侵食の種
平成がぁ~~~、終わるぅぅぅ……。
今思えば、平成って凄いよね。
アニメ・ゲーム等の娯楽が……凄かった。
令和はどうなるのかな?
娯楽が……もっとすごくなればいいなぁ~(o>ω<o)
「ハッ!今更伏兵を寄越した位で、この空間……そしてこの状況では無意味だ」
そう魔女はビティーカと葵《アスィミ》、そして『勇者』等を取り囲む様に魔方陣が展開される。その魔方陣からは火や水、風、光、闇などの砲弾の様なものが形成され、解き放たれようとしていたのだ。
しかし、その前にアスィミ……その正体は変装した桜間葵は懐から取り出したものを真正面に軽く投げたのだ。
だが、それは攻撃手段ではない。
何せ、ここは女神クシャルの加護が無ければ攻撃出来ないのだから。
葵が投げたのは、黒く輝く宝石の様な種である。
それを四方八方にふんわりと投げていく。
幾つもの魔法の弾丸が葵とビティーカ、『勇者』等に容赦なく襲い掛かる。
しかし、葵が投げた種はパチッと音が鳴るとまるで時間を早送りにしたかの様に種から黒い花となったのだ。
そして大砲の様に降り注ぐ魔法の弾丸をその花弁が受け止めていく。
何度も何度も。
花弁は多少は欠けたりしているが、魔女の攻撃を全て受けきったのだ。
この黒い花達は、紛れもなく魔法で生み出されたもの。
確かにこの空間は女神クシャルの加護が無ければ攻撃はできないが、発動ぐらいはできる。
攻撃ではなく、防御として発動したのだ。
「ほう、奇妙な……」
「……」
魔女が奇妙、と発言したのはその花は攻撃を防ぎきったと思えば萎れ、枯れていくのだ。
そして、蕾へ変化していく。
「……解き放て」
蕾は風船の様に膨らむと、そのままパンっと割れてしまう。
が、その蕾から黒紫の宝石の様な種が辺りに飛び散ったのだ。
飛び散った種は、この空間に拡散していく。
「なんだ、これは?」
「……へぇ、面白いねっ」
魔女は困惑し、ビティーカは葵の姿を見ながら優雅に笑う。
辺りに散らばった種は直ぐに発芽するのだが、明らかに普通とは違う。
まず、それに気付いていたのはビティーカ。そしてその後にやっと魔女も気付いてしまう。
何故、種をこの空間に散らばったのかを。
「な、なに!?まさかーーー、まさかっ!!!キサマーーー!!!」
「……もう、遅い。この空間は、壊れる」
あまりハッキリとした声ではなく、少し低く籠った声で話す葵。この理由は、本来の声で話してしまうと後ろにいる桜間姉妹に気付かれる危険性があるのだ。葵自身、彼女らに正体を明かすつもりもない。
「侵食の種」
黒紫の種が発芽したのと同時に空間に捩じ込むように根が侵食していく。空間も一瞬バグが入った様にラグが発生してしまう。しかしそのバグは次第に大きくなっていくのだ。
「キサマッ……!ここで、消えろ!!!」
魔女は葵に向けて魔法を次々に放っていく。
だがそれを、発芽した花によって受け止められていき無駄撃ちとなってしまう。
葵は、新たに懐から銃……『ジルヴァラ』を取り出すと魔女に向けて、発砲したのだ。
しかし、魔女には動揺が見られない。
魔女はこの空間の中で、女神クシャルの加護を持たぬ者にはその加護を持つ自分を傷つけられないとわかっていたからだ。
だからこそ、過信してしまったのだ。
「ーーーなッ!?」
弾丸は、魔女の肩に貫通した。
貫通した部分から血が浅く床に飛び散ったのだ。
「あ゛ぁぁぁ!?!?ガ……っ、な、なぜ、……なぜ、私が……?私が傷つけられるのだ!?!?うぐぅ……女神クシャルの加護もなしに……なぜ……っ!!!」
「わからないかい、神の眷属さん?彼が撒き散らしたあの種によって……この空間の定義を崩されたのさ」
「な、に……?」
魔女が発動した、空間の定義は。
≪女神クシャルの加護を持つ者は、攻撃可能。≫
≪女神クシャルの加護が無い者は、攻撃不可能。≫
これが崩されたのだ。
では、何故、≪女神クシャルの加護が無い者は攻撃不可能≫という定義だけが崩されたのか。
そもそも、この空間で最も定義が強くなるのは≪女神クシャルの加護が無い者は攻撃不可能≫だ。
≪女神クシャルの加護を持つ者は、攻撃可能。≫というのは、そもそも定義として別に強くなる筈がない。そもそも定義としてはいないのだ。
何故ならば、攻撃するのは誰にでも出来るから。
逆に、ある一定の条件を持たない者は攻撃不可能、という制限を掛けられているので、そこが崩されたのだ。定義としては≪女神クシャルの加護が無い者は、攻撃不可能。≫だけが発動している。そこさえ無くなれば単なる普通の戦いだ。
「くそ……我らが主の空間を壊しおって……っ!!!そこの隻眼のキサマ!!!キサマッだけは……絶対に許さんっ!!!」
魔女の身体に異常なまでの魔力が発生する。
今にも何か広範囲に及ぶ魔法を行使するのだろう、と葵は先手必勝で『ジルヴァラ』にある弾丸を用意する。
「『心象・《死ニ至ル影女王之槍銛》』……『弾丸化』」
葵は確実に止めを指そうと《死ニ至ル影女王之槍銛》』を弾丸にしたものを『ジルヴァラ』へ装填し、魔女に向けて銃口を向ける。
狙うは、急所。
例え神の眷属であっても、生きているのであれば心臓を、或いは格となる急所を潰せば一溜まりもないだろう。
「……?」
しかし、葵は何か違和感を抱き引き金を引くのを止めてしまう。
違和感というのはこの空間は定義は崩されたが、空間そのものは破壊されていないのだ。
なのに、風が吹いている。
緩やかに。
そして、息を潜める様に、静かに。
「まずは、キサマをここで…………ぁえ?」
魔女の胸に、腕が生える。
確実に心臓を貫いていた。
魔女は何が何だか、今の己の状態に理解が出来なかった。
そしてその光景を目の当たりにした『勇者』等も、目を疑ってしまう。
風は閉ざされた空間でありながら、急激に激しく荒れていく。
空間は硝子に罅が入ったかの様に亀裂が走り、そして全て破壊されてしまう。
「ぁ……ぇ、な……ぜ、この、う……で……は……?」
「オイオーイ……勝負が着くまでまったガ……神の眷属ってのハ、こんなに隙だらけな奴等か?思わずヤっちまったナー」
魔女の胸に後ろから腕を貫通させたのは、シルクハットを被った一人の長身の男である。
魔女はまさか背後をこんなにも容易く取られたこと、そして何故か背後にいる何者かによって無意識に恐怖を抱いていた。
口から血を吐きながら、魔女は背後を首だけでも振り向きたいが恐怖で振り向けない状態になりながらも意識を朦朧とさせている。
「なに、……も、の……だ……き、さま……」
「あン?まーだ動けるのか。まっ、伊達に神の眷属か。で?何者かって?笑わせんじゃネーヨ。もうアンタは終わり。ジャーな」
シルクハットの男?は突き刺したままの状態で真横に振り払った。その振り払われた瞬間に、胸に穴が空いた状態で魔女はまるで石ころの様に地面に叩きつけられ転がっていく。転がった痕跡に止まる様子もない血が流れ出ていた。
「よゥ!いつかの夜以来だナ」
「……お前はっ!」
「オゥっ!覚えてくれてたカ、ウレシーぜ!」
シルクハットの男……ラマは愉快な様子で葵を歓迎したいた。だが、葵はこのラマがどれ程危険のある存在かは、あの時で経験済みだ。
一瞬、葵は後方で『勇者』等を守っているビティーカに目配せすると互いに頷き合う。
「……『光の数珠』」
拳大の光の玉が繋がった数珠を葵を中心に展開される。光の数珠はふわふわとまるで水の中に浮かんでいる様だ。
「(とんだやつが乱入してきたね……)」
ビティーカはラマに対して初めて警戒をしてしまう。
何者かはわからないが、かなりヤバい存在なのは理解していた。
だからこそ、葵だけでは荷が重いと判断したビティーカは後方支援をすることを決意する。勿論、『勇者』等を守りながら、ではあるが。
トンっと杖を床に叩くと魔方陣を展開させる。
しかし、それだけでない。
ビティーカの周りに大中小と大きさは様々ではあるが幾つもの魔方陣が現れるのだ。しかもビティーカの魔方陣は床や宙を移動している。
ラマは葵だけでなく、それ以上にビティーカにも大層興味を抱いていたらしく今から始まる楽しい祭りに胸踊らされていた。
「ヘェ、対2か……ハンッ!おもしれーゼ!掛かってこいヨ!!!」
「……こいっ!」
「さっさと蹴りをつけよっか!!!」




