2.変わった、変わらない
「おはようございます!」
おはよう、と挨拶を返す。元気な少年たちが走っていく。野球部だろうか、みな丸刈りだ。こんな子らがいるというだけで、散歩も悪くない。人間は割と単純なんて言う人がいたけれど、その通りだと思う。仕事はほとんど、苦しみだと友人たちは言うが、やめずに続ける理由を聞いてみたとき、たまの「ありがとう」で続ける気になると言っていた。私が描き続けられていたのは、なんだかんだ読者のおかげだった。やじのような手紙でも、書く気力を奮い立たせる一因になっていた。肯定的な応援の言葉ならなおさらだ。割と人間はイジメられても(こう書くと語弊があるので断っておくが、私は、イジメという社会における弱者への搾取行為自体はあってはならないものだと思っている。この際のイジメられて、という言葉は嫌なことにさらされ続ける、という状況であり、ただ他人から攻撃される状況とは異なる)生きていけるものだと思う。
交差点に来たので、どちらに進むか考える。いつも同じルートになるのが嫌なので、散歩のときはいつも行かない道を選ぶのだが、引っ越して一度目なのでランダムに決めることにした。交差点の場合は、これまでにすれ違った人数を日付から引いて、出た値の絶対値の下一桁の値で決める。1~3にならなければ、2の倍数なら2、3の倍数なら3、それ以外の数なら1と考えて、1なら左、2ならまっすぐ、3なら右、という風に。今日はそうやって決めるが、明日は明日で考える。ランダムじゃないと同じ道ばかり行ってしまう気がするからだ。
家からしばらくにあった個人商店がなくなって、ショッピングセンターになっていたり、昔からの酒屋が新しくなっていたり、変化は大きかった。しかし、高校時代に買い食いをした商店街や、いつも散髪をしてもらった美容室はまだ残って営業していた。背伸びしていった喫茶店も構えは同じだった。どこが変わったかを見ていくのも楽しかった。久々に落ち着いて思った、スローライフというのはいいものかもしれない。少し前の私だったら、「なにそれ年寄くさい」とあざけりさえしていそうなものだが、書けなくなってからは考えが180度変わったように思う。落ち着いて考える時間ができたことで、ものの見方が変わった気がした。




