☆セシリアさんは、丸投げしたい▼
お、お久し振りです。読者の皆様方。
今週は何をされてますか?
お盆休みだったり、仕事だったりなどなどあるかと思います。
私は……………絶賛お休みに調子乗ってしまっての、昼夜逆転状態です。
わ、わぁ…………はやくなおさないとぉ。
世界異能機関、WAO(World Abilities organization)の衛生管理者【セシリア】。
彼女は本部在中の衛生部隊副管長を任せられる程の、見た目10代でナース服を着た人物である。コスプレの様なピンクであり、スカートも短い。更には見せつける様にガーターベルトだ。
“セシリア”という名前で皆から呼ばれているが、実は偽名であり本名は彼女自身明かすつもりはない。
「………はぁ、だっっっる」
本来彼女は天真爛漫な破天荒美少女。その場の空気や現状を無視してワイワイがやがやを率先する女だ。
が、現在彼女は机の上に突っ伏していた。
「あんのっっっ【深淵】!めちゃくちゃ面倒事を放置しやがってからにっ!」
セシリアは舌打ちと片手に持っていたペンを、かつての同僚が写っている写真立てを穿つ。
そこに映し出されていたのは、旧【真序列】全員の集合写真だ。元【深淵】がまだ【真序列】1位ではなく、入隊仕立ての時期。同時期に唯一の同期であり、同年代だった故に何かと関わりがあったのだ。
まず始めに言っておくが、セシリアは元【深淵】のことは好いてはいない。むしろ嫌いなレベルだ。
仏頂面で何を考えているか分からないし、事務的に仕事をこなすのは構わないが多方面から喧嘩を売り過ぎていた。彼本人からすれば、1位として嫌われる覚悟で行っていたのだろうが………。
一人で何もかも解決するのも構わないが、結局彼自身に付いて来ず、組織内で後任者は兎も角他の隊員達の育成を全くしていない。
それはまだいい。
まだ10代で、しかも最前線に戦う為に育成までに時間を費やすことは難しい。まあ隠れて見込みのある人材を育て上げていたらしく、結果的にWAOの戦力が維持されるらしいが。
「はぁ」
元【深淵】は完璧というイメージがある。彼を知る隊員達であればそういう印象を抱かれているだろう。
が、セシリアから見てそういうイメージは無い。むしろ仏頂面で表情は分かりにくいが、彼がやってきたことは面倒臭い、の一言で収まる。
直近であれば、【高嶺美花】のことだろうか。
彼女のことはセシリア自身、知らない筈もない。アイドルであり、モデルの彼女は日本で有名だ。一時はテレビを付ければCMに引っ張りだこで見かけない日は無い程である。
「それが突然の引退…………からの、ここへ入隊とか」
彼女はアイドルの中でも高い地位を確立したのにも関わらず、突然引退の宣言をしたのだ。当時、モンスターによる災害によりそれどころで無かったにも関わらずその件はメディアなどで大々的に報道されたのである。
「(もっと報道すべきものがあるでしょーが)」
引退後に一月も断たぬ内にこのWAOの門を叩いたのだ。しかも訪れたのは自分もこの組織の一員として働かせてほしい、戦わせてほしいとのこと。
何故か不明だが、その面接を受けた中にセシリアも加わることになったが彼女が何故ここへ入隊希望したのかが………あの元【深淵】が原因だったらしい。
「(人垂らしにも程々にしろよ)」
元【深淵】に憧れて入隊を希望したものがいるのだが、大抵そういう憧れだけであれば組織に入れることなど出来る筈がない。
が、かつて前【深淵】が護衛していたアイドルということが問題であった。
前【深淵】だけではなく、WAOが【真序列】を投入する程の護衛をする彼女が単なるアイドルな訳がない。
「(能力の中でも破格─────【模倣】と【祝詞】。恵まれてるなぁ)」
【高嶺美花】が有する特殊能力は【模倣】と【祝詞】という敵に回せば間違いなく苦戦を強いられそうなもの。
【模倣】という能力自体は、彼女が元来有するアイドル時代にドラマなどの演技で培われてきたものが、更に昇華させた後天的な能力。入隊テストの際、実技で元【深淵】に近い戦闘方法、戦闘能力の高さに無視できず………これが入隊合格の決め手になった。
【祝詞】に関しては、彼女の歌声はアイドル時代に数多の歌とカバー曲が大人気となるほど。ただそれだけなら歌手として一流なだけであるが、彼女の場合テストで初めて魔法を放つ時に本来使えない魔法を祝詞をして難なくと発動したのだ。が、祝詞が無い場合は不発。つまりこれは、祝詞があればどんな魔法も使用できるということ。
【模倣】と【祝詞】を確実にモノにすれば擬似的に元【深淵】に近い存在になれるかもしれない。
「(ま、あのアホはあの子を戦いの中に巻き込まない為に敢えてスカウトしなかったんでしょうね)」
そう言えば高嶺にフラれたと意気消沈していたアホのことをふと思い出す。部下や他の隊員達の前では気にしてなさそうにしていたが、何故かセシリアだけの時は年相応に机の上で突っ伏しながら嗚咽混じりに泣いていた。あの時のセシリアの感想として(めんどくせーな、こいつ)と内心吐き出しながらも慰めていたのは今でも鮮明に覚えている。
「(それにしても─────)」
セシリアは顔を上げてグーっ!と椅子に凭れながら背延びつつある一つの懸念が解消されたことに安堵する。
「(あのバカの精神状態がおかしかった。もし、異世界に転移が無かったら─────)」
不謹慎な話だが、不覚にも転移が起こらなかった場合の元【深淵】がどうなっていたか。考えたくはないものの、最悪のシナリオは想像が付く。
「(組織を裏切り、最悪他の勢力に加担するか─────或いは、彼自ら新たな勢力そのものになる可能性があった。今時で言うなら、“闇堕ち”していた可能性は十二分にあったし」
恐らく元【深淵】は見極めていたのだろう。
地球を見放すか、他勢力と共に反逆するのか。或いは自ら先導して現代社会を崩壊させるか。
前者が濃厚だろうが、何時元【深淵】が組織を裏切るかなどは上層部が最も懸念していたこと。仕事だから、と割り切っているつもりだろうが精神的には疲弊しきっているに違いない。
故に誰かの助けがあるのか、と言われればあるが、それは自分より上、或いは自分と同等という頼れる者が居なければ結局自分が行うしかない。
「(弱音を吐かないから、メンタルケアも行っていたが──────それでも本音を吐かないからなぁ。意地を張りやがって…………)」
セシリア自身、元【深淵】のサポートやフォローを何度か経験したことがある。各本部長も同様に行っているものの、セシリアや本部長達も元【深淵】レベルで忙しい。セシリアに関しては他の【真序列】と【序列】の治療やメンタルケア、フォローなども行っている。残念ながらセシリアのフォローも元【深淵】が行っている為、セシリアと元【深淵】は互いに持ちつ持たれつの関係性であった。
ぶーくさ不満を垂らすセシリアの前に慌ただしい様子で、何人かの隊員が入室してきたのだ。
「し、失礼します」
「(失礼する気なら入んなよ)………どうぞ~⭐」
「はっ!──────と、統括!先程、【真序列】様達総本部に到着致したした!」
「【序列】達も既に待機している状態でございます」
「(へぇ……【序列】は兎も角、【真序列】共に遅刻者は0ね)」
部下からの報告書を受け取ったセシリアは新しい、そして序列が変動した【真序列】達一覧の情報に目を通す。
「(【真序列】の順位は1位は空席。しかし“四冠”とする四名が【真序列】のトップに君臨させ、順位がある者は五位から十二位まで。はてさて………これからどうなることやら)」
傍に現れた着物を纏う初老の男から“長巻”を掴む。それを合図にその初老と背後にいる魑魅魍魎どもが壁や床を通り透かしながら、その魑魅魍魎の主に集う。
「山本さん、私と共に。他の皆さんは外の監視をお願いしますね⭐」
「御意」
「「「はっ!」」」
WAO(World Abilities organization)の衛生管理者兼【真序列】・【序列】統括管理者【セシリア・アクィナス】。
その者は実質、WAOの全権を総本部長に次ぐ保有者であり──────WAOの【門番】。
【深淵】が在籍していた際の万が一、ある極秘任務を唯一任されていた存在。
その極秘任務の内容は、万が一───────────
悪意を持って、地球を害する存在になった【深淵】の抹殺である。
セシリア
(´-`).。oO(どーせ【深淵】、異世界に召喚されたら『仕事から解放♪クラスメイトの御守り?ムリムリ(ヾノ・∀・`)遊ぶなら今なんだよぉー!』みたいな感じだったんだろうなぁ…………◯ぞ、アイツ)
【真序列】※現時点序列
《四冠》
【深淵】
【天眼通】
【閃光】
【泡影】
《八大烈士》
第五位 【百花繚乱】
第六位 【風刄】
第七位 【恋衣】
第八位 【ウォーカー】
第九位 【ヘンシツシャ】
第十位 【爆撃機】
第十一位【氷壁】
第十二位【大文字】




