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仮面女


【学園サイド】



「「……は?」」



『グランディセウム学園』の校舎最上階、その屋上の上で外で待機していた学園長ビティーカと保険室の教員シキは結界が破壊されたことに何とも間抜けな声で漏らしていた。


シキの結界だけでなく、神をも壊すことの難しい『七天魔皇』の一人『黄昏の魔女』でもあるビティーカの結界もを一緒に破壊されたのだ。これが、まだビティーカとシキが連携した結界であれば破壊されるのはあり得ただろう。しかしそんな事が無いように別々で、種類も異なる結界を張っていた。たが、それを嘲笑うかの様に二つとも破壊したのだ。



「学園長」


「あぁ、わかってるさ。私達はこの学園の死守をしなけれはならない。シキ君も頼むよ」




~~~~~


【冒険者ギルド総本部サイド】



「ビティーカさんの結界までも壊されるなんて……」


「まずい……これでは侵入を許してしまうぞ」



冒険者ギルド総本部、その最上階にある『グランドマスター』の部屋で『グランドマスター』、ネメシアとレッドは焦りを見せていた。やはり"(ミドリ)"の結界が壊されたことより、ビティーカが破壊されたのは予想外だったのだ。だからといって"(ミドリ)"やビティーカの結界はあくまで時間稼ぎ。いつかは破壊されるだろうが、その前に住民の避難や対策を立てる筈だった。住民の避難は既に完了している。現在は『七大クラン』が各場所で警戒に当たっていた。



「……相手は未知数。けど、『グランドマスター』として引くわけにはいかないよねっ!」


「あぁそうだな。……流石に本体(あの方)も気付かれる頃だろう。それまでは、全力全霊で止めてみせましょう」




~~~~~


【クロサイド】



「うそだろ、たったの一撃か……」



ビティーカと"(ミドリ)"が用意していた結界を仮面女が一撃で破壊した一部始終を目の当たりにしたクロはその壮大さに思わず時を止めたかの様に静止してしまった。


そして、思わず……。



「……ふふ、あははははははは!!!」



思わず笑いだしてしまった。


別に何か面白いものを見たわけでもないし、見たわけでもなく思い出した訳ではない。ただ、仮面女の強さに圧倒されてしまったのだ。思わず笑ってしまうほどに驚くほどに強者だ。


だからこそ。



「……はやくにげたぃ」



クロはシキの分身ある。


が、分身がシキと全て同じなのかと言われるとそれは違うのだ。シキの分身達……小尾達(・・・)はシキの片割れの様な存在。


"レッド"であれば、シキの物事の分析な部分を。


"シャドー"はシキの冷静な部分を。


"(ミドリ)"はシキのクールに淑やかさな部分を。


"六華"はシキのポンコツとドジっ子な部分を。


"クロ"はシキのヘタレな部分を。


だからこそ、クロは完全にヘタレな部分が目立つのだ。シキだってヘタレな部分はある。中々見せないだけで、実際は心の中ではヘタレな事を思ってるかもしれない。


そんなクヨクヨしているとクロの足元近くに氷の槍が何処からか投擲され、突き刺さった。その突き刺さった槍からは侵食するように地が氷に凍てついていく。それを直ぐに察知したクロはその場から大きく離れて距離を取った。



「あら、どこに行こうというのかしら?」


「……ふっ(こわぃっ!?!?うぎゃぁぁぉぁぁぁあ!?!?こ、こわいってぇぇぇえ!?!こっちくんなよぉぉぉおおお!?!?)」



クロは本音を心に何とか押し殺しながらも一気にここまで迫ってきた仮面女に警戒する。よくクロの動き方を見れば少し逃げ腰気味なクロ。内心は恐怖で大号泣である。


ただ監視をするだけ、だった筈なのにまさか倭国カグヤに攻め込んできた中でも最高戦力であろう仮面女が勝負を仕掛けてきたのである。流石にシキのヘタレを司るクロからすれば泣きたくなるのはわかるだろう。



「へぇ……あの狐さん(・・・・・)本人じゃないのね。ま、何処かに本人はいるんでしょうけど」


「何故攻めてきた(おねがぃっ!さっさと帰ってよっ!ほんとこういうの要らないから!まじでかんべんしてよぉ、もぉぉお~~~!)」


「あ、言っておくけど。私達の狙い、『勇者』達には別の奴等が既に向かってるわよ。結界を掻い潜ってね」


「っ!?」



仮面女のその発言に動揺してしまうクロ。


既に仮面女の仲間が『勇者』達の元へ向かっている。その発言は仮面女達は『勇者』達を狙っているのだ。それは既に仮面女ではなく、何者かが『勇者』達がいる学園へと侵入している。


すぐに学園にいる分身(・・)にこの事を伝達しようとするクロであったが、直ぐにその場から身体を大胆に反らして後方へと回避する。



「ーーーっ!?」


「あぁ、なるほど?分身(貴方)以外にも他にいるみたいね……まあ、してもいいわよ。でも、それをする暇があれば、ね?」



クロの頬に一筋の薄い切傷から血か流れる。その傷は仮面女が氷の針の様なものによってだ。


それにしても何とも規格外な存在なのだろうか。


クロを分身だと見抜き、あまつさえクロが他の分身……小尾(おび)達に情報を伝達しようとするのも見破られたのだ。クロの動作になんの変哲もなかった筈だ。しかし、それを見破って看破されている。


だが。



「いや、伝達する時間位なら一瞬で出来るさ」



クロは余裕そうな表情で口角を上げて言う。内心では色々とヘタレな事を吐いているのだが、そうこうも言っていられない。仮面女は顔が隠れて見えないが、『何を言っているのかしら?』と疑問に思っていただろう。


何時でも消し去ることが出来るのに、何を言っているのだろうか。


仮面女はクロが言う発言をただの戯れ言だと、そしてさっさと始末しようと薙刀を音を置き去りにして薙ぎ払おうとする。


その時だ。



「?」



仮面女の足元に魔方陣が展開される。


これが単なる魔方陣であれば仮面女からすれば単なるチンケな埃だ。しかし、そんな単なる魔方陣を施すほどシキ……いいや、クロは不用心ではない。特にヘタレを司るクロであるならばより用心深いのだ。だからこそより確実に、そして心配性過ぎる程の対策を取っていたのだ。



「なによ、こんなーーー」



魔方陣を無視してクロを始末しようとした仮面女であったが、魔方陣から悠々と外して片足を出した瞬間に景色が一変する。まるで先程とは異なる場所……薄暗く息が詰まる世界だ。目の前にいたクロもいない。自分だけが違う場所に転移されたかのようであった。


『箱庭』、"監獄の檻"。


本当の監獄ではないが、その世界の雰囲気はまさしく大罪を犯した牢獄の様である。"監獄の檻"はクロが即席に生み出した『箱庭』の力であり、あくまでこれは足止め(・・・)でしかない。



「ふんっ!」



仮面女は薙刀を真横に薙ぎ払い、そして次に垂直へ叩き斬ったのだ。やはり規格外の存在と言うべき、そのただの力業で『箱庭』"監獄の檻"の世界を崩壊させたのだ。しかし、もう既に時間をクロに与えてしまってきた。



「へぇ……分身の癖してやるじゃない」


「(後はこの女を足止め……嫌だけど、やるしか……ない!)」



両手に持つ銃を仮面女に向けて構えて、何の躊躇も無く発砲したクロ。放たれた二つの弾丸は仮面女に向けて空を切っていくが、仮面女は薙刀を巧みに使い、薙刀の刃で弾丸二つを弾き飛ばしたのだ。


クロは全力で戦う気なのか、身体に変化が現れる。


頭上に黒い狐耳(・・・・)に、臀部から黒い尾(・・・)が現れたのだ。


そして身体を包むように、漆黒の靄が霧の様に漂っていく。


加えてクロの漆黒の靄は足から大地に向けて"闇"が広がっていくのだ。



「ただの分身だと侮るなよ、薙刀使い!」


「丁度いいわ、遊んであげるっ!」



しかし両者は気付いていない。


倭国カグヤに敵が侵入されたことにより、倭国カグヤ全域から光に満ちた風が引き起こっていたことを。


そしてその輝く風はオーラとなり、徐々に大きな守護神(・・・)と形作られていくのであった。






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