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静寂の白雪

投稿遅れました……ごめんなさい。



 七天魔皇と七天魔皇の衝突。


 超人的な存在がぶつかり合えばどうなるか。


 両者の一撃は瓦礫をも吹き飛ばす。


 そして拮抗している中、ヘムンドゥは限界を突破させて力を振り絞るミュランに対してつまらなそうな表情であった。



 「これで全力かァ、ミュラン」


 「っ!?」


 

 七天魔皇同士の激突だが、明らかにミュランが押し負けていた。何とか堪えているが、それも何分持つか程度。だが、ミュランも全身全霊でヘムンドゥを殺そうと目が血走っていた。それほど、ミュランの逆鱗に触れたのだ。



 「おいおィ……このままじゃァ、死ぬぜ?」


 「ヘムンドゥッ!!!キサマだけはッ、キサマだけは、何としてでも、この手でッ!!!」


 「グハハゥゥッ!いい感じに頭ぶっ飛んでんなァ!!!」


 「らァア!!!」


 「っ!?」



 一瞬だけ、身体から血が吹き出す程の、己の身体を崩壊させそうな力でヘムンドゥを吹き飛ばす。流石にヘムンドゥも手負いのミュランがここまでの力を出すとは予想できなかったのだろう。しかし、吹き飛ばされても何とか瓦礫にぶつかる前に体勢を立て直したヘムンドゥは怪しい笑みを浮かべていた。



 「まだ力残ってんじゃねーよォ」


 「!」



 しかし、ヘムンドゥに傷一つない。


 絶望的だ。


 どうすれば、ヘムンドゥを倒せる。


 ミュランは既にガタがきた身体にムチを打ちながら武器を構える。


 せめて。


 せめて、娘だけでも。


 けれども現実はそれほど甘くないのはミュラン自身痛感していた筈だ。その甘い考えで、己の愛する夫を殺すことになったのだから。


 が、今回は付いていた、というべきだろうか。


 もし、この場にシリルと葵が居なければ。


 もし、娘であるエマがミュウと出会っていなければ。


 もし、レティアが過去の呪縛に解き放たれていなければ。


 人生とは、己だけではなく他者との運命によって左右される。


 しかし、こうも言えたのだ。


 ヘムンドゥがこの場に現れたからこそ、()がこの場に現れたのだ、と。



 「……冷気ィ?」


  

 突如、辺りに冷気が満ちる。


 それは、まるで死神の様に。


 刻々と、敵の命を蝕もうとせん呪いの様なもの。



 「思った以上に深刻ですね」



 ピリッ、と背筋が凍るのと電気が流れた感覚を直で感じたヘムンドゥはスッと真剣な表情に変わって背後にいるであろう、敵へ目を向けた。



 「……おイおイ、何だよ。今日はパーティーかなんかあるのかよォ」



 ニタニタとヘムンドゥが振り返ると、そこには冷気を纏う白い着物を着た純白の髪の麗人がそこにいたのだ。


 

 「よくもまあ、あんな宣言(・・・・・)しましたね」


 「テメェのその容姿、知ってるゼェ。あの『覇王』と張り合いやがった……『ユキ』だなァ?」


 「……二人共、今は治療を優先しなさい」


 「無視かよ、つれねぇなァ」



 左手を覆い隠す袖で口元を隠すシキ(ユキ)は直に彼の元へ向かおうとする葵とシリルを静止させ、その場にいるエマの治療を優先させる様に言う。


 ヘムンドゥは完全に無視だ。


 しかし、無視はしつつヘムンドゥを警戒している。



 「レティアさん、そこの人を」


 「……え、えぇ。わかりました」



 レティアもユキがシキだと気付いたのか、片膝を付き血を流すミュランに肩を貸して治療を行う葵達の元へ避難した。


 そして辺りの景色を見渡したシキ……ユキは、改めてヘムンドゥを見て溜息を着いてしまう。



 「『勇者』を狙う……つまり、あなたは『魔王』なのでしょうか」


 「『魔王』?グハハウッ!あんな雑魚なんぞと同じにすんじゃネェよ。オレ様は、新たな『七天魔皇』サ!そしてユキ、テメェは……『勇者』、か?」


 「『勇者』?バカな事を……『魔王』か『七天魔皇』かは知りませんが、迷惑この上ないですね」


 「言ってくれるじゃねぇか、『勇者』サマよぉ?それに、何か勘違いしてねぇか?」


 「勘違い?」



 ユキはつまらなさそうにヘムンドゥを見ていた。


 しかし、ただ聞いていた訳ではない。


 一目で、ヘムンドゥは下手に攻撃が出来ない存在だと理解していたのだ。何より、目の前にいるのは成ったばかりとは言え『超越者』。しかし、それだけではない(・・・・・・・・)


 

「そもそも、順序がちげぇ(・・・・・・)。『魔王』がいるから『勇者』は現れる?いいや、『勇者』がいるから、『魔王』は現れるのサッ!」



 ヘムンドゥはそう言い切った。


 しかし、それは真実である(・・・・・)


 殆どの者が知らぬ真実。


 神でも、上位の神でしか知らないこと。


 更にヘムンドゥは真実を話す。



 「異界から呼び出された『勇者』という強者に対抗する為、世界は新たな強者を目覚めさせる……そして、オレ様もその一人なのサ。だが、そのオレ様を目覚めさせた『勇者』は誰なのかはわからなかったが、今わかったぜェ……テメェだ、ユキ!」


 「なに?」



 異界から呼び出された強力な『勇者』に対抗する存在。


 それこそが『魔王』であり、『七天魔皇』である。


 しかし、更に強大な存在には、その強大な存在に対抗する……つまり、対になる様な存在を、独自に惑星(・・)は生み出した。それこそが、ヘムンドゥ。その力を生み出した要因は、ユキ(シキ)だったのだ。



 「それに……匂うぜ(・・・)。オレ様と同じ……敗北、挫折、絶望、劣等感を経験した、な」


 「……」


 「わかるぜェ……テメェも(・・・・)、大切なものを失ったァってことをよォ」



 ユキは沈黙する。


 しかし、その表情は怒りだ。


 ヘムンドゥは、ユキにとって一番触れられたくない(・・・・・・・・・・)過去(・・)


 それをヘムンドゥは踏込もうとしていた。


 同族嫌悪、というのはまさしくこういうことなのだろう。


 ユキは明らかにヘムンドゥに対して嫌悪感を抱いていた。


 

 「……それで、もう話すことはありませんね?」


 「あン?」



 既に、決めていた。


 この白狼の女を、殺すことに。


 [空間庫]から出したのは、神槍。


 細長い円錐の透明感のある白色の大槍だ。


 名は、“白蓮華”。


 かつて、シキがこの世界に召喚され初めて倒した“太古の魔王”であるガルディアスの強靭な牙から生み出された槍。スミリアの父親が作り出し、シキの一滴の血によって変格した武器である。


 それを右手で構えると、槍の尖端をヘムンドゥに向けた。



 「おい、それ(・・)は……ッ!!!」


 「黙りなさい」



 ズンッ!と一瞬にして、ヘムンドゥの懐に潜り込んだユキは“白蓮華”を突き出した。『セツラ』と『カルサ』も反応ができぬ程の速さで、そして、ヘムンドゥの背中に白き槍が生えたのだ。



 「ぐがァッ!?!?」



 心臓を、一突き。


 確実に突き破った。


 人の急所であり、弱点である心臓を潰したのだ。



 「がはっ……オレ様と、同じ……超越者、な、筈……なのに、これ程の、差か……ッ」


 「終わりです」



 たった、一瞬で勝負は決した。


 無情に、そして冷酷に。


 その目は、ユキがしていいような目ではなかった。



 「や、べェ、ナ……今まで、喰らった一撃、よりも、テメェのは……重みが、ちげぇ……まる、で……一つ、の、惑星(ほし)、を、背負った、からだが、塵に、なりそうな………」


 「(全身全霊の一撃を、身体を崩壊させず受け止めたのか)」


 「すげ、ぇ……もし(・・)……()()だ……テメェが……あの時(・・・)、いて、くれ、た……ら……」



 血反吐を吐きながら、後悔に蝕まれた表情で己の心臓を穿いたユキの顔を見下ろしていた。しかし、ユキはヘムンドゥに対して何の感情を向けず、ただ右手の白蓮華を更に突き上げたのだ。それと同時にヘムンドゥの表情は歪む。



 「本来なら(・・・・)、こんな風に殺す気はありませんでした。ですが……あなたは、もう人間ではない(・・・・・・・・)。身体も、魂をもヤツ(・・)に売ったのなら……容赦はしません」


 「………………くっ、くかかかかか。さすが、だ。うまく、隠していたつもり、だったんだが……ナァ?」



 突如、ヘムンドゥの身体に禍々しいドロドロとした嫌悪感を抱かずにはいられないオーラが身体中から吹き出していく。


 その瞬間、超越者だったヘムンドゥは新たな惑星のバケモノへと変貌するのはそう時間もかかることはなかった。




ガルディアス……この魔王、読者の皆様は覚えていますか?


この小説の最初の頃に登場しているんですよ……(。・_・。)

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― 新着の感想 ―
[一言] ガルディアス、勿論覚えていますよ。 カッコイイですよね!
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