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14.見聞

今日は遠出をしてみる。小説を書いていたころはなかなかプライベートで時間が取れず、行けても日帰り旅行程度だった。今回はどっぷり、1週間ほどあちこちを見て歩こうと考えた。


北から攻めるのもいいし、南から上がって来るも一興。一度もいったことのない土地ならどこでもよかった。ただ、なかなか行きにくい遠いところから回ってくるのがいい。


青春18きっぷを懐に、普通電車は進む。飛行機や新幹線で行けば確かに速いのだが、やはりその過程で通過するだけの土地が多くなってしまう。途中下車を繰り返してできるだけ多くの都道府県、市町村を見て回りたい。気になったときにふっと降りてみてくるということも考えたかった。


そのため、事前に宿泊先を予約することはせず、当日空いている宿を探して泊まることにした。田舎であればそもそも泊まる場所がないということもあり得るので、遅くなる前に中心市街地に行かなければならない。


時季的には宿屋が混む時期ではないので、きっと空いているだろう、と気楽に考えながら、ある程度の目星を立てた。


最初の目的地は、横浜。宿泊場所がなかったとしても、最悪どこかにいられる場所である。最後の手段はネットカフェ。できればそれなりの、一泊食事つき数万円の宿屋を取りたいところではあるが。


海を眺めながら、最初の昼食。購入しておいた駅弁のふたを開ける。炊き込みご飯という非日常がうれしい。一人旅をするような人であればビールの1本でもあけるのだろうが、これからどうなるかわかっていないので、アルコールは避けた。


線路から出る音が耳に気持ち良い。

災害からの復興の足跡が見える海岸線は、まだまだこれからだと意気込んでいるように見えた。



窓の外を眺めていると、気のよさそうな男性が話しかけてきた。どうやら目的地は日光のようだ。

「一遍行ってみたかったんだが、嫁が病気ンなっちまってな。なかなか行けなかったんだ。もう死んじまったが、もろもろ落ち着いたから嫁にも東照宮見せてやりたくてな」

そうやって取り出した写真の中の女性は、とても明るく笑っていた。

「旦那さんと旅行出来て、楽しいでしょうね。以前はよく旅行に行かれていたのですか?」

「いやぁ、うちは金が無かったでな、わしもずっと働いとったし、出かけるひまなんぞありゃせんかったわ。嫁にも苦労かけたから、生きとるうちに連れてってやりたかったが」


乗り換えのためにその男性は降車していった。

小さい古傷の残るその体は、見た目より大きく見えて。

ただ、漠然と。

なんか、いいな、と思った。

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