私は思った。こんな日常が好きなのだと
今更ですが補足です。
文中に出てくるこの''−−'' 短い横棒。これが文の最後にある場合と、最初にある場合があります。この最初と最後の短い横棒がセットであり、その文がまだ終わってない事を示しています。なので、読みにくいかもしれませんが、よろしくお願いします。
そして、今回の話し少し重いかもです
誰もいない教室。外から聞こえる生徒達の声。教室に差し込む夕日。
私はそんな、オレンジ一色に染まる教室で待つ。
好意を向ける彼が来るのを。
「どうしたんだよ、こんな時間に」
教室の扉が開き彼が入って来た。それと同時に私の心臓はバクバクと音を鳴らせ、手が汗ばんでくる。
この瞬間は何回経験しても慣れない。断られたらどうしよう。このしつこい行為に嫌気がさし、嫌いと言われたらどうしよう。そんな嫌な考えが頭の中をグルグルと回る。
しかしそれでは彼との仲は縮まらない。そして私がウジウジしているうちに、彼の隣に別の女が………そんなのは嫌だ。 それなら覚悟を決めろ、彼とのイチャイチャライフを送るために
「師匠………いや、工藤 蓮くん。私と………SMプレイを前提に付き合って下さい!!」
「ごめん、何回も言ってるが無理だ」
私の15回目の告白はあっさり終わった……
「ししょー なんで断わるんですかー そんなに私の事嫌いですか?」
「いや、嫌いじゃないよ。嫌いだったらそもそも西園寺と話さないし、ここに来ない」
嫌いじゃない………
嫌いじゃない………
嫌いじゃない………
と言うことは師匠は私の事が好き?
「師匠、好きです」
「今断ったじゃんか」
16回目も失敗。流石にここまでくると、私に女としての魅力がないのではと疑ってしまう。確かに柔道をしていたため、男勝りなところもあるかもしれない。しかし、私がフラれた回数が増えていくたび、女としての自信が失われていく気がする。
「師匠、1つ聞いてもいいですか? 私の事可愛いと思いますか?」
「そんなの10人中10人が可愛いと答えるはずだぞ」
可愛い………可愛い………可愛い………
ぐっはぁぁぁぁ
西園寺 凛花。失神
「おい、西園寺!! 大丈夫か!」
「だ、大丈夫です。ただ単に師匠の言葉が嬉しくて。そして師匠に抱き起こされてるこの状況にも、幸せを感じています」
「そうか、頭には異常がありそうだが、身体的に異常がなくてよかったよ」
「師匠は優しいですね」
「はいはい。取り敢えず帰るか」
「はい! そうだ、帰りどこかよりませんか? 裏山のラブホとか」
「行かない、さっさと帰るぞ」
「うぅぅぅぅ…………はい………」
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翌日
「優衣さまー、また師匠にふられちゃいましたー。なので、いじって慰めてください」
「嫌ですよ。私オープンM嫌いなので来ないで下さい」
「優衣さまー、そう言わずにお願いしますよ」
「嫌ですよ。そうゆう事ばかりするから、蓮くんにフラれるんじゃないんですか?」
「うぅー 痛いところ付いてきますね…………そもそも、師匠はどんな女性が好きなんですかね?」
「そんなの知りませんよ。そう言う事は本人に直接聞けばいいでしょ」
「そ…………そんなハレンチな」
「今更ない言ってるよ。本人に聞くのが嫌なら、周りの人に聞いてみてはどうですか?」
「そうでね、そうしましょー!!」
そうは言ったものの、師匠が良く話す人………相原と……あれ? 師匠がよく話す男子生徒は相原だけ? 確かに師匠の周りには女の子が多い。しかも、優衣さまと津々井さん、両方可愛い。もしかして、もしかすると、師匠はいつ 誰に惚れてもおかしくない状態。頑張らないと
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「相原、師匠が好きなタイプを押しえて!」
「そんな事聞いて来るって事は、またフラれちゃったかー」
「別に、相原には関係ないでしょ、もう。そ、それで、師匠はどんな人がタイプなの」
「まあまあ、そう焦るなって。まずは工藤の周りを観察してみよ」
私は相原の言うまま、師匠のいる方へ視線を移す。そこには、師匠の周りに優衣さまと津々井さんがおり、そこではいつもの様に下ネタを話し師匠を弄っている姿が見える。
「あれがどうかしたの? いつもの事でしょ?」
「そう、あれはいつもの光景だ。そしていつも通り工藤も嫌そうな顔をしているな」
「何が言いたいのよ」
「つまりだ、工藤が嫌な顔をしているのは、弄られてるのもあるが、女子が下ネタを言うとこにある」
確かに、優衣さま達の下ネタでの弄り方は容赦ない。それなら師匠が女の子が言う下ネタに嫌気がさす理由もわかる。
つまり
「下ネタを言う事自体が私自身の好感度を下げている」
「その通り」
私はなんとゆう事をしてしまったんだ。自分で自分の首を絞めるとはこの事。そうなると昨日の告白は論外。SMプレイを前提にお付き合いとか、師匠に断られて当然だ。
あれ…………
よく考えてみれば、師匠に告白すると私下ネタしか言ってないのでは?
3回目
『師匠!! 私のバージンあ・げ・る♡』
『ごめん、無理』
7回目
『師匠、結婚して子供作りましょ?そのためにも付き合いましょう?』
『いやダメだ。俺の遺伝子の中にはハゲる遺伝子が含まれている。子供にも髪が生えない人生を送って欲しくない』
『大事ですよ。師匠には一本の立派な棒が生えていれば』
『うん、やっぱりない』
14回目
『師匠には、私のおっぱいを自由にする権利を与えます。なので付き合いましょう』
『そう言うのいいから』
「相原、私は大きな間違いをしていたみたい。私、頑張る」
「そうか。ところで1つ聞いていいか。なんで工藤のこと好きなんだよ」
「えぇーー、どうしようかなぁー そんなに聞きたいの?」
そんな事を言って西園寺は相原を焦らす。しかし西園寺自身から言いたそうな雰囲気がダダ漏れである。
しかし、流石ストレス三銃士の一人、相原。西園寺の性格を知っているため、小早川と同じように起点を利かす
「じゃあいいわ」
「言います、是非言わせて下さい!!」
すると、こんな具合に手のひらを返す
「優衣さま以外に弄られるなんて、なんて屈辱。覚えておきなさいよ!! まぁ〜、それは一旦置いといて…………ゴホン……私は小さい頃から柔道してたから、不良に絡まれた時みたいに、男の子に守ってもらった事ないんだ。その時に師匠の事好きになったんだ………って、何言わせるの、このアホ! じゃあもう行くから」
自分で言っておきながら逆ギレする辺り……やっぱり俺に対してツン100パーセントだな
そして工藤。お前は紛れもなくラノベ主人公だ
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「師匠、放課後 告白するので今日も教室で待っててもらっていいですか?」
「お、おう。わかった」
まさかの教室で、告白宣言。その宣言と共に騒がしくなり俺に視線が集まる。今更始まった事ではないが、この教室中から集まる視線に未だ慣れない。
そんな告白宣言をした西園寺だが、いつもと雰囲気が違う気がする。いつもの西園寺なら『師匠! 今日告白するので放課後時間空けといて下さいね! あと、ゴムを携帯しといて下さいね!!』的な事を言うのに今回は何も言わない。とても違和感がある
そして特に何事もなく放課後を迎えた
クラスの人達は6時間目が終わるなり、さっさと帰ってしまった。俺たちに気を使ってくれているだろうか。あの小早川達ですらさっさと帰ったのだ。何もしてこない辺り、逆に不気味である
そして、そんなこんな誰も居ない教室で待つ事30分。
その頃になると、校内の生徒はほとんど下校しており、教室のある階にはほぼ生徒は残っていなかった。そんな静まりかえった廊下に歩く音だけ響き、この教室に向かって来ているのが分かる。
そして、その足音は教室の前で止まり、扉を開け教室に入ってくる。その足音はもちろん西園寺である。
「工藤 蓮くん、待っててくれてありがとう」
そう言う西園寺の内心はどうあれ、俺から見た彼女はとても落ち着いているように見え、いつもより数段 大人びて見えた。
そして教室に入り、俺の前に立つなり早速話しを切り出してきた
「私は工藤 蓮くんの事が好きです。この際だから工藤くんを好きになった理由をちゃんと言いますね。私は誰かに守って貰った事がありません。柔道が出来るからと、家族にも凛花は強いから心配ないと言われた事もあります。私だって1人の女の子なのに。そんな時、私の前に現れた一人の男子高校生、工藤くんです。彼は私と裏道でぶつかった時も優しく受け止めてくれました。受け身を取る事だって出来たのに。初めてだったんです、あんなに優しくされたのは。そんな初めての事に戸惑いを隠しきれないまま、先生に案内された教室。そこには貴方が座っていた。その時、私は運命だと思いました。そして話すうちにいい人だと思いました。なんやかんやで面倒見がいい事、心の広さ、私みたいな面倒な人にも呆れずちゃんと話を聞いてくれた事。私はどんどん工藤くんに惹かれていきましました。そして、私が不良から叩かれるのを庇ってくれた時、私は驚きました。私は自己紹介でも、Mである事を公表していたし、その日会ったばかりの人間を助けてくれると思わなかったからです。そして、自分のクラスでのこれからの立ち位置など考えず、私を守ってくれた時、この人なら私の全てを委ねてもいいと思いました。あの時は『よくわからけど』と、はぐらかしましたけど………これが私が師匠が好きになった理由です。それで………ですね………こんなMで、ワガママな私と付き合ってもらえますか?」
私は師匠に思いの丈を全て伝えたい。あとは返事を待つのみ。しかし、この返事の待ち時間。いつもより長く、無限に続くのかと感じられるほど。そして待つ事数秒。帰ってきた返事は
「…………ごめん…………−−
だった。この言葉を聞いた瞬間、私の目から涙が溢れ落ちた。
俺がこの言葉を発した途端、西園寺の目に涙が溜まり、一本の涙の線を描きながら雫が教室の床に落ちる。自分が酷い事をしている自覚はある。そもそも不良に叩かれるそうになった時、西園寺を助けたのは彼女の痛がる姿を見たくなかったからだ。そんな俺は今 何をしている。結局、泣かせているじゃないか。何がしたいんだ俺は。自分で自分が嫌になる。
それでも…………西園寺の思いにしっかり応えないといけない
−−西園寺がここまで俺の事を想っているとは思わなかった、ありがとう。素直に嬉しいよ。俺も西園寺が言ったように、自分が思ってる事をちゃんと話すよ。俺が付き合わない理由は、この日常が好きだからだ。相原や津々井、小早川や西園寺に囲まれて過ごす日々。毎日下ネタやらハゲネタやらで弄られ、ストレスが溜まるこんな日々が。でも、嫌じゃないんだ。おかしいよな、散々小早川達には弄るのをやめろと言ってるのに、やっぱり俺はドMの変態かもしれないな。それでだ、仮に俺と西園寺が付き合ったら、今の関係が崩れるかもしれない。俺と西園寺に気を使って、3人が近寄らなくなるかもしれない。俺はそんな日常は望んでないんだ…………これが俺が付き合えない理由だ。もちろんわ自己中な事を言ってるのは自分でもわかってる。西園寺が言った思いに応えてあげられなくて本当にごめん。こんな自己中な答えだ、叩かれる覚悟は出来ている」
師匠はやっぱり優しいな。私が傷つかないように、でも師匠自身が言いたい事を言葉を選びながら使っている。そしてそのせいで、師匠に辛い思いをさせている。
私は好きな人に辛い選択をさせてしまっている。私がしたかったのはこんな事ではない。楽しく、笑顔で話しをする事だ。私がしているのは真逆じゃないか。
それなら、いつものように話したいなら、私がいつものようになるしかない。辛くても笑顔を作るんだ
「………師匠はやっぱりMですね! 自分で叩いてくれとか言っちゃって。どんな状況でも痛みを求める気持ちを忘れない。さすがMの鏡ですね。それにせっかく今日一日下ネタを封印したのに水の泡でしたね…………−−
俺には、西園寺が空元気を出し無理に笑っているのがすぐに分かり、それと同時にそうさせてしまった事に心が痛む。しかしそれ以上に心が痛み、傷ついているのは西園寺だ。今までの告白とは訳が違う、思いの込めた告白が失敗してしまったっからだ。しかし、慰めることは出来ない。この状況を作り出した張本人にはそんな資格ある訳ない。
−−でもね師匠、それでも私は工藤 蓮くんが好きです。愛しています。いつ襲われてもいいように準備もしています。だから、私は何回フラれようと告白するのをやめませんし、好きでい続けます。そんな重すぎる私の思いを、今まで通り受け入れてくれますか?」
俺は悩む。付き合う気がないのにそんな、自分に都合のいい事だけ許して良いものかと。しかしそれでは、西園寺が言ったこの覚悟を踏みにじることになる。はぁー、こんな御都合主義の自分が大嫌いだ。
「こんな、自己中で御都合主義の俺でよければ」
「ありがとうございます!! 師匠はこれからも、私のヒーローで、私が好きな人です!! それにしても………男の子に泣かされる初めてです。これは責任を取ってもらわないと………チラリ」
「な、何が望みだ。俺は大金は持ってないぞ」
「そんなんじゃありませんよ。私の事をこれからは『凛花』って呼んで下さい。ただそれだけですよ」
俺はその時、過去に津々井にやられたい悪戯を思い出し、一瞬名前で呼ぶ事を躊躇したが、あんな事を言った手前断ることは出来ない。
「り、凛花………これでいいか?」
「師匠からの『凛花』頂きましたーー!! これで私たちは特別な関係ですね!! それじゃあ、特別な関係になったお祝いに帰りにカフェでも行きませんか? いや、いきましょー!! 今日の師匠には拒否権がありません!!」
「わかったよ。しかし俺は金欠だ。奢ってやる事は出来ないぞ」
「構いませんよ。私は師匠と入れるだけで幸せですから」
「…………そうか」
「あれあれ〜 今私にときめいちゃってます?いいですよ〜 欲望のままに襲っても。むしろここで既成事実を作っておくのもアリですね!」
「い、いいから行くぞ、凛花」
私は師匠がさりげなく呼ばれた『凛花』という名前によって、私はフラれた事など一瞬で忘れた。それと同時に顔が赤く染まり、嬉しさのあまり口元がつい緩んでしまう。
全く、不意打ちはずるいですよ
「……………はいッ! 師匠!!」
私は今日、盛大にフラれた。もちろんフラれて悲しい。こんなにもハッキリと自分の想いを伝えたい事はないからだ。しかし、不思議な事に悲しいけど悲しくないのだ。
なぜって? それは私は気づかされからだ
私もこの日常が好きなのだと




