☆最強の遺伝子を有するクローン
短くて申し訳ないm(__)m
「ほぅ……ここが、か」
それは地球の何処かに存在する研究所内部。
あるもの全て破壊され尽くしている中、一人の少女がある巨大な筒状のガラスの容器を見上げていた。
恐らく巨大な水槽の様に見える円柱のガラス張りのカプセルには、何かが浮遊していたのだ。しかし、それは小さ過ぎず、大きすぎないナニカ。
具体的には、子供だ。
年齢は6歳から8歳の子供が、いくつものコードやキューブに繋がれている。しかし、どれも肉体に埋め込まれているのではなく、肌に触れているのだ。
「く、ぐふふ―――――っ!?ま、まさか………ここで、死ぬ、とは」
崩れた瓦礫に下敷きになった白衣の男は、この状況を理解しており、同時に己の死期も察していたのだ。だが、その表情に後悔の文字はない。あったのは、達成感に満ちた表情であった。血反吐を吐きながらも、彼は一切襲撃者に対して恨み辛みを抱いてはいない。
ただ、一つ。
この完成品がどの様に、活躍するのかを見届けられないことのみ。
「おい、襲撃者……」
「……」
「無視、か……いや、まあいい。あれは、俺の、作品だ……最高、傑作、だ……!人間とも遜色ない、最も完璧なホムンクルス……!あの[深淵]と、もう一つの遺伝子を、組み立てて、誕生した、最強の生物…………っ!」
「([深淵]、だと?確か―――――)」
「あとは目覚めさせる、だけ、だったんだが……そこの襲撃者の女、俺の最高傑作をくれてやる……!どう使おうが、お前に、任せよう……!だが、刮目、するがいい……!我が、最高傑作を―――――――」
己の最高傑作を使えと言い残し研究者は絶命した。襲撃者、【高頭夕佳里】は、下等で愚かで残虐な人間の一人である死んだ研究者の言葉に嘘偽りが無いことは理解していた。
「しかし、[深淵]のホムンクルス……件の者は知らないが、他の組織から畏怖された存在……そして、あの女男と対等に渡り合った強者、か。正直、相手はしたくないが興味はある。人間を育てる中で、どんな生物なのかの研究も出来る、か」
無造作にガラスに触れると、そのままひびが割れ粉々に破壊されるのだ。しかし、その中心にいた研究者曰く最高傑作の作品である子供はふわふわと浮遊している。
単なる生物ではない。
夕佳里はその子供を眺めていると、そのままガラスの破片もない場所に降り立った。そして今まで眠っていたかの様に、うつらうつらしていたのだが、ゆっくりと目を覚ましたのである。
「まま?」
「誰がママだ、クソガキ」
「?」
「………………まあいい、いい研究材料として連れて行くか。使えるなら有効活用する他無い」
「ぁぅ?」
まるで荷物を担ぐかの様に、夕佳里はその子供を彼女が根城とする隠れ家へ向かう。担がれた子供は最初は何がなんだか分からずきょとん、としていたのだがゆっさゆっさ、と揺れるのが楽しいのかきゃっきゃっと楽しそうに笑うのである。
「(何が面白いんだか……暴れられるより、マシか)」
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「な、名前どうしましょう!」
「あぁ、愛らしい子……まさか、こんな純粋無垢な人間の子がいるとは」
「人間などに合わせてはなりませぬぞ、夕佳里さま!この子は、我等が育てるべきでありますぞっ!」
「……洗脳でもされているのか、貴様ら」
高頭夕佳里が連れてきた子供は、他の同胞一部により研究材料ではなく自分達で育てると言い出したのである。その同胞一部というのは、母性の塊の様なキャラ。子供好きなキャラ、姐属性なキャラが大半なのだが。
「?」
当の本人は、不思議そうである。
「で、お前は大丈夫なのか?人間だぞ」
「……ぁ、ぁのっ!なっ、なんと言いますか。あの子供は、人間というより動物の気配しかしないのですよ」
「動物の気配……?」
人間嫌いの女の子。
アニメ[チートスレイヤー]の複数いる主人公の一人、エルフのマリアはそう言うのだ。彼女のキャラクターとしての設定であり、変えられない固定概念は《極度の人間嫌い》である。
彼女は人間の気配に敏感だ。それも病的なまでに、である。彼女は人間の気配だけではなく、存在感までも察知する程。どれだけ隠れようが、そこにいるなら彼女は逸早く察知する。しかも範囲は日本一のドームを超える程の広範囲。恐らく彼女以上の対人間探知は居ないだろう。
「動物、というより……精霊――――いえ、妖精に近い?」
「……そもそも、だ。精霊と妖精、何が違う?」
「そう、ですね……私達の世界よりも、この世界の知識では、精霊とは星から生まれた大いなる存在。神々とは敵対関係である、とのことです。
それに対して、妖精は精霊から外れた存在。つまり、星の味方でもない自由気ままな存在、らしいです。しかし、種族的に少ないですが、種類は最も多いとか。個々に何かしらの環境に干渉する力―――――同胞の言葉を借りると“パッシブスキル”を持っているらしいです」
「ほぅ……元々は精霊と妖精は同じ、ということか?」
「恐らく、星の意思を従わない妖ということでしょう。ですが、だからと言って神々の味方という訳ではないらしいですけど」
「なるほど。どっち付かずと言う訳か」
「あくまで、純粋な妖精であればの話らしいですが」
「で、それは純粋な妖精か?」
「…………わかりません。ですが、あの魔力量は恐らく夕佳里様に次ぐ程、保有しています」
「流石は全てを見通す眼[鑑定眼]に加え、世界の情報に接続する[世界の叡智]は素晴らしいな。それで、だ。マリア。 我々の正体は何だ?」
「……いえ、わかりません」
「[世界の叡智]を持ってしても、か?」
「[世界の叡智]は、元の世界なら問題無いですが……この地球では接続が不安定なんです。ですが、判明した事が一つ」
マリアは難しそうな表現で、夕佳里に報告する。しかし、これはあくまで[世界の叡智]による情報収集でも断片的で数少ないピースを組み合わせた結果、彼女が考えついたこと。
「それは」
「……我々は、精霊に近い存在です。ですが、夕佳里様は―――――」
「私は?」
思わず、恐れ多いと畏怖してマリアだったがそれは当然の反応である。何せ、彼女はエルフであり、彼女の―――――というより、エルフという種族が崇拝すべき存在が、今の高頭夕佳里なのだ。
「我等が、エルフの始祖である大精霊ニンフ様の同系列の御方―――――この地球の【大精霊】の可能性が極めて高い、です」
大精霊。
それ即ち、精霊の中でも最も強大な力を有する超自然的な存在。
地球では、大精霊は四種のみ存在している。【火】・【水】・【土】・【風】の大精霊が存在しているが、それはどれも地球が誕生と同時に生まれているのだ。
しかし、高頭夕佳里は最近生まれた存在である。
故に、四大精霊である筈が無い。
だが、高頭夕佳里は間違いなく【大精霊】である。
これが何を意味するのか。
「…………大精霊、ねぇ?」
夕佳里は興味無く、しかしある可能性を察していた。だが、例えそうだとしても彼女の復讐は変わることはない。
《ボス、制圧完了した》
《王よ、こちらも暗殺完了しました》
《主様、我等に命令を》
「あぁ、わかった。次の指示を行う」
着々と新たな勢力として、この世の裏の世界に根を張り巡らせる。そして、その根は他の勢力にも手が伸びようとしているのであった。




