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サウザラート国



それは、誰しも予想がつかない事件であった。


サウザラート国国王が、勇者ジークによって殺害される。しかもジークは王族派を敵視していた貴族派を纏め上げて、新の王として君臨したのだ。王を殺害し、世継ぎである王子達も同様殺害されてしまう。そして残った王妃と姫達は軟禁され、ジークの息のかかった護衛に監視されていたのだ。無論、王族派だけでなく王族派寄りの貴族派も猛反発していたのだが、その翌日に王族派の指導者が何者かによって暗殺されたのだ。そして次々にジークに敵対する有力者は殺されていく。


ジークが王になったことで、国民達は混乱するのは仕方がないことであった。



「王が変わっただけで、これ程治安が悪くなるのか」


「仕方がないよシリル。御主人様の言う通り、転生者の可能性が出てきたね。政治も何もかも欠陥だらけで、悪行を重ねる貴族達が好き勝手してるから……それに今の王ジークは女性を何十人も集めてハーレムを築いているって噂だけど、多分事実だよ」


「葵、その情報は何処から?」


「リラさんから教えてもらった反王国勢力側貴族からだよ。確かにアル様の元許嫁の親だった……筈?」



現在、サウザラート国に葵とシリルが潜入していた。二人とも旅人のローブをしているのでそれほど目立ってはいない。フードで隠れているが、二人の主であるシキの分身である『ちびシキ1号』と『ちびシキ2号』が隠れて待機している。名の通り、まるでシキを2頭身キャラにして手乗りサイズにちっちゃくした分身だ。基本チビサーバント狐モードか狐の獣人モードにしかなれないらしい。


そんなちびシキ1号を、葵は路地に隠れつつそこらで購入したクッキーを与えて和んでいた。ちびシキ1号はクッキーをサクサクさク♪とまるでハムスターの様に頬を膨らませて食べている。もう、何の緊張感もない。因みにちびシキ1号・2号はシキとの連絡役だ。



「今、元王の弟が反王国勢力の指導者になっているけど……正直、おれたちが何か手を下す必要もないかも」


「いや、違いよシリル。ジークの力は本物なのは確か。それなりの実力者であった前国王を殺せる程にね」


「わかってるよ、葵」



シリルと葵は静かに動く。


そして行き着いた先は、街並みの路地に存在する隠れ家である。その隠れ家はアルトレアがアルトの時、許嫁であったレーラの父親が用意した場所。元々このサウザラート国に訪れた時、最初に訪問したのがサウザラート国現騎士団長レオルド・バッコーニーの屋敷であった。無論、前騎士団長リラからの伝で訪問したのだ。レオルドは元々ジークの事を良く思っていないらしく、どうにかして排除しようとしていたらしい。


だが、その前にジークは他の貴族達と手を組んでこの状況になってしまった。今では上手く身動きが取れないらしく、タイミングを見計らって反王国勢力と協力してジークを討とうと算段を立てている。


そんな時に外部から葵とシリルという強力な協力者が現れたのは幸運だっただろう。娘のレーラもアルトレア───アルトが無事だと知ると歓喜余って号泣していた。それほど気にしていたのだろう。



「いよいよ明日だね」


「おれたちは、国王側の貴族の足止めだ」



いよいよ明日、作戦は決行される。


だが、この時、誰も知らなかった。


既に第三者が、このサウザラート国に狙いを定めていた事に────。




~~~~~




「ガハゥウっ!ここかぁ、王になった『勇者』がいる国、サウザラート国ってのはっ!!!」



白狼の女獣人は、森の中で最も背が高い木の頂点から見えるサウザラート国を見ながら毛を逆立っていた。そしてその白狼の女獣人───ヘムンドゥの元に二人の女性が次に背の低い木の頂点にいる。


一人は人族、もう一人は犬の獣人だ。


長き悠久の時を生きる、哀れな女。


生きているにも関わらず、老いもせずにまるで魂が抜けた存在だ。そして二人の目は精力もなく、ただただ、何かを探そうとする素振りを見せていた。


けれども、彼女二人の探し物は───探し人は見つかる事はない。もう、この世に居ないのだから。



「ディー……」


「ごしゅじん、さま……」


「何言ってんだよ糞女が!テメェ等が、その手で、殺したんだろうが!!!オレの、兄様をなッ!!!!」


「「っ」」



二人は何も言えない。


事実なのだから。


本来ならヘムンドゥに殺されてもおかしくない筈なのだが、ヘムンドゥ自身、彼女等を利用するだけ利用した後に死よりも恐ろしい事をさせてから殺そうと考えていた。彼女二人も、利用されて、最後に殺されるのを了承していたのだ。



「ごめん、なさい。ヘムンドゥ様」


「もうしわけ、ございません……」



彼女二人は情緒不安定だ。


それは仕方がないこと。


元々二人は、裁かれる事を望んでいたのだ。


しかし、裁くのは二人がその手で殺した、最愛の人。


そして、目の前に君臨し、自分達が従う最愛の人の唯一の肉親であるヘムンドゥのみ。



「「ヘムンドゥ様、御命令を」」


「チッ」



ヘムンドゥは背中から≪"波動(はどう)(バチ)"≫の《全》と《無》の二つを両手に持つと悪魔のような笑みを浮かべて言い放つ。



「手始めに、サウザラート国。潰すぜ?」




次回は2020年1月1日に投稿します。

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