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迷宮の核《ダンジョン・コア》



[箱庭]の原点とも呼べる、最初の空間。


そこは、まさしく無と呼ぶべき空間なのだろうか。


何もない、真っ黒な空間の中、シキは一人で前へ歩き続けていた。


シキは真っ直ぐに前を向いて、真剣な表情で静かに歩む。


彼の姿は、戦う為の正装。


恐らく、人生初の最強装備だ。


その装備は、白い着物を纏っただけ。


しかし、それだではない。


その白い着物から、更に重ね着するように紅と白の一際大きな着物を纏っていた。裾は長く、大奥にありそうな長いもの。しかしその長い裾は床に引き摺る事はなく、髪の毛が靡く様にゆらゆらと広がり、紅の炎と共に独特の優雅なシルエットを現しながら歩いていた。袖からは白き天女の衣が揺らめいている。


≪神装・アマテラス≫


今シキが纏う神の名を冠する着物の名だ。


この≪神装・アマテラス≫は最高神・天照大御神に近き姿である。


本来、≪神装・アマテラス≫は誰でも扱える代物ではない。その≪神装・アマテラス≫、つまり最高神・アマテラスの直系か、古き眷属の末裔しか発現できないのだ。その中で、シキの祖先には最高神・天照大御神の眷属───"玉藻の前"が親密に関係しているからこそ、≪神装・アマテラス≫が発現出来たのである。



「……(そろそろ、か)」



シキの近くには、業火の炎に揺らめいて紅く輝く球体が周りを浮遊している。球体だが、まるで液体の様に柔らかそうにふにゃふにゃとしているのだが、これはシキのある意味(・・・・)武器の一つなのだ。


名を、『日緋色金(ヒヒイロカネ)』。


鉱物の中でも最も希少であり、神でも扱う事が難しい物質なのだ。『日緋色金(ヒヒイロカネ)』と言えば、最も硬い鉱物だと勘違いされやすい。実際は不純物(・・・)を配合させなければスライムの様に柔らかいのだ。しかし、『日緋色金(ヒヒイロカネ)』は直接魔力を流すと極限までに硬くなる。その強度はオリハルコンを易々と切断・貫通出来るのだ。しかも不純物が無い『日緋色金(ヒヒイロカネ)』を日々魔力を流し続けると、年輪の様に更に強度を増していき、最終的には今のシキの様に所有者の魔力に反応して自由自在に変型できるのだ。シキの左腕に宿る『変型武器(トランス・ウエポン)』よりも規模は上である。


シキは『日緋色金(ヒヒイロカネ)』を近くに漂わせ、立ち止まると瞑想するかの様にそのままの態勢で目を閉じた。



「……そこにいるな?」


───……おや?誰かと思えば……お前か。随分と久しいな。


「あぁ、久しぶりだ『迷宮の核(ダンジョン・コア)』」



目の前に現れたのは、かつて『迷宮ダンジョン』、《オリンポス》の最深部に君臨した管理者。透明な大真珠な『迷宮の核(ダンジョン・コア)』。


何故、あの《オリンポス》の『迷宮の核(ダンジョン・コア)』がシキの[箱庭]にあるのかと疑問に思うだろう。


確かに、あの時『迷宮の核(ダンジョン・コア)』は倒した。


だが、倒した(・・・)だけ。


止めは刺すことが出来なかったのだ。


両者共に負傷しており、唯一シキが出来た事はその瀕死状態でありながらも殺しにかかる『迷宮の核(ダンジョン・コア)』を無理矢理[箱庭]にぶち込んで封印する事であった。そして二度と出てこれぬ様に何重にも欠かさず毎日封印を重ねがけをしたのだ。


だが、封印して終わりではシキは考えていない。


いつか、再びこの手で終止符を打とうと日々修行をしてきたのだ。


だが───。



───漸く、殺しに来たのか?


「最初はそのつもりだったさ。だが、気が変わったんだ」


───ほぅ?


「『迷宮の核(ダンジョン・コア)』、お前を俺の支配下に置く」


───なんと、な?



シキの発言に不思議そうに反応する 『迷宮の核(ダンジョン・コア)』。無理もないだろう。数年前に殺し合った相手に部下に成れと発現されたのだ。本当にこいつ、頭イカれているのかと思ってしまうだろう。



───面白い事を言う。して、なぜだ?


「簡潔に言うなら、戦力が欲しい。それだけだ」



シキはこれまで起こった出来事を『迷宮の核(ダンジョン・コア)』に話す。異世界でとある女神、リーリスに狙われており更には他の敵の存在にも危険視していることを。



───で、このわたしを欲すると。


「『迷宮の核(ダンジョン・コア)』。お前の力ならば、申し分ないと判断した」


───かつて、殺し合ったのに?


「それは立場上仕方がないさ。だが、お前はどうなんだ『迷宮の核(ダンジョン・コア)』。あくまで俺の……スカウトだが、お前自身に判断を委ねる」


───拒否すれば?


「安心しろ。女神ヘスティアに頼んで、ゼウス……ではないな、アテナ様にお前を送り届けよう」


───……。



暫し、『迷宮の核(ダンジョン・コア)』は考えた。


女神アテナの元に送られるのは問題ない。だが、己は『迷宮の核(ダンジョン・コア)』。存在意義として、役割は決められている。だからこそ、ツマラナイと感じていた。


今、『迷宮の核(ダンジョン・コア)』が大人しくこのシキの[函館]の原点に待っていたのは、シキとの再戦を望んでいたからだ。あの時、勝ち逃げ去れたシキと今度こそ決着を着けたいと『迷宮の核(ダンジョン・コア)』は願っていた。


だからこそ───。



───決めたよ。


「で、どうだ?」


───お前は、この私を支配下に置きたいのだろ?ならば、力を示せ!そして私を下してみろ!!!


「───あぁ、そうしよう。俺のものになれ、『迷宮の核(ダンジョン・コア)』!!!」



『迷宮の核(ダンジョン・コア)』は戦闘態勢なり、人形と変化していく。それに反応してシキは『日緋色金(ヒヒイロカネ)』を細く柄の無い長い刃だけの刀身のみが糸の様にシキの周りを守るように取り囲まれる。そして、その糸の刃───糸刃に紅と白の勾玉が隙間無く繋がれていく。



───さぁ、はじめようじゃないか!!!


「あぁ、あの時の決着を!!!」




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