットワールド、電脳空間に重きを置くようになっていた。

そんなサイバースペースに、一番重要とされている物、すなわちセキュリティプログラムをいかに発展させるかが、各国、各主要グループにおける最重要課題となっていた。

しかし、皮肉な事にも、電脳空間におけるセキュリティにも関わらず現実世界にセキュリティのキーとなるスーパーコンピューターを設置しているため、スーパーコンピューターをいかにして守るかというのも重要な課題であった。そのため各国は、電脳空間を守るスーパーコンピューター、そのスーパーコンピューターを守る現実世界の組織を作る事に躍進した。

そこで、出来たのが「WoS『World of Security』」という組織だ。

また基本的に、世界各国にWoSは存在するが、第一人者は必ず日本人である。

しっかりとした理由は必ずあるはずなのだが、一般人には知れていない。

また、何も知らない一般人が雇われているのもWoSなのである。

そしてまた、僕も何も知らずにWoS雇われバイトをしている一般人である。

ただ、この一年この雇われバイトで働いて知れた事もある。

日本国内において、主要なスーパーコンピューターは6つ。どこにあるかまでは知らないが各々、東、西、南、北、天、下と名付けられている。自分がどれを守っているかはタイミングによって知ることは出来るが、タイミングによっては知ることが出来ない。


まぁ、どれを守ってるなんて知った所でどうということはないんだけど。


また、僕たちがスーパーコンピューターを守る時にこれを破壊しようと試みる対象をウイルスと呼び、対処の方法は2つある。

一つ目は、対象がロボットである時にポピュラーに用いられる方法で「解読(ジャック)」である。対象がロボットである場合絶対に電脳空間を通過して暗号化された電波で遠隔操作されている。それを根こそぎジャミングしてしまう方法である。

二つ目は、対象が人、もしくは人型である場合に有効な手段となる方法で「破壊(ブレイク)」である。人型タイプのロボットである場合基本的に解読は難しい。

と言うのも、人型ロボットは解読出来ないような情報量で操作されるからである。実際に人が、アバターとして操作するためである。つまり人が直接きた場合、残酷だが殺してしまうか、捕まえるしか無い。

実際ウイルスも人型と人で比率は同じぐらいである。

生身だと、身体能力の限界があり、人型ロボだとパイロットのデータ許容量の限界があるためだ。

許容量が、他の国の人間よりも多いため日本人にWoSが多いという噂もあるくらいだ。


僕は、人型のアバターと実際の体で二重類を使い分けて防衛する近接セキュリティである。

どちらにしろギア(武器)である054-ヘッドホンを装備しての戦闘スタイルに変わりはないがアバターを使う場合は、制限が多い。

ギアの操作はザックリと二種類の制御を操ることにある。


体を制御する仕組みを変化させる〈モード〉

それを出力するための〈コード〉


ただ、アバターを介しての戦闘だと消費電力の心配とパイロットの脳伝達に限界があるため基本的にはモードを使う程度になる。よって、生身のトレーニングをすることも重要である。


生身は怪我するからやだなぁ


WoSは秘密裏にされている。

つまり、怪我を負った場合都合のいい嘘をつく必要があり家族に後ろめたい気持ちになるのだ。

流石に、ギアの加護もあるし僕が相手をするウイルスで死んでしまう様な事はないと言われてはいるが毎回それなりに恐ろしいものだ。


起動音と同時に、目が熱くなる。

一度、ゆっくりと瞬きすれば僕の視界はもはやゲームの様にパラメータが表示される。


ノイズが走る。

そして、冷たい機械音の声が「起動完了です」と呟いた。

同時に目の前にFPSの様なカーソルが薄く表示される。


「対象に接近します」

僕は呟く。

「マップ通りに動いて下さいな」

彼女の声は普段通りだ。


視界の右上に表示されるマップ。そのなかに赤いマークが見える。

何も意識しなくても分かる、この動きに同調させて鼓動に合わせて僕も動く。


「走れ、僕の音よ」


ヘッドホン越しに右耳を軽く触れた後、二回ほど前後にふる。ボクのギアの起動スイッチは物理的だ。


モード ライトウェイト


動く鼓動に合わせて、ヘッドホンから音が弾き出される。


「軽く軽く、動く貴方はワタのよう〜♪」


脳裏を揺らすフロウと共に、踏み出す右足は軽く、さらに左足も軽く、魚の様に宙を泳ぐ。ゆっくりと、ビル街の隙間を揺られる様に移動する。 

空は、紫の雲に包まれる冷たい夜だ。時々、吹き付ける風がとても冷たい寂しい夜だ。

その中、僕の光る瞳にはボヤッとした街灯が等間隔で目の前を照らし写していた。


「見えた…!」

暗闇の中に、ボヤッと動き光る物体。

僕は、対象の目視できる高いマンションの屋上に降り立つ。

「対象はあれで間違えない、旧型タイプだから胸にコアがあるわ。一突きでお願いね。周りの空間の制御はこっちでやるから一般人は気にしなくて平気よ」

声色でニヤッと笑うのが分かる。

「了解」


ヘッドホン左耳を触れる。

「対象を確認。対象を分析、ロックします」

対象に赤の三角マークが表示される。

良し…。いくぞ…!


錆びた鉄格子を蹴り出すと、振動で空気が軋んだ。

右手で右耳を触れる。


モード クリエイト 

コード スペース


「作れ!作れ!思考の武器を〜!道具はあなたを救うから〜♪」


僕は、瞬間空に浮き右手を銃の形にする。

右手は、薄くて半透明な青に包まれ光を放つ。


ーーーービリビリ

刹那、辺りの空間が潰されるように、もっと言えばフリーズしてしまう。


目の前対象は、〈バインド〉と表示される。

「今だっ!!!!」


右手をもう一度かざす。

モード ライトウェイト

コード マッシュ


足に集中!集中!!

同じく先程の青が足を包む、そして空を蹴る。

僕は風を切って、加速する。

同時に、右手を後頭部から頭をなぞるように、宙を掴み投げるようにモーションをとる。その時左手は左耳に触れるようにしている。

モード クリエイト

コード ピッチャー


右手は、宙をリリースするまでに徐々に光輝きリリースと同時に一線の光の筋を伸ばした。

「いけええええ」


この時対象まで5メートル。射抜く場所は完璧だった。

ーーーいける!!


青の光が触れようとした瞬間だった。


先に対象が、光輝き、消しとんだ。

爆発した。


「くっっっ…!」

「体制を整えて!!!」

危機極まる声が耳に刺さる。


目の前が真っ白に包まれて、全身に炎と衝撃が駆け巡る。

声を出す暇さえ無かった。

ゆっくりと続き書いていきます。感想等貰えるとモチベになりますので是非よろしくお願いします。

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