☆置き土産
今回は短いです。
(;>_<;)ゴメンチャイ
次回は異世界サイドに戻ります、絶対!
「『深淵』が、殉職……ですかぁ~」
窓一つ無い、ここが何処にある建物の中なのかも全く想像も予想も出来ない黒い一室。
そこでさらりと揺れる長い綺麗な白髪にチョコレートの様な褐色肌の小学生程の少女が体育座りで豪華な椅子に座っていた。
少女が口にする風貌から見た目は幼いが何処が落ち着いた妙年の女性にも感じてしまう。
「なんつーデマを流しやがるんだ、WAO」
「……いいえ?意外と事実かもしれませんよ『破壊』。『深淵』という存在はこの地球から居なくなった。そして二度とこの地球には戻らない、と」
「なーんで、そんな事を噂にしやがる?まるでその情報をわざと拡散してやってるみたいじゃねーか」
少女と対面するようにドカッ!とソファーに身体全体を預ける露出度が多いアマゾネスの様な魔女『破壊』はその話題に関して少し疑問に思っていた。
恐らく、『深淵』が殉職した、というのは<理想>だけでなく<粛清>や<悪戯>等にも伝わっているだろう。
それだけでない。
その組織等の傘下や他の勢力もこの情報は掴んでおり、この期にこの覇権を狙おうとする輩は必ずいる。
しかし、そう思うのが普通なのだがこの少女はむしろ逆に警戒をしているのだ。
「どうしたんだァ、ボス?」
「WAOからすれば、この世界の覇者と君臨し圧倒的な力を保有する『深淵』。その彼が不在というのは明らかに他の勢力に知られれば非常に不味いでしょう?なのに、その情報を全く規制する気もない。……これは、WAOにとって、『深淵』が居なくなっても問題ない……と言っている様なものです」
「……『深淵』の代わり、ってことかい?」
「えぇ。現にWAOに多数新たな顔触れがありましたね。まるで『深淵』が居なくなったのを境に頻繁に現れています。これは、偶然ではありませんね?」
「だろうねェ」
「……今まで不思議に思っていました。<理想>を含め、どの勢力からも『深淵』はこの世界の覇者と認識していました。なのにどの勢力も根本的に潰そうとはしなかった。覇者でありながら、完全に守備。……これは、彼等に時間を与えていたのかもしれませんね」
「は?それってどういうことだよ」
「我々もWAOを倒そうと準備をしてきました。ですが、その準備期間はWAOにとっても同じ……『深淵』だけでなく組織内の戦力の増量をしていたのでしょう。その戦力の増量の一つが、新たな顔触れの者達。ふふっ……とんだ置き土産をしてくれましたねぇ、『深淵』さん?」
不適な笑みを浮かべるが、それは決してその表情と中は別物の感情を露とする<理想>のボス『マリ』。
そう、彼女こそがこの四大……五大勢力の最高権力者であるのだ。しかし、誰もが五大勢力の中で過激な犯罪組織……マフィア・ヤクザ・ギャング等の暴力系の裏組織の殆どを束ねる頭目というのはやはりもっとこう……厳つい顔で、幾つもの傷を身体中ある大男等を想像してただろうが、残念ながら、その本当のボスはその裏組織を束ねるにしてはあまりにも可憐で幼すぎる。
が、何事も見た目で判断するのは良くない。
これが、犯罪組織の数々を束ねる存在であれば命知らずであろう。
確かに綺麗な白髪にチョコレートの様な褐色肌は、性的にも魅力的ではある。
これを、下衆な考えを持つのは仕方がないがその様な者は本当の下衆でしか思い付かない。
女だから、幼女だから、で判断するのはこのような裏組織では通用する筈がない。
裏組織に関わる老若男女問わず、全て警戒するのが、普通なのだ。
ふと、『破壊』は今まで不在にしていた『マリ』にジト目で眺めながら訪ねた。
「で?最近顔を出さねぇと思ったら……何をしてたんだァボス」
「あ……そうでした。実は我々も戦力の増量の為に地球の異変で全世界が混乱に満ちている最中にとある場所でとある物を盗んできたのですよ~」
「……それが、あの棺ってことか。その中身は?」
「えぇ『破壊』。貴女には教えておきましょう……この複数の棺の中には……」
『マリ』が指し示すその先には幾つもの棺。
その棺の外装は、まさしく王族の様な……高貴な存在が眠るもの。
棺だけでなく、骨壷も幾つもある。
それが、誰の遺骨・遺体が埋葬されていたのか。
それを『破壊』へと話す。
黙って何処で、どんな人物なのかを聞いていた『破壊』であったが、最後まで聞いた後『流石は我等のボス』といった非常に愉快そうに笑う。
「……おいおぃ、流石だぜボス!流石は『死霊使い』の異名も持つ最強の魔女ってことかィ!」
「ふふ、さぞかしWAOの皆様も驚くでしょう」
それらは全てWAOや他の組織に対抗する一つの大きな戦力達が<理想>に集められていたのであった。




