☆波乱の開幕
お待たせ。
……ちょいと書くのが間に合わなくてこちらを投稿しました。
申し訳けございません( ノ;_ _)ノ
『深淵』と話した、あの時の話を思い出した。
『……人って録な奴がいないですよね、『深淵』。こんな争い事をするくらいなら、今の世の中の為に使おうとはおもわないんですかね?』
『そうだな、樹君。だが、人間というのは十人十色、様々な種類の人間がいる。大きく分ければ己の欲の為に、他人の為に尽くすかの二つだ。しかし、国との国と戦争というのは、そのどちらも混じっている。ある人は祖国の為に。ある人は殺戮を楽しむ為に、ある人は己の名声の為に……。善も悪も混じるのが戦争というものだ』
『善も悪も……余計に達が悪いっすね』
『あぁ、そうだ。それは戦争だけではない。これは人間社会にも同じことが言える。だが……これが過ぎると非常に厄介だ』
『どういうことっすか?』
『良かれと確信を持ってやっていることが、取り返しのつかないことになっているのを気付いていない、ということだ。それが……人にとって、世界にとって非常に不味いことになる。気を付けておくといい、樹君。善意を確信を持って間違いを起こす才人というのは計り知れない危険さを持っているんだ』
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「これは……そんな……」
机の上に資料を置いた田中樹は、あまりの驚愕に目眩を起こしていた。
「嘘だろ……時空の歪みが、人為的な、現象だったなんて……!」
『時空の歪み』。
それは一年近く前に起きた、日本・米国・英国3つ高校にいた一部の生徒、教師達が行方不明となった大事件が起きた。
この行方不明事件は、『世界樹』が無いことで起こってしまった自然現象である『時空の歪み』によってこの様な出来事が起きたとされていたのだ。そして行方不明の教師生徒達は、この地球とは異なる世界へ飛ばされたらしい。
だが、この『時空の歪み』は自然現象ではなく人為的なものであったのだ。
これが判明させたのは、目の前にいる大御門彦乃であった。
「これが、真相です」
「……過去10年間に起こった集団で行方不明になった被害者等も『人為的な時空の歪み』が原因……か。そしてその『人為的な時空の歪み』を引き起こしたのは……」
地球上最大規模の開発所であった。
そこの研究所では、WAOのメンバーでもどんな研究が行われているかはわからない。元『真序列』No1『深淵』でもその真相は知らされていない。が、どうやら『深淵』は研究所で行われている研究が非常に危険なものだと察知しており、何度か一度研究がどの様なことが行われているのかを目にしようとしたのだが立ち入り拒否され、警告を行っても無視されていった。
その結果、人為的な時空の歪み、を起こしてしまったのだ。
現在、この報告を受けたWAO総本部長である柊グレンと他の国の本部長等は直ぐに研究所を制圧し研究を止める様に動いている。その人員の中には元『真序列』No1『深淵』の教え子等や何名かの『真序列』等によって構成されていた。
「……あの、ミラさんは何処に行ったんすか?」
「あぁ、あの子ですね。実は……」
彦乃にしては珍しく言いづらそうにしている。
この部屋には樹と彦乃、そしてゴウキだけ。
本来、彦乃とゴウキと共に行動していたミラの姿が見当たらないのだ。
しかし樹は直ぐにミラが何処に行ってしまったのかを察してしまう。
ミラは、元『深淵』……不知火姫希の執事であり右腕である存在だ。そして主である姫希を愛して止まない。彼にとって姫希は己にとっての至高なる存在だ。確かに親友とも呼べる程仲が良いのだが、不知火姫希の絶対なる味方でもある。
もし、敬愛する主が人為的な手によって離れ離れになってしまえば……どうなるか。
「ま、まさか……」
「……えぇ。先にミラ一人でその研究所に向かわれました。恐らく殴り込みかと」
「……おぉ」
既に手遅れである。
ミラという人物は容姿や肉体的、声等全てにおいて中性的より女性よりであるのだが、姫希のこととなると色々とぶっ飛んでいるのだ。これこそ『超越者』らしき発想というべきか。
彦乃曰く、この報告を逸早く知ったミラは『ぶっ潰す』と一言残した後に単身で乗り込んでいったらしい。あまりのキャラの変わり具合に彦乃とゴウキも呆気に取られてしまった。口調も穏やかで柔らかいのだが、『ぶっ潰す』という言葉には最初に発する『ぶ』だけで十分の殺気が練り込まれていたのだ。目付きもくりくりして綺麗な瞳も、まるで殺し屋ではないかと思わせる程に人を恐怖で震え上がらせるには十分であった。
「それにしても、これからのこの星はかなり荒れるぜ?」
突然、ゴウキはソファーに寝そべりながら言うのだ。
樹はゴウキが言う地球が荒れるという意味に何となく察した。
いや、察するも何も今地球の勢力図はかなり荒れているのだ。
荒れている原因。
それは、『真序列』No1、『深淵』が殉職した、というものである。
実際には『深淵』……姫希が殉職したのは嘘である。
が、地球へ不知火姫希が戻ることはない。
本来の真相を知る者は、WAOの総本部長と各国の本部長。そして他の『真序列』等数名に田中樹と神埼刀奈位である。その他に『深淵』を知る者は、彼が殉職したという情報を伝えていたのだ。
だからこそ、だ。
『深淵』が、不在となったこの地球。
勿論荒れるに荒れるのは決まっていた。
何処からか、殉職したという情報は裏社会で拡散されていきそれぞれの勢力にも耳が届いている。
この様に拡散された、ということはWAO内……或いはWAOと関係する者が外部と繋がっている、訳なのだが。
しかし、それよりもゴウキが危機とするのはそこではない。
「今まで姫希が、この地球に存在する三大勢力の動きを抑えていたんだ。けど、今の状況はその三大勢力からすれば嬉しい状況だ。加えて新たな勢力も現れて今ではWAOを合わせて五大勢力。奴等からすれば危惧し、自由を封じていた『深淵』は地球の覇者だ。その覇者が不在……なら、どうするよ?奴等は思うだろうぜ、覇者が居なければ自分が覇者に……ってな」
「……」
「誰かが、この地球の覇者が決まるまで終わらねぇぜ?事態はかなりやべぇ方向に向かってやがる……イツキ、てめぇも腹括れよ。その覇権争いにWAOも動かずには要られねぇ。だからといって総本部長を当てにすんなよ?あの人もバケモンだが、好き勝手に出歩ける訳じゃねぇ。世界が崩壊する程の、よっぽどな事がねぇ限りは制限されてるからな」
ゴウキの言葉に尋常じゃない程の重圧を感じてしまう。
『深淵』という存在は、地球の覇者として君臨してきたのだ。
それが、どれ程大変なことか……。
「……いつか、いつかこんな時が来るとは思ってましたよ。でも、『深淵』が居ないからって何も出来ない俺たちじゃないっす」
そう樹は只成らぬ存在感をオーラとして現れていく。
そのオーラというのは彦乃とゴウキのオーラとせめぎ合う程。
樹という存在は、刀奈と比べて戦闘に出ることは少ないが実力的には総本部長、『深淵』に継いでの実力者だ。
「ふふふっ。流石は次期『真序列』No1というべきですね。私達もできる限りはさせてもらいましょう」
「精々頑張れよ、イツキ」
「……ありがとうございます」
今さらですが……
「この小節はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。」
( ̄ー ̄)




