【色彩の瞳】
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一時的な記憶喪失?なシキを連れて帰宅したリゼットと、+αに『迷宮の核』は家族全員を集めて緊急家族会議を行っていた。
「……何でしょう、この視線は」
心身共にショタロリとなってしまったシキ───姫希は周りからの視線に窮屈に感じていた。この頃の姫希は知らないがその視線は未来の妻と娘達である。妻であるアルトレアとスミリアは視線は暖かいが、娘であるアイリスの視線は一直線だ。
腕を組んで姫希を強引に横へ座らせたリゼットは苛立ちを募りつつ目の前で正座している『迷宮の核』へ静かに鋭い瞳で捉えていた。
「……お前は何だ?」
───オリンポスの十二神によって生み出された、『迷宮の核』さ。
「オリンポス?……あぁ、なるほど。なら───」
───何を……?
すると、この家族会議に新たな存在が二つ乱入してきたのだ。
「……リゼ、ほんとう?」
「これはどういうことなのだ……?」
女神ヘスティアとラヴィである。
この二人を呼んだのは何を隠そうリゼットだ。呼んだ方法は思念。ヘスティアは引き込もっていたのだが、『迷宮の核』の事で聞き出した末に慌てて出てきたらしい。ラヴィに関しては盗聴していたらしく、それに続いてやってきたのだ。
まず、女神ヘスティアに対して反応したのは『迷宮の核』だ。
───ま、さ、かっ!?ヘスティア、様!!!
「ヘスティアっ、て……あの、『絶対不敗』の……!?」
吊られて姫希も女神ヘスティアに膝ま着く『迷宮の核』と同じく膝を着いて頭を垂れていた。しかし、その反応を目の当たりにしたラヴィは更に混乱させてしまう。
「まっ、まて!!!余の弟が精神的にも若返っておるではないか!?」
「『迷宮の核』、どういうこと……?」
───はっ!実は……。
『迷宮の核』は嘘偽りのない真実をありのまま述べていく。
どうやらシキは皆に内緒で、昔封印した『迷宮の核』と再戦したらしい。どちらも全身全霊掛けて激突したらしいが、最後に互いに放った[時空魔法]によって、その反動をシキは受けてしまった様だ。その為に心身共に少し幼くなった過去の姫希となったということ。
そして勝負はシキの勝利だったらしく、大人しく約束していたシキの支配下となったらしい。しかし、過去の姫希となったシキは迷子の子供の様に慌ただしかったので、幾ら過去の者とは言え主である姫希を保護していたのだ。そして姫希を知る者達へ送り届ける為に[箱庭]で途方もなく迷っていた所をリゼットに見つかったと言うわけだ。
「……なるほど、なァ?」
「ヒッ!?」
かなり恐ろしい目で姫希を睨むリゼット。今の姫希にとっては何一つ覚えもない事だ。しかし、リゼットからすれば安静にしなければならない時にバカをやるシキにイラつきを募らせるのは仕方がないこと。本当は凄く心配だったのだ。
「あ、あの……わたし、関係ないんじゃ……?」
「あ゛?」
「っ、何でもそんなに睨むんですかっ!?わたし、なにもしてないですよね!?」
「ちっ」
「ぅぅぅっ、リエルさまぁ……」
理不尽に睨まれてしまった姫希は思わず涙目で再び"リエル"の名を口にしてしまう。リゼットからすればそのリエルという存在に気になっていたのだが、その前にアイリスが言ったのだ。
「リエルって、誰?」
「我等の主の名前ですよ……って、あなたは誰です!?」
「……主って、誰?」
「ぃゃ、ぁの……ご主人様ってことですかね?」
「女?男?強いの?」
「あ、アイリスぅ~、やめるのなのぉ~」
質問攻めをしてしまうアイリスは何処か子供ながら威圧感あるものであった。しかもアイリスの方が心身共に少し年上なのだが、やはり"リエル"という過去の姫希の主が気になるらしい。ズイズイ顔を近づけるアイリスをマシロが制止させる。
余りにしつこく聞かれ、更にはこの場にいる姫希以外も知りたがっていた様子。そしてラヴィが姫希に訪ねるのだ。
「弟よ、"リエル"とは……何者なのだ?」
「姉様まで……」
どうやらこの時の姫希はラヴィの事を知っている。家族同然であり、当然と言えば当然だ。義理ではあるが、姉であるラヴィにも聞かれた為、仕方がなく話していく。
「我等が主"リエル・テケタクア"様は"全能"と呼ばれし超越者なのです。あのお方に勝てる人はそうそういないでしょう」
「へぇ?そんなにつぇーのかよ、そのリエルって奴」
「……少なくとも、この場にいるヘスティア様を除いて勝てる見込みは皆無です」
「「「……」」」
その衝撃的な姫希の発言にその場は静まり返る。
この場にいるヘスティア以外勝てる事はない。
そのリエルという存在は姫希の発言の重さから感じ取れるだろう。しかし、ヘスティア以外を除いてとはいえ、この場にはラヴィや『迷宮の核』もいるのだ。しかも今の『迷宮の核』よりも実力のあるリゼットまでもが、勝てないと断言された。
しかもこの発言は、姫希自身も含まれている。
「ほぅ、この余が勝てぬと?」
「はい、姉様でもリエル様には勝てません」
「……その根拠は?」
「……別にお教えしてもいいでしょう。我等が主は【色彩の瞳】を保有しているのです」
「【色彩の瞳】……それは神話の」
「いいえ、姉様。リエル様は【色彩の瞳】を持っています。ですが、その眼だけではありませんけどね。リエル様の実力は」
【色彩の瞳】。
この世で最強の眼であり、その【色彩の瞳】を保有する者は過去・神話・伝説に存在していたが、それを完璧に操る者は一人もいない。しかし、神話で唯一とある神がその【色彩の瞳】を完璧に使いこなせていたらしい。
【色彩の瞳】の能力は、瞳が様々な色に変化し、その色に連想される能力を発揮できるのだ。例えば、瞳が赤ならば『炎』・『血』・『怒り』等の自然や物質、精神までも己の力にしてしまうのだ。しかも、左右の瞳の色を変えられるだけでなく、色を一度に複数行使出来ること。色の組み合わせによっては格上相手を粉砕してしまう能力も行使できてしまう最強で万能の瞳なのだ。
「【色彩の瞳】は如何なる異能を無効化されてしまいます。前にリエル様の【色彩の瞳】を封印して殺害しようとする者もいましたが……その封印という行為自体を無効化してしまうのです。【色彩の瞳】の対処は無意味に等しいのですよ」
「そこまでとはな、【色彩の瞳】とは……」
「かつて、わたしや彦乃が二人で戦って敗北しましたからね……で、そろそろ教えてくれませんか?姉様やヘスティア様は兎も角、この場にいる女性の方々は……何者です?」
いい加減に教えろ、と言いたげな姫希にリゼットはここが未来であること。そしてこの場にいるリゼットとアルトレア・スミリアが未来の姫希の妻だということ。そしてこの場にいるアイリスとマシロは娘であり、二階にも産まれたばかりの息子が眠っていること。そしてアルトレアのお腹には姫希との子を宿していること。
その他諸々を話していくと、姫希が顔を真っ青になったり真っ赤になったり、そして蒼白になったり……。
話が終えると、姫希は顔を俯かせてしまう。
そして握られた拳をこれでもか、と握り締めてその拳から血が流れていた。そして烈火の如く怒りを露にさせた姫希は自問自答をするのだ。
「……なにを……なにを、しているんですが、未来のわたしッ!なぜ、なぜ、リエル様に仕える身でありながら地球へ!?一生仕えると、誓ったじゃありませんか……それなのに、なぜ……」
「それなのだがな、弟よ」
「なん、ですか」
「余はリエルの名は知っている。そして、何故未来のお前がリエルへ仕えることなく地球へやってきたのかも……その理由は知っているぞ」
「……教えて、くれませんか?」
藁にもすがる様に姫希はラヴィに問う。
ラヴィは少し言いにくそうにしていたが、姫希に告げるのだ。
「詳しくは知らぬ。だが、かつてお前が仕えていたリエルという者は───死んだ」
「───ぇ?」




