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最悪の開幕

矛盾とか……矛盾とか、矛盾とかあったらごめんなさいなり。



 七天魔皇。


 その座に着く者は文字通り、7つ。


 その座に着く資格はただ一つ。


 『勇者』を殺すこと。


 しかし、何事にも理由はある。


 七天魔皇の存在理由。


 それは。


 異世界(地球)から召喚される超人的な『勇者』を排除する為に生み出された世界の守護(・・・・・)である。


 『勇者』とは、女神が選ぶもの。


 そして、『魔王』は世界が選ぶ(・・・・・)もの。


 しかし、人外地味た異世界の『勇者』が現れた事により世界もそれに対抗する手段を生み出した。


 それが、『七天魔皇』。


 世界にとって、勇者は悪玉菌。


 容赦無く襲い掛かってくる。


 何者でもない、世界の意志によって。


 世界は神ではない(・・・・・・・・)


 世界は、この惑星(ほし)の為に。


 神はあくまで管理者であり、世界をコントロールすることは敵わない。


 神と世界。


 互いに共生しているからこそ、今がある。


 だが、神々にとって七天魔魔皇は脅威だ。


 下手すれば己が祀る国を滅ぼしてしまう可能性もある。

 

 しかし、神々にとっても世界にとっても七天魔皇の中に唯一イレギュラーな存在がいた。


 世界の意志に縛られず、自由奔放に動く存在。


 それこそが、七天魔皇の中で最強と謳われる『覇王』金剛その人だ。


 彼は元々この世界の存在ではない。


 だからこそ(・・・・・)、この世界の意志に縛られないのだ。


 本来ならこの世界の存在ではない金剛が七天魔皇に成れる筈がなかった。しかし、実際には最強の座に君臨する唯一の存在と成っている。


 世界にとって、異世界から召喚された勇者の掟破りな力でも全てを蹴散らす金剛は切り札と言えるだろう。世界の意志に従いはしないものの、世界にとっては頼もしい存在だ。


 しかし、七天魔皇に新たな超越者が現れた。


 それこそが、ヘムンドゥ。

 

 ヘムンドゥは世界の意思が想像するよりも強大な力を有することとなった。そしてヘムンドゥは徹底的に『勇者』という存在を消そうとしているのだ。それこそ、世界が求めていたもの。


 だが、今のヘムンドゥは世界にとって都合のいい存在だ。


 七天魔皇、覇王とヘムンドゥ。


 何れ激突するだろう。


 けれども世界は介入しない。


 例えどちらが勝利しようとも。


 残ったものこそ、最強の切り札なのだから。


 

~~~~~



 「断る」


 

 新たな七天魔皇であるヘムンドゥからの誘いを蹴った『七天魔皇』ミュラン。彼女は目の前にいるヘムンドゥに明確な敵対視していた。


 無理もないだろう。


 ミュランとエマ。そして他の騎士達にとっての帰るべき場所を破壊したのだから。何十、何百、何千年もあの場所で過ごしてきたのだ。大切な我が家を壊された事に憤っているのもある。


 だがしかし。


 それだけではない。


 そもそも今回の一件で、ヘムンドゥを野に放つのは不味いと判断したからだ。


 確かに『勇者』を殺すことに異議はない。


 寧ろ称賛すべきだろう。


 現に、勇者によって苦しめられた者達はいる。それが過去であろうとも、勇者によって苦しめられたという事を脈々と今の世の中に受け継がれているからだ。


 人類の汚点とも呼ぶべき存在を消すことは、この世にとってもいいかもしれない。


 だが、無差別にサウザラート国の人々を殺戮の限り破壊したことはあまりにも目につくものがある。


 あまりにも悪手だ。


 この国の王が勇者によって支配されたとしても、それを何とか排除しようとする組織はあったのだ。ならば、その者達と協力して勇者を始末してもよかった筈だろう。


 今のヘムンドゥは、復讐に塗れている。


 大体予想が着く。


 過去の、『悲劇の英雄』と同族である白狼族ならば。


 勇者“だけ”に復讐するのではない。


 人類全てに、復讐するつもりだ。


 だからこそ、国を、無関係な人を破壊することに躊躇は無かったのだろう。



 「……そうかァ」



 ヘムンドゥはそれだけを呟く。


 しかし、ミュランは知らなかった。


 ヘムンドゥは、何年も、何十も前から反旗を翻す為に様々な手を使っていたことに。


 そして、その中にはミュランにとって絶対に許されないこともあったのだ。



 「ぁァ……殺す前に、あんたに謝らなきゃァイケねぇことがある」


 「殺す?私を、ですか」


 「そうさァ。ホントウに悪い事したと思ってるんだぜェ?」



 妙な、胸騒ぎがした。


 ヘムンドゥの言葉に静かに聞くミュラン。



 「何千年前かは忘れたがァ、エルディンテ王国のエリルレの森最深部にある神殿……って言えばわかるだろ(・・・・・)?」


 「なっ!?」


 「あんただろ?あそこに()を作ったのは」


 「……」


 「魔王、ガルディアス(・・・・・・)。殺されたあんたの旦那サマだよなァ」


 「貴様……っ!」


 「何千年前かにその墓を掘り起こして色々弄っちまってよォ?無理矢理あんたの旦那の魂を亡骸に押し込んだらありャ不思議ィ。ブクブクと身体が膨張して獣になっちまったんだァ。あの後、誰かに封印されたらしいが……?」


 「ヘムンドゥッ!!!」



 ミュランは怒りに任せて守護していた二人を一瞬で超え、亡き夫の武器で斬りつける。しかし、それを“波動の撥”によって防がれてしまう。ヘムンドゥはニヤニヤしながら悪びれも無く更に言葉を続けていく。



 「ホント、驚いたぜェ。ガルディアスにお前の女は勇者に殺されたって言えば怒りに任せて暴走しちまってなァ。あの時のオレ様じゃぁ、手が着けられなくて放置したんだァ」


 「キサマァァァア―――――――――!!!」


 「オイオイ、悪かったって言ってるじゃねーよォっ!」



 激昂するミュランは己の力でヘムンドゥを殺そうとしていた。


 愛した人の遺体を弄り、そして嘘で絶望させた事に怒り狂う。そんな姿を見せたミュランを見たことが無いだろう。ヘムンドゥがしたのはミュランの逆鱗に触れたこと。


 許すはずがない。


 少しでもかつての部下だと思った自分に恥じていた。


 今すぐここで、ヘムンドゥを消す。


 しかし、相手は同じ七天魔皇。


 そうそう簡単に倒せる訳ではない。


 ヘムンドゥとミュランの衝突による衝撃波は周りを吹き飛ばすには十分だった。



 「母上!!!」



 エマが叫ぶが、ミュランは怒りで我を忘れて耳に入っていない。誰しもがこの状況は非常に不味いと理解できた。しかし、愛した人の亡骸を好き勝手弄られたのだから、ミュランが怒り狂うのも致し方がない。


 だが、その結果。


 ミュランの命は危ういものとなっていく。



 「いいのかよォ、そんな負傷の身体で、そんな馬鹿力を出してよォ」


 「ヘムンドゥッ!!!キサマは、キサマだけは、私が、この手で殺すッ!!!」


 「グハハゥッ!ヤッてみろよ、死にぞこないッ!!!」



 事態は更に最悪な状況へ動いていく。


 そしてサウザラート国は更に地獄と化すのであった。




 


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