シキVS仮面女
⚠️真似しないでねっ!
シキの《死ニ至ル影女王之槍銛》と仮面女の薙刀。
双方長いリーチがあるにも関わらず、まるで剣の様に牽制し合っている。
技術的には両者共に同じ。
しかし、若干押していたのはシキの方であった。
「はっ!」
「ふっ」
《死ニ至ル影女王之槍銛》を仮面女の身体の何処かに傷つけさせようとはしているが、仮面女は薙刀で軌道を反らした後に潜り込む様にして攻めてくる。それをシキは脚や空いた手などで体術でそれを阻止していく。
しかし、攻めているにも関わらずシキは妙な違和感を感じていた。
「(なんだ、この女……わざと攻められているのか?しかも……)」
仮面からでは分かりにくいが、仮面女はシキの一つ一つの大小関わらず動きを視ているのだ。
それがどうした、と言われてしまえばそれまでなのだが、しかしシキからすれば気持ち悪い位に気味悪い。
「(くそ、妙にやりにくい……!なら、"これ"で終わらせる!!!)」
シキは《死ニ至ル影女王之槍銛》を仮面女の頭・右手・左手・右肩・左肩・鳩尾・心臓・右ひざ・左膝・右足・左足に突きを一度に放ったのだ。透かさずに、仮面女はそれを全て受け流すのだがシキの最後の一手に対処が遅れてしまう。
シキの最後の一手。
それは、《死ニ至ル影女王之槍銛》を短く片手で持ち、腰横に構え、勢いをつけて突き出したのだ。
短く持った《死ニ至ル影女王之槍銛》だが、突き出した瞬間に持った手を緩めていた為に風の螺旋を描いて仮面女の心臓に狙って突き放たれた。
「っ!?流石は《死ニ至ル槍銛》ってわけね……」
心臓を突き破られようとしたが、仮面女は自らの右手を犠牲にして力尽くで止めたのだ。しかし、《死ニ至ル影女王之槍銛》は仮面女の右掌を貫通させている。
本来ならば、突き刺さった箇所から血液の流れが乱され呪われたかのように身体を蝕み崩壊させてしまう。だが、仮面女はその《死ニ至ル影女王之槍銛》の呪いと呼ぶべきものを無理矢理抵抗し、呪いをブチ殺してしまっている。
仮面女はまるで楽しそうに笑う。
「ふふっ、いいわ!アンタの技、模倣から御返ししてあげるっ!」
「なっ!?ぐぁっ!」
仮面女は薙刀でシキの《死ニ至ル影女王之槍銛》を絡める様にして地面に突き刺す。薙刀からは帯の様なものが生えており、更に《死ニ至ル影女王之槍銛》を絡め取っていた。
《死ニ至ル影女王之槍銛》はシキの手から離れてしまうが、それは仮面女も薙刀を手放すことになってしまう。
直ぐに仮面女はシキの体術を完璧に模倣して虚を突かれたシキの身体を吹き飛ばしたのだ。
仮面女はシキの体術を模倣し、更には自身のスタイルでアレンジを加えて完全に己のものとしている。その動きはシキの体術は静かで速さがあるものだが、仮面女のは轟きを与える力強くダイナミックな動きだ。
「ぐ……っ(肋一本折れたな、くそが)」
シキは体勢を立て直すのだが、口から一筋血を溢してしまう。
久々に骨が折れた感覚に懐かしさを少し感じながらも、仮面女の方を見てニヤリと悪そうな笑みを浮かべていた。
「……っ、ヤってくれるわねアンタ」
仮面女は右腕があり得ぬ方向へねじ曲げられていた。
その右腕は赤を通り越して黒々として痛々しい。今にも血が出てしまいそうだ。
これはシキが吹き飛ばされるのと同時に、仮面女の力を利用して勢い良くねじ曲げた結果である。しかも仮面の半分下、口元が見える程に砕かれてしまっていた。修復される様子もない。いや、修復出来ない程のダメージを部分的に受けてしまったのだろう。
どちらも同士討ちの様ではあるが、両者は戦いはまだまだ始まったばかり。
仮面女は純白ダイヤモンドの指輪をする左手に仮面口付けをするとシキに向かってその力を放った。
「ゆけ、『白炎』っ!!!」
「っ……『白炎』っ!!!
仮面女から……純白のダイヤモンドから生まれた白き炎『白炎』に一瞬、動揺したシキであったがそれを迎え撃つ様に同じく『白炎』を放ったのだ。
これに動揺したのが仮面女である。
「……なによ、アンタ。なんで、あの人の力を」
「何を言っている、『白雷』!」
「!」
『白炎』と『白炎』が衝突する中、シキはその中に白き雷『白雷』をぶつけたのだ。『白雷』は互いにぶつかる『白炎』を突き破り、仮面女狙っていく。
「これも……っ!くっ、凍てつけ、『大氷煉獄』ッ!!!」
「なぁっ!?」
仮面女が解き放った『大氷煉獄』はシキを取り囲み外から完全に閉ざしてしまう。
当然シキは驚愕してしまい、対処も出来ず『大氷煉獄』に幽閉されてしまう。
『大氷煉獄』に閉じ込められたシキは仕方がなく[空間庫]からある物を取り出した。
「『大氷煉獄』……神をも凍てつき閉ざす氷結の監獄か。俺の『白炎』では『大氷煉獄』を溶かし、壊すことしか出来ない……ならば、外法ではあるがあれで火力を底上げして吹き飛ばすか」
[空間庫]から取り出したもの。
それは……。
99度ある酒が入った5リットルの酒瓶だ。
皆がよくイメージする酒瓶をそのまま馬鹿デカくしたものである。
99度の酒等、美味しいのかと思われガチだがこの酒は特殊な製法によってかなり美味なのだ。素人が呑んでしまえば、必ず呑まれてしまう。どんな種族でも目を回して倒れてしまう程、『大酒豪殺し』とも呼ばれる酒。どんな酒豪でもこの酒一杯で満足し爆睡してしまう程なのだ。
その『大酒豪殺し』の栓を開け、シキは煽る様に呑みだした。
「……ん、ん……ん、……ん……んんっ」
ゴクリ、ゴクリ、と太く静かに響く喉越しが似合わないシキは一息も着かずに数秒で3リットルを飲み干してしまう。
しかし、シキはげふーっと可愛らしく一息したかと思うとそのまま息を吸い込み、己を閉ざす『大氷煉獄』の壁に向けて……。
口から業火の灼熱を吹き出したのだ。
吹き出す、といってもシキは口から優しく口を細めて風を吹いている様にしか見えない。
だが、その口から後から『大氷煉獄』をジューっと焼ける音が辺りから聞こえてくる。『大氷煉獄』がこの業火の灼熱で破壊されていくのだ。
「はぁっ!?あんた、私の『大氷煉獄』を……」
「んなもの、燃料さえあれば簡単に破壊できる」
「……ふふ、あははははははっ!!!ほんと、馬鹿みたいっ!!!(あの人も……こんな馬鹿な戦い方してたわよね……)」
今のシキは執事服であり元に戻ってきた《死ニ至ル影女王之槍銛》を右手に、そして左手には5リットルの『大酒豪殺し』の大酒瓶を。
その様は、異様だ。
しかし、《死ニ至ル影女王之槍銛》に『大酒豪殺し』を用いている。
これは仮面女にとっては、見た目は馬鹿らしいが酔っている様子もなくむしろシキの気配は鋭く重量感があるのだ。
仮面女は周りに氷の結晶を取り囲む様に生み出して警戒している中、シキは口からふっ、と蒼炎を漏らす。
「本当に、呆れる位に、面白いわ……アンタ」
⚠️お酒は20歳からだよっ!




