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私は思った。私の家族は宇宙人だと。 3

だいたい2話くらいで完結とか言ったけど、まだ続きます

 

 飛行機を降りて直ぐの頃は、まだぐったりしていたが、30分くらいたった今は容態も良くなり、2人が騒ぎ始めた頃だった。


「いやー、流石北海道。めっちゃ寒いな。こういう時あるよね?」

「はっ?」


 いきなりテレビショッピング的なのを始めた。


「でも大丈夫!ママの愛があれば。ほら、この通り、こんな格好でも寒く無い!」

「すごですね!でも、そおゆうのって、お高いんでしょ?」


「それは勿論。だって、ママの愛は誰にも買えない……俺だけの物だから」

「いや〜ん、パパたら」


 そんなアツアツな事をしてるわりに、2人の体はあまりあったまっていない様だ。少し震えている。


「そうゆうのいいから、早く着替えなよ。風邪引くよ」

「わかったー、ちょちょっと着替えてくる」


 数分後


「お待たせー」

「……で、なんでその格好になるの?」


 コツコツとヒールの音を立て、モデル歩きしながらトイレから出てきた母。そんな母に対し父はお約束通りの、解説を始める。


「さてさて始まりました。KOBAYAKAWAプレゼンツ、ファッションショーを開催します!!トップバッターの、小早川 由紀子さん。今回は"雪"をイメージしたコーディネートです。白いワンピースに、白く透明なレースを羽織っており、ラメがまるで雪のようです。おっと、首元で輝いているのは、結婚5周年にプレゼントしたネックレスですね。金色に輝いており、いいワンポイントアクセサリーです。やはりコーディネートは"こーでねーと" (笑)」


「「……」」


 なんか、さっきより寒くなった気がする。


 流石の母もついてこれないようで、頭の上に、はてなマークが何個も漂っている。言った張本人は親父ギャグを言ったままの笑顔で固まっている。誰か笑ってくれるのを待っているのだろう。


 でも、いくらたっても誰も笑わなかった。


 そんな空気耐えられなかった父は真顔になり

「えー、とゆうわけで、札幌行きの電車に乗ろおと思ういます」と言って、小さなため息を一つ吐き、下を俯きながら駅の方へ歩いていった。


「ほ、ほら、優衣ちゃんも行くわよ」

「うん、わかった。でもお母さん、寒くない?大丈夫?」

「少し寒いくらいだから大丈夫だよ」」

「そうなの?無理しないでね」


 私は、本当に愛の力があるんじゃないかと疑ってしまった。それ程に母の着ている服の生地が薄い。まぁ、父の格好も大して変わらないが、父は大丈夫だろ。基本、家の中では全裸だから寒さ耐性はカンストしてるはず。


 少しくらいの寒さなら耐えれるだろう。ちなみに母が全裸なのは風呂上がり30分程。


 電車乗った私達は空いている座席に座った。2人とも飛行機で疲れていたらしく、座るなりすぐに寝てしまった。まぁ、父は精神的にも疲れたと思うが……。


 そんないつも騒がしい2人が寝ていたのでとても静かに、かつ快適に車内を過ごすことができた。


 そんな静まり返った車内で、私は外の風景を見ていた。車内からの眺めはとても綺麗で美しく、見ていて飽きなかった。雪景色を満喫していた私は、いつのまにか札幌駅に着いたことにびっくりしつつ2人を起こすのであった。


 駅を出たら、駅前が真っ白だった。やはり北海道の雪は別物だ。東京とは違い、雪がサラサラしている。風が吹くたびに、細かい雪が宙を舞い、それが太陽に反射してとても幻想的な光景になっている。東京では絶対に見ることのない光景だ。


「お父さん見てみて!雪だよ、雪。沢山積もってるね!それにとてもサラサラしてる!」

「おーー。これが北海道の雪か。流石に綺麗だなー……よしッ!」


『ん?なにが……"よし"?』


 そう言うと父は急に走り出した。


 そして、バレーのフライングレシーブをするように手、腹の順に体を地面につけ、氷の上をすべりし始めた。数メートルに渡り見事な腹すべりを披露した。私はいつ止まるのだろうと思いながら見てると、その時は突然やって来た。


コンクリートが姿を現したのだ。突然の事でびっくりしているが、もうどうしようも出来ない。そのままの勢いでコンクリートに突っ込んだ。そして、急に減速したものだから、当然体から付いて行けず、父はブリッヂをするように足だけが宙を舞った。そして、停止のサインのように鈍い音が駅前に響き渡る。こんな状況なのに父は最後に一言こう言った。


「ペ……ペンギンの……腹…すべり……」


「「「「「…………」」」」」


 駅前の時間が止まった。


「ママー、あの人なにしてるの?」

 と言いながら父を指差す子供。親はそれを子供に見せないように「あれは見ちゃダメ」

と言いながら、子供に目隠しする。


 みんな父に対し蔑んだ視線を送っている。


 そんな殺伐とした空気の中、父が下をむいたままゆっくりと立ち上った。そんな父に更に視線が集まる。それもそのばす、腹すべりをした事によって、地面の泥で服が汚れ、更に滑り止めの砂利で服がボロボロになっている。それはまるでゾンビのようである。


 そんなゾンビな父を見て、流石の私も可哀想に思えた。いつも全裸でも、いつも変な事ばかりしてても、これでも私の父なのだ。


 そう思っていると、父が歩き出した。肩をヒクヒク揺らしながらゆっくりと。私は『今回くらいは慰めてあげよう』父の姿をみてこう思った。こんな父を見たのは初めてだからだ。


 そんな事を思っていると、私は変な感覚に襲われた。父は遠くにいるはずなの、こっちに来る速度が速すぎる、と。目を凝らしてよく見ると……父はこっちに走って来ていたのだ。


 私はゾッとした。


 私達は下を向いていたので勝手に泣いていると思っていた。たが実際、泣いていない、むしろいい笑顔で手を振らなが「ママー、優衣ー。これめちゃくちゃ楽しいぞ!やらなきゃ損だぞ!」と言いながらこっちに向かってくる。


 私は全身に鳥肌が立ち、脳から危険信号が出まくっている。この危険信号をいち早く察知した私はこの場から逃げようとするが、母が動こうとしない。むしろ目をキラキラさせ、やりたそうにしている。そんな母に喝をいれこの場から立ち去ろうとするが、父は私達の名前を呼びながらこっちに向かってる。


「由紀子さーん!!優衣ちゃーん!!」

 それに答えよと母は

「生駒さーん!!」

 こんな寸劇をする始末。

 さながら私は悪どい兵士か。


 ちなみにこの駅前で起きたこの事件は、札幌市内で一時期噂になり"あれは雪が降らなくなった未来から来たタイムトラベラーだ"とか、"人間の皮を被った宇宙人"だとか、色々な噂が飛び交い市内を騒がせた。


 それと同時に、ある人も噂になっていた。それは、ボロボロの服着き、全身から生気が抜けたような、青白い顔で市内を徘徊する男性。まるでゾンビのようだ、と。そう、父である。父が私達を探していた時、ボロボロの服で徘徊してるの目撃されたのだろう。私がこの噂を知るのはまだ先の事である。


 何とか逃げ切ることができたが、母が「パパァー、パパァー私はあなたに会うことが出来ないの?ウェェェー」と母が泣きじゃくり、慰めるのが大変だったが、何とか落ち着かせることができた。


 そして2人の格好をどうにかすべく、洋服屋に足を運ぶのであった。手軽な値段で暖かそうなもの買い、母の着替えは完了。そして1番の問題はどうやって父に服を渡し、着させるか。私が悩んでいると母がある事を思いついた。それは、母がいつも見ている刑事ドラマでよくある事。


 刑事ドラマであるある展開といえば、身代金を犯人が指定したロッカーなどに入れ、それを犯人が受け取る。それの服バージョンをやろうとゆうのが母が思いついた考えだ。


「なるほど……」私は感心する。まさか、母が見ている刑事ドラマがこんな所で役にたつとは。まぁ、それは置いといて、それが確実に父に渡せる手段だろう。父に会わずにすみ、例の物を渡せる。私はこの案にする事にした。



「………あっ、お父さん、今どこにいるの?……えっ?わかんないの?あっ、そっかここ北海道だもんね。じゃあさぁ、近くに何か目立つ建物とかあるの?………東京タワーみたいの?あー、それテレビ塔だね。じゃあ、30分後くらいにそこに行って、新しい服 届けるから、また30分後に連絡するね………えっ、"このままでいい"。いい訳ないでしょう!そんな格好で歩くんだったら、私達、お父さんと一緒に歩かないから。………うん、じゃあ、そうゆう事で、……うん、はいはーい」


 私達は父に用件を伝えた後父の服を持ち、テレビ塔へ急いだ。なんとか、待ち合わせ時間の10分前に着くことが出来た。そして、テレビ塔の入り口に紙袋を置きその場を立ち去った。


「………お父さん、入り口のところに紙袋置いといたからのその中の服に着替えて。着替え終わったら、テレビ塔の3階に来て。そこで待ってるから。………じゃあ、また後で」


 数分後。


「まったくもー、どうして、僕を置いてどっか行っちゃうのよー。ひどいわよー」そういいながらオネエ 口調の父がへらへらしながら現れた。


 本当、心配して損した。私の思いやりを返して欲しいものだ。よくまあ、あの状況であんな事、言えたものだ。たくましいのか、空気が読めないのか、ドMなのか、それともただのアホなのか。私は改めて父の凄さ実感した(別の意味で)。もとより、父があのくらいで凹んでいたら、とうの昔にこの病気な治っているだろう。



 合流した私達はとりあえずホテルへ行った。


 チェックインし、部屋に入るなり私はベットにダイブした。「はぁー……疲れた」もうこの言葉しか出ない。北海道に来てこれしか言ってない気がする。空港では、注目を浴びて疲れ。機内では、看病で疲れ。北海道では、走って疲れ。私は、2人の面倒を見るために北海道に来たわけじゃないのに。よし、気分を変えよう。楽しいことを考えるよう。そうだ、これからカニを食べに行くだった。いっぱい食べてやる。そういえば、何時に行くんだろ?


「お母さん。何時にカニ食べに行くか知ってる?」

「まだ優衣には言ってなかったわね。18時頃にホテルを出る予定よ」


『そうか…18時頃ね。今は…15時過ぎだから2時間くらいは寝られるかな』


「ふーん、わかった。眠いから少し寝るね。17時45分に起こしてもらえる?」

「うん、いいわよ。おやすみ」


 しばしの休息に入る。



「17時45分だぞー。起きろー。2人でカニ食べに行っちゃってもいいのかな?。10秒以内に起きないと……優衣のほっぺにチューしちゃうぞ?いくぞー、10ーー9」


 脳から伝達された危険信号を受け取り、私は目を覚まし、一気に体を起こす。


「おはよう、変態ロリコン」

「じょ、冗談に決まってるだろ。はあ、はああああぁぁぁぁ。って、僕ロリコンじゃないからね!?今のは……そう、愛情表現だよ。外国とかでしてるだろ?ほら、挨拶するとき一緒にチューとか?それと同じだよ。そもそも、親が子にチューして何が悪いの?これくらい、家族だったら普通だろ?もしかして、これが反抗期ってやつか!?。そうなのか?どうしようママ、優衣が反抗期に入っちゃったよ。あっ、ママいないんだたった」


 さらっと大事な事を言った。


「ちょっと待って、お母さんがいないってどうゆう事?」

「ママは先にお店に行って、予約してもらってるんだよ。だからここにいないだよ。それとも、ママに起こし欲しかったの?残念!パパでした。あはははは」


『イラッ!!』


「……はぁ?何言ってんの?そんなの、お母さんに起こしてもらいたいに決まってらでしょ。こんな変態に起こされたら、目覚め悪いでしょ。普通」


 父がなんかキモい事を口走っていたのでとりあえず罵った。が


「ハァーハァー、まさか、娘にこんなに罵られるとは、思っても見なかったよ。なんだか、新しい世界の扉が開きそうだよ、ハァーハァー。優衣、責任……とってよ…ね?もっと罵ってくれないと、許してあげないんだから!」


 ドM+ツンデレ+ロリコン+変態て……救いようの無い、キモキャラが誕生してしまった 。こんな沢山の属性がついたキャラなんてなかなかいない。しかも、ツンデレ以外、全ての属性がキモキャラ属性て。いや、違うな。おっさんがツンデレとかキモすぎる。故に全てキモキャラ属性だ。流石父、全てにおいて一般人とは違う。


「……な、なーって、全て演技でしたー!どうだ、見事騙されただろ!」

「話しかけないで、変態がうつる」


「ウッ!」と言いながら、頰を赤らまる父。絶対演技じゃないだろ。完全に目覚めちゃてるだろ。よし、ここはひとつ鎌をかけてみるか。


「どうしたのパパ?早く行こうよ!ママ待ってるよ」アイドルスマイルで父に接する。


「あっ……うん……そうだな。よっし、行くかママのところへ。ところで、身支度とかしなくて大丈夫か?」

 パパて呼んでもらえて嬉しいけど、罵ってもらえなくて悲しい。そんな、なんともいえない表情をしている。


 そんな父に対して一言


「はぃ?気安く話しかけないでくれる?変態がうつるから。てか、"身支度したら"って言うなら部屋から出てってくれる?それとも、そんなに着替え見たいの?本当ロリコンね」


 私は若干の笑みを浮かべ、ドSキャラを演じる。これで喜んだらドM。お説教もしくは普通に部屋を出ていけばただの変人。もう演技なんで言わせない。この状態では、言い逃れは出来ないのだ。これぞ、パーフェクトプラン。さぁ父よ、どうする。


「………そっ、そうだよな。ごめんな、パパ気が効かなくて。でも、親はああゆう口の聞き方はどうかと思うぞ。だから、パパだけにしなさい。ママの前ではああゆうのは、絶対言わないこと。それ以外ならぜんぜん言っていいから。それじゃあ、外で待ってるから」


 今はっきりした。父はMだ。父たる威厳を見せつけようとするも、自分の願望もちゃかり主張して部屋を出ていった。頰を赤く染め、ハァハァ息を荒げながら。喜んでるようにも見える。控えめに言って気持ち悪い。


 まぁ、悪は去った。母も待ってることだし、あんな変態はほっておいて、さっさと身支度を済ませよう。私は軽く寝癖を直しホテルを出るのであった。



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