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武器なる左腕



彼はゆっくりと歩み始める。


左腕は既に異形のものとなってきた。


先程まで武器として存在していたものが、使用者にとっての左腕として新たな力を発芽したのだ。


更に言えば、彼の存在自体が新たな高みへ昇っている。


彼自身の身体は、武器でもある。


左腕は彼の思う自由自在に変型し、その大きさ質量までも操れてしまう。


加えてその左腕は武器を魔力ある限り無限に生み出す事が可能だ。そしてその武器には"聖"・"魔"・"天"を司る武器をも凌駕する。既にある武器を更に大幅に強化させて自分のものにさせてしまうあまりにも規格外の中の規格外。


この右腕は、彼にとって義手ではない。


正真正銘の、己の左腕だ。


しかし、己の左腕でありながら武器を内包している。


いや、その武器までもが己の右腕の一部なのだ。


彼は、遂に動く。


標的は、大空に羽ばたく国を滅ぼそうとせん風の神バハムート。


彼は───シキは《変刑武器(トランス・ウェポン)》を宿す右腕を、その左手を握り締めて呟く。



「いくぞ、相棒」



それに反応し、応える《変刑武器(左腕)》は力を集束させていく。今の《変刑武器(左腕)》であれば、剣だろうが槍だろうが、銃だろうが、矢だろうが変形させるだろう。シキの意思によって、だ。下手をすればミサイルも生み出せるだろう。



「……!」



変刑武器(左腕)》を前へ伸ばすと、その右手の平から黒い球体が生み出される。サイズはバスケットボール程の大きさだ。シキは左腕で殴る構えをすると、そのまま浮遊する黒い球体に狙いを定めた。


シュルル……と黒い球体が、弾丸の形へと変形させていく。


その弾丸は先端が尖った小銃弾の様なシルエット。しかし、その大きさは大砲の弾丸よりも少し小さめなものだ。その弾丸の標準は勿論バハムート。


黒き大きな銃弾はゆっくりと回転させていく。そして徐々に急速に速度が増していくのだ。それが発射されれば被弾した物を貫通させる為の回転。



「はぁぁっ!!!」



そして《変刑武器(左腕)》、右手を握り締めていたシキは、回転している弾丸を文字通り殴ったのだ。殴った瞬間、弾けた衝撃波と音が発せられる中、弾丸は空気を突き破っていきバハムートが発生させた嵐や竜巻をも貫いていったのだ。


そして───。



「Goa!?」



バハムートの目の前に迫った瞬間、バハムートはその弾丸の存在に気付いた。流石にこのまま黙って弾丸を受ける筈もなく、両翼を羽ばたかせ疾風を起こして吹き飛ばそうとしたのだ。


しかし。



「破ぜろ。そして、咲かせろ!」



弾丸はバハムートの疾風によって阻まれて先へ行けぬ状態だが、その弾丸はまるで爆発するように発散したのだ。しかし、単なる発散ではなく弾丸はそこから散り散りに黒い液体となったかと思うとそこから幾千もの木の枝の如く枝分かれした尖端が鋭い棒がバハムートに集中して襲ったのだ。



「GaaaaaA!?!?」



いくら完璧な防御を誇るバハムートの鱗でも、鱗に刺さって終わりではなく鱗と鱗の境目にもそれが伸びて無理矢理侵入して刺してきているのだ。全てが直接刺されていた訳ではないが、何十ヶ所は刺されたのだろう。バハムートは初めて鱗を無視して刺された事に痛々しく咆哮を上げていた。



「おらぁァアッ!!!」



バハムートに幾千突き刺さる棒は身体全身に縛られる様に拘束すると、次は拘束部分から鎖がシキの元まで伸びてくる。それを右手で掴んだ瞬間、その左手と鎖が一体化となりそのままバハムートを力尽くで引きずり下ろそうとした。バハムートは両翼だけでなく、自ら暴風に乗せて逃れようと。或いは逆にこっちへ引っ張るつもりである。



俺の(・・)"憤怒(・・)"を、舐めるなァァア!!!」



力負けしたのはバハムートであった。


シキは全身が[魔王(サタン)の資格]の発動により、全身の肌が褐色に変化し、力を一瞬全て引きずり下ろすことに使ったのだ。[魔王の資格]の威力はバハムートの身体を引きずり下ろすのには十分である。


しかし、ただ引きずり下ろすだけではない。


引きずり下ろす最終地点は……シキ自身がいる場所へだ。


左手にはバハムートを拘束させた鎖を。


そして、急所を貫く為に右手には《死ニ至ル影女王之槍銛(ゲイ・ボルグ・スカイ)》が握りしめられていた。


既にシキはバハムートの心臓に向けて《死ニ至ル影女王之槍銛(ゲイ・ボルグ・スカイ)》を投擲する構えを取っている。バハムートは《死ニ至ル影女王之槍銛(ゲイ・ボルグ・スカイ)》という存在が一目で不味い代物だと判断したらしく、己に巻き付く鎖を剥がして脱出しようと躍起になっていた。


だが、そのバハムートの背後に二つの炎と雷が現れる。



大焦熱の番神(イフベロート)』、『雷纏う猿獅(ポンカ・モンラ)』だ。



「刺さりやがれ阿呆んだらァ!!!」


「さっさと、死になヨォ?」



「Gaoaa───!?!?」



二つの業火と雷光の拳がバハムートの背中を後押しするかの様にぶん殴ったのだ。それは爆発であり、否応無くバハムートはシキの《死ニ至ル影女王之槍銛(ゲイ・ボルグ・スカイ)》に吸い込まれる様にそこへ落ちていく。よく見れば『白き聖霊王(レタルキュゥトス)』によってバハムートの両翼は凍りついており、更に氷の竜が食らい付く様に飛行をさせなくしていた。


シキは狙いを定める。


前に仮面女に放ったのとは、格段に違う。


投擲する訳ではない。


射る、のだ。


まるで、魚を捕らえる銛の如く。


大地を両足の全ての指を掴んで、《死ニ至ル影女王之槍銛(ゲイ・ボルグ・スカイ)》を解き放った。


だが、《死ニ至ル影女王之槍銛(ゲイ・ボルグ・スカイ)》自身はシキの右手に持っている。しかし、《死ニ至ル影女王之槍銛(ゲイ・ボルグ・スカイ)》は蒼み帯びた白き閃光の如く尖端が何十倍に伸びていた。その長さは約20メートル。



死ニ至ル影女王之槍銛(ゲイ・ボルグ・スカイ)》の尖端はバハムートの鱗をも貫通し、そして───。



バハムートの心臓を貫いたのだ。



「Gaoooooo─────────────」



絶命とも捉えられるその咆哮は、大地を、天を揺るがした。


しかし、それだけでは終わらない。



「死になさいッ!!!」



バハムートの背後には『大焦熱の番神(イフベロート)』、『雷纏う猿獅(ポンカ・モンラ)』ではなく、仮面女が薙刀の刃が止めを刺すことに特化した短剣のスティレットの様な刃を氷で生み出していた。


その刃で、シキが《死ニ至ル影女王之槍銛(ゲイ・ボルグ・スカイ)》から貫いた場所から斜めに向かって心臓を後ろから刺したのだ。


前後から心臓を突き刺されたバハムート。



「Gya────…………」



細切れる様に声が徐々に消えていく。


流石に心臓を突き刺されたこと、そしてそれも前後から二突きされたのだ。


しかし、だ。


相手は、バハムート。


単なる生命体ではない。


バハムート……即ち、風の神。



「「「……!」」」



「GooooOAAAAAAAAAAAA──────!!!」



神たる存在に、心臓を二度突き刺した位でくたばる訳がない。


更にバハムートは数多の神々を喰らった"神々を喰らいしもの(ゴッズ・ヴォア)"だ。ただ喰らう訳ではなく己の肉体と力の糧にしているから余計である。


バハムートの身体は、解き放たれる(・・・・・・)様にボロボロと鱗が剥がれ落ちていく。鱗が剥がれ、[神気]が溢れ出している。


そして、遂に全ての身体の鱗が弾け飛んだ。



バハムートの姿は、竜というより"神"に相応しい姿で顕現した。



人型の姿のドラゴンであり、背中には常に魔力を循環させ放出させている複雑な魔方陣が背負われる様に、もう1つの翼の様に現していた。白い旋風によって常時纏われており、身体は水晶の様に透き通り、紅と碧の紋様が複雑に浮き上がっている。


先程までとは違い荒々しさはなく、まさしく神として堂々と、しかし静かにシキ達へと見下ろした。



〈 よくも、この我を──────覚悟は出来ておろうな、人間よ!!! 〉



シキ パワーアップ ⤴️⤴️⤴️ ▼


バハムート 第二形態 ▼

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