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15.横浜

夜の街。横浜の第一印象である。

観覧車が爛々と煌めき、港に停留している客船のシルエットを浮かばせる。聞こえる波の音は、あまりに多い人から逃げ出したくて仕方ないようで。


来て、見た印象ではなく、ガイドブックで見た印象である。いざ着いてみると、そんなこともなく。

むしろ、騒ぎ立てる子ども達すべてを包み込もうとする母のようであった。人々はそんなことには関心がないようにはしゃいでいる。


とにかく宿をとるのが先決だ。INNの文字を探して夜の街を徘徊する。途中何度かキャッチを見かけたが、しつこいものは少なかった。30近いオバサンに呼びかけるくらいであれば20前後の女子を相手にした方がいいだろう。駅前のホテルは満室だった。ちょうど決算の直前で、出勤時間を減らすために部屋を取るサラリーマンが多いらしい。小説家という職業とは全く違ったワークスタイルである。


途中何度か腹が鳴りそうになったが、ルームサービスを呼べばいい。寝床がない方が問題である。

ビジネスホテルはほぼ満室だったが、逆に、俗にいう高級ホテル、星付きはかなりすいているようで、普段なら3万円近くかかる部屋が、当日宿泊のプランで半額になっていた。直前にキャンセルがあったらしい。ここに泊まろうと思っていた人はいま何をしているかが気になる。急に仕事が入ったのだろうか、それともなにか事件があったのか。キングサイズのベットがあるということから考えると、もしかしたら不貞を働こうとしていたのかも…バレたのかな?などと邪推する。おそらく深読みのし過ぎだと思うが。


宿が確保できたので次は食事である。ホテルのディナーでもよかったが、一番贅沢をしたいところはここではない。自炊まで切り詰める必要はないにせよ5千円も6千円もかけたくはない。


近場のデパートでレストラン街を見定める。ラーメン!行列がスゴイが気分じゃない。焼肉!もっと無理。寿司…結局ホテルでよかった。却下。


色々見まわったうえで、最も気が向いたのは、カレー専門店だった。

電車で揺られている中で、ずっと匂いがしていたのだ。同じ車両でだれかがカレーを食べていた。そのせいか、カレーの頭になっていたようだ。


所謂カレー屋さんというよりは、洋食屋の内装でカレーをメインにしている、そんな感じである。

ビーフカレーとミルクティーを頼もうとして、はたとメニューの端に目が留まる。いくつかに区切られた皿に少量ずつ、違ったカレーが入っているものがあった。食べ比べメニューとして置いてあるのだろうが、そこまでの冒険に出る勇気は出てこない。ただ、食べ比べという言葉が心に留まった。


「すみません、注文いいですか?」

バトラーのような風体のボーイさんがやって来る。

「お待たせいたしました。ご注文お決まりでしょうか?」

「はい…えーっと、タイ風カレーとネパールカレーの…sってどのくらいの量ですか?」

「80グラム程度ですね。一杯だけ注文されるお方も見かけますが…二種類なのであればこちらの…」


勧められるがままに注文。飲み物はチャイがあったのでそれにした。

「少々お時間いただきますがよろしいでしょうか。もしおでかけなさるのであれば…」

「待つわ。どれくらいかかります?」

「20~30分ほどです」

「はい、待ってます」

「かしこまりました。では、ご注文を確認します。タイ風カレーとネパールカレーの食べ比べセットお一つ、チャイお一つですね」

「はい、合ってます」

「かしこまりました。ごゆっくりどうぞ」


着いたのは窓際にあるカウンター席である。水を少し含みながら、階下の様子を確かめる。電話しながら走るサラリーマン風の男性、腕を組みながら歩く若いカップル、明らかにお上りさんといった風体の女性。犬を散歩しているマダム、肩を組んで歩く中年男性…あれは酔っている。


ひと口に都会の人といっても、かくも色々いるものか。おかしくなって、笑いがこぼれそうになる。と。


漂って来るスパイスの匂いが、食欲をかき立てる。こらえていた腹が我慢ならんと

『ぐぅ~う』

それなりの喧騒で聴かれなかったと思うが、少々赤面した。

次は飯テロになるように頑張って書きます。

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