機械精霊兵・TYPE:Δ
<『機械精霊兵・TYPE:Δ』、只今、参☆上!!!>
何処かの戦隊モノの登場シーンの如く、決めポーズをする『機械精霊兵・TYPE:Δ』。声的に中々いい年齢の男性が中二病を発症させている様だ。
流石にこの様なアクションをしてしまうと、誰しもがポカーンとしてしまうのは必然であった。
<この私が来たからにはもう安心!!!正義のヒーローとは、私のこと───>
「話の途中だが、『機械精霊兵・TYPE:Δ』……面倒だから『デルタ』で良かろう。貴様には直ぐにやってもらいたいことが……」
<むむむむっ!君が私の操縦士、ラヴィちゃんだな?>
「うむ、そうである」
<よぉしっ!わかったっ、ならばどうすればいいんだラヴィちゃん?>
既にロボットにしてはスムーズに人同然の動きをする『機械精霊兵・TYPE:Δ』───『デルタ』に人々は呆然としてしまう。人々にとってゴーレムというのはカクカクした動きなのが一般的というより認知されている。
デルタはこの遺跡から遠く離れた場所に、強大なる気配を感知する。そしてその気配が"神"という存在も理解した。
<ふむ、強大な気配を感じるが……まさか、敵か?>
「うむっ。そやつは──」
<理解したぞ、ラヴィちゃん!ならば早速向かわなければ───"テレポーテーション"っ!!!>
デルタは真上に右腕を突き出し、左腕を脇を閉めて納めながら変なイントネーションでその場から消え去った。
"瞬間空間移動"
既にロボットとしては性能を凌駕する。『機械精霊兵・TYPE:Δ』という存在はそういうものである。基本的に『機械精霊兵』シリーズは破格の能力を持っており、戦闘で一度でも使用すれば一変しめしまう程。
避難住民やら騎士達がデルタの"瞬間空間移動"という神如き芸当を目の当たりにしてしまい、騒然してしまう。
そして、ラヴィはと言うと……。
「余、操縦士なのに。何故に余を置いて……」
話もロクに聞かずに勝手に前線へ行ってしまったデルタを、ラヴィは蟀谷をピクピクさせながら怒りが沸き上がらせている。その様子を目の当たりにしていたシリルとリラは思わず苦笑いしか出来ない。
「ラヴィねーさま……」
「!……アイリス、安心せよ。あれは少し難だが、戦場に向かえば情勢が覆すのは確実だ」
そう確信を持って発言するラヴィ。アイリスは最初は不安がっていたものの、ラヴィのその言葉に安心する。
後からデルタという、憧れのゴーレムが自立して動き消えてしまった事に徐々に騒々しくなっていく。これには騎士達であっても避難住民達と同じく感染するように反応してしまうのは致し方がないことであった。
「(弟よ、準備はしたぞ?)」
~~~~~~
"神々を喰らいしもの"と神化したバハムートとシキ達がぶつかり合う影響は大きい。シキ達が被害を出すというより、バハムートの攻撃が一つ一つ広範囲なのだ。しかも範囲が広すぎて避ける事が出来ずに、受け止めて受け流す事しか許されない。激戦を繰り返すシキ達メンバーは武器や魔法、素手でぶつけて軌道を反らしている。
そんな激戦の渦のど真ん中。
そこに、突如として人型の存在が現れた。
<わーはっはっ!!!我こそは『機械精霊兵・TYPE:Δ』、ここに参上!!!さあさあ、私の敵となる存在は如何なる者かッ!>
現れたのは、人型のロボット。
『機械精霊兵・TYPE:Δ』───通称デルタ。
デルタの背中には六つのスラスターがあり、そこから白き光のブレードの様なものが翼の役割を持っているらしく、本体自身その場で浮遊している。
デルタが向く方向は一つ。
今にも光線を放とうとしそうなバハムート。
「やはり、『機械精霊兵』シリーズか……!」
シキが言う『機械精霊兵』シリーズ。
見た目は同じ様な物が存在するのだが、唯一異なるのは"自我を持つこと"である。
『機械精霊兵』シリーズはいくつか存在しており───。
『TYPE・Δ』は陸・海・空という三つの領域を移動可能であり、『機械精霊兵』シリーズ唯一巨大なロボットである。因みに余談ではあるが、相手が幼い女の子の頼みであれば大抵は聞いてしまう。何百年前に、紛失してしまったらしくその為に製作者であるマキナが 『機械精霊兵・TYPE:Δ・〔原型型〕』を開発している。勿論それも自我を持っているが総合的なスペックでは落ちてしまう。
『TYPE・Α』は[氣術]や[神術]を除く、あらゆる力を無効化する真珠の様な色を持つ"液体"。所有者によって力を無効化する限度が大きく変化する。『TYPE・Α』を己の五感に繋げる事も可能。
『TYPE・Ζ』は接近・遠距離・守備・罠・衛生・製造・補助を極めた乙女達7人の事を示す。勿論その7人の乙女達はロボットではあるものの、容姿は人間と変わらない。全ての乙女達は一騎当千の実力を有しており、そもそも製作者であるマキナ以外に従う者は今のところいないらしい。
『TYPE・Λ』は中でも一つの義眼と右腕の義手というものセットで一つであり、そこから波長を操る能力を有している。更にはその義眼で相手の能力のは波長を読み取って右腕の義手で再現する事が可能だ。
『TYPE・Ω』はまさしく"究極"と呼ぶべきものだとされているが、実の所シキはそれについては一切知り得ていない。分かる事は製作者であるマキナが保有していること、位である。噂だが、ルピナスが有するその『TYPE・Ω』が強力すぎるが故に神々からも恐れられていたりするのだ。
これが『機械精霊兵』シリーズ、計5種。だが、そこから〔原型型〕も合わせば10種程だ。シキは過去に紛失した『機械精霊兵・TYPE:Δ』と『TYPE・Ω』以外扱う事が出来なかった。
どれもが破格の能力を有してはいるが、殆ど使用者は見つかってはいない。
そもそも、『機械精霊兵』シリーズはとある神話の遺物の欠片から生み出されている。
シキはデルタの姿を目視しながら、かつて『機械精霊兵・TYPE:Δ』について語ってくれたマキナの事を思い出す。
『機械精霊兵・TYPE:Δ』───そいつを確実に仲間に出来る方法が只一つ。
しかし、それをやるのは……シキにとってはある意味屈辱でしかないだろう。
───だが、背に腹はかえられない。
シキの姿はボロボロであるが、そのまま容姿を幼くしていく。シキ自体の容姿をそのまま幼くしたかの様な、10歳程に変身した。
癖っ毛の長い金髪に、庇護よく駆られてしまう美少女の様な容姿。元々が美女同然の容姿だったので、馴染みある人物ならば納得であろう。シキは執事服ではダボダボなので、上から氷の着物を着用する。そして中の執事服は[空間庫]に回収してしまう。
「(よし……!)」
覚悟を、決める。
シキは内心屑い事をしてしまうのだが、今回は闇歴史として確実にラヴィに弄られるのは確信した。氷の着物もわざとボロっぽくして、今にも泣き出しそうな嘘の表情を作る。
そして───。
「たっ、たすけてくださいっきょじんさまっ!あのどらごんにみんな、おそわれてるんですっ!」
「───なにッ?」
デルタは子供化したシキの方向へ顔を向けると、酷く驚愕したかの様な……雷に撃たれたかの様な動揺をしてしまう。
暫くして、デルタはシキのボロボロな姿……そしてほぼ破壊された辺り一帯を見回してバハムートへと静かに顔を向けた。
<きさま……ッ!なんと非道なことを……ッ!!!>
「(ま、間違ってはいないからな)」
<安心せよ、可憐な少女よっ!君の為に勝利を掴み取ろう!!!>
「ほんとうですかっ!───うれしぃ♥️(あ、あざーす)」
<───ほわぁっ!?で、では参ろうかッ!!!成敗してやるっ、そこの光る蜥蜴めッ!!!>
『機械精霊兵・TYPE:Δ』は幼女に弱い。超がつくほどに。
シキの事を完全に美少女だと勘違いしているデルタは可憐な美少女の為にバハムートに向かって特攻していく。
しかし、バハムートは余裕であった。
<なんとも愚か。ただの鉱物の人形風情が…… "神々を喰らいしもの"と成った我に触れる事など───べほらッ!?>
ドンと構え、余裕をぶっこいていたバハムートの顔面にデルタの拳が命中する。やはり巨人なるデルタの拳にはバハムートの身体もゆらりと傾きはしたが、流石に倒れるまではいかない。
バハムートはあんなに油断して、挙げ句の果てには清々し程に殴られてしまう様は、敵であろうと少し間抜けと叫んでしまいたくなるのは仕方がないと思いたい。
<ただの人形だと侮られては困るぞ。私は神々と激闘を繰り広げた"巨人"の力を有しているのだッ!!!>
<そうか……っ!異界の対神兵器……!!!>
バハムートもデルタが、神を殺せる相手だと判断したらしく大きな翼を広げて戦闘態勢に入る。そんな中、地味に罪悪感に蝕まれていたシキは思った。
「(……あとで謝っとこ)」
近くに仮面女が声をシキを指で指して、腹がよじれる程に爆笑していたのは言うまでもない。
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