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12.星降る里の一幕

冬は空気が澄んで、小さな音でもよく聞こえてくる。少し遠くで鳴る信号機の音、隣の家の生活音。車が1台通っていく音や、散歩する人の話し声・・・もともと車どおりが普段から激しいわけではないが、早朝と深夜は特に静かだ。100メートルや200メートルの音はほぼ聞こえてくる。もしかしたら1キロ先の音も聞こえているのかもしれない。


3階のデッキに上がって、春江はくしゃみをした。風邪がぶり返したのかしら、気を付けないと。

空を見上げると、満点の星、星、星。

デッキチェアをもってきて、もたれかかるように腰を下ろす。天気が良くてよかった。


天体の授業はお気に入りで、今でも少しは覚えている。

北極星より、先に見つけたのはオリオン座。真っ先に覚えた星座。最初のころは7つの星で成り立っていると思っていたが、実は違った。何個だったかは覚えていないが、7つよりはそこそこ多かったはずだ。砂時計のように見えていたが、昔の人はあれを見て、人の形を想像したようだ。ほかの星座は「なんでそう思ったの?」というようなものが多いが、オリオン座に関しては同意する。そうにしか見えないもの。


ふと考えるのは、こぐま座、おおぐま座の尾の長さだ。ヨーロッパの熊は、長い尻尾をもっているのかしら。調べたこともないので、某番組の少女に叱られてしまいそうだ。


想えば、こうやってゆっくり空を仰ぐのも、いつぶりだろうか。見続けていたのは前後ばかりで、上下は気にも留めなかった。こんな余裕があったなら、今でも作品を書き続けられていたのだろうか、とネガティブ思考に入りそうになる。やめよう。


星の光は、過去からのギフトだ、と中学校の頃の科学の先生がよく言っていた。

「例えば、あの星が1万光年先にあるとする。あの星からここまで光が飛んでくるのに1万年かかる、ということだ。つまり今見ている星の光は、1万年前の光だということになる。例えば、あの星は、もうなくなっているかもしれない。でも、1万光年先にある星がなくなったことに気づくのは、無くなってから1万年後だ」

当時はよくわかっていなかったが、光ですら1万年かかる距離にある星が見えるのは、1万年前にこの星があった、という歴史が、確かに存在するという証明だ。“いま”あの星は無くなっているのかもしれない、そう思いながら見ると、望郷の心のような、少し寂しい、けれど面白い、と感じる心が芽生えてくる。


昔、懐中電灯を空に向けると、光が反射して、夜も明るくなる、なんて考えたことがある。あの時の光は、今どこにいるのだろうか。あの時飛ばした場所から、まっすぐ進んで、どこかの星にぶつかって、そこにもし何か生き物がいたら、まぶしがるのかもしれない。


そんなことを考えながら、春江は自然のプラネタリウムを存分に楽しんだ。

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