11.現在
谷川さんと別れて、家への帰り道。
「こんなんで、いいのかな」
ふ、とつぶやく。近くをたまたま通りかかった小学生が訝しげに眉をひそめている。おっと。
「こんばんは」
ごまかすように声をかけると、少女は一目散に逃げていった。そんなに怖がらなくてもいいのに。
焦ったって仕方がないのはわかっている、つもりだ。でも。しかしだ、このままいくと、足踏みの期間が、いささか長くなってしまうのではないか。若干不安になる。
知っている人と会うのは、いいこともあるが悪いこともある。よくわかった。それが体験できたものでも儲けものとして、また頑張るか。ネガティブなほうに傾いてしまった心理状態を無理やり前向きに引っ張って、強引に納得させる。こうでもしないと、私は自殺しかねない。そんな気がしてならない。
問題は急いても解決しない。時間をかけてしっかり向き合っていくことにしようと決意し、とりあえず今は晩御飯を何にしようか…。
幼少期、通学の時通ってはいけないと注意されていた商店街から、鼻腔をくすぐる匂いがしてくる。今も学校や幼稚園の先生、保育士さんは「危ないからいっちゃいけません!」いっちゃいけません!というのだろうか。当時とはまた違った危なさである気がする。
空いている店は5~6店舗。本日休業の札がかけっぱなしになっている店ばかりで、実際に本日“は”休業だという店はほとんどない。昔は30以上あった店も、ほとんどがシャッターを閉め、ここの歴史を秘めている。その中の数少ない営業店舗の一つに、「うまコロ」の文字がひらひらと風に揺られるのぼりが立っている。一時は2時間待ちの行列ができた(店員によると)こともあるそうだが、今では買いに来る客も少ない。
「いらっしゃいませ!何にしますか?」
「じゃあコロッケと、ええっと。これがいいかな、ハムカツください」
「あわせて170円やね。おおきに」
コロッケを齧りながら商店街を歩く。すっかりさびれてしまって、昔の活気は微塵も感じられない。
どんなものでもはやりすたりはあるものだが、よくなじんだものがなくなっていく、というのはさみしいものである。
この商店街に残っている店に、今より少しお客さんが増えますように、と願っても、ばちは当たるまい。アーケードを抜けてから振り返り、祈った。




