神殺者(ロンギヌス)、動く
どうも!
今回は短いです!
女神クシャルが女神クーディアから立ち去った後、暫くしてある一人の存在が入れ替わる様に現れた。その人物とはくすみ枯れた様な色褪せた長い金髪を持った女性。絶世の美女の分類に入るものの、その憎たらしくあまりにも彼女には似合わない笑みを浮かべながらやってきたのだ。
「貴女……」
「何て無様な表情をしているの、アンタ。でもまぁ、アンタのことはかなり狂っている女神だと思っていたけど……くくく……アハハははっ!!!……今の会話でわかったわ、アンタのことをね」
「……貴女、私を侮辱しているのかしら?貴女の主である私に何て口の聞き方なの。只でさえ貴女は私の命令を一切聞かず、勝手に単独で行動するし」
「あら、私に命令する気……?」
「……っ!?」
女神クーディアは戦慄する。
眷属であり、神殺者の殺気は神をも殺してしまいそうな威圧感にこれまで経験したことがない危機感が生まれる。彼女を命令するのはほぼ不可能。加えて眷属の中でも彼女はトップクラスの存在だ。それに、女神クーディアよりも……強い。だからこそ、無理矢理命令させるのは危険性があるのだ。下手すれば自分自身の命が危険に晒される。
「……いいわ。アンタの命令、一つ聞いてあげるわ」
「……何ですって?」
「ほら、さっさと命令しなさい。じゃないと……あのクシャルとかいうあの女神、死ぬわよ?」
「……」
そんなこと、わかっている。
女神クシャルの実力は、高位神と中位神の中間だ。優秀ではあるが、優秀では話にならないのだ。そして天才であったとしても、神童であっても、超越者等には関係ない。もし、『七天魔皇』の『覇王』や『黄昏の魔女』とぶつかれば……正直言って負ける可能性が高い。加えてこの二人は悪ではないものの、敵対すれば終わる。例えば、『覇王』であれば仲間を殺せば。『黄昏の魔女』であれば学園の生徒……それよりか倭国カグヤに手を出せば完全に敵となる。他であれば『死霊之王』であれば死者を冒涜することであろうか。
「本当に……聞くのよね?」
「あーあー、さっさとしないと命令聞かないわよー」
「……わかった。なら」
女神クーディアは、意を決して神殺者である彼女に命令を下す。
「命令よ、女神クシャルに加勢なさい。そして……女神クシャルを守りなさい」
「了解したわ、我が主。丁度いいからあの子と戦ってみるのもいいわね……あぁ、わかってるわよ。優先はあの女神なのはね」
神殺者である彼女は、主である女神クーディアから下された命令を受けてこの場から立ち去るのであった。
~~~~~
「いくわよ、皆の者!!!」
女神クシャルの元には彼女自身の眷属が彼女の決意を同調するかの如く、歓声を上げる。女神クシャルの眷属達は、人間だけでなく数々の多種多様なモンスター達が存在している。その中でも最も存在感を放っていたのは、一人の男だ。がっしりとした屈曲な肉体を有する接近戦型であろう者。彼は人間ではあるが既にその命を女神クシャルに捧げている存在だ。そんな男が眉をピクリと動かすと直ぐ様、女神クシャルを守る様に前に出た。
「……っ、何ッ!?」
「我が主様、下がられよ。……何者だ、出てこい!!!」
男は叫ぶ。
その叫びは周りの存在をピリピリと痺れる程の迫力を放っていた。男は神経を極限よりも、更に極限に研ぎ澄ませて突如現れた何処にいるかもわからない相手に警戒を強めていた。
「あら、そんなに警戒したくてもいいわよ」
そこに現れるのは女神クーディアの眷属、神殺者の女性。手には自分の身長を優に越える薙刀を片手に佇んでいる姿で現れた。そしてその神殺者の女性は女神クシャルの眷属達を軽く見渡した後、なんの恐れもなくズカズカと歩んでいく。
「貴様は……っ!」
「私?私は……そうね、女神クーディアの眷属の一人よ」
「あの御方の……」
女神クシャルは確かにこの神殺者の女性から女神クーディアの気配がする。彼女の言うことは間違いではないだろう。それにしても何故、女神クーディアの眷属がこの場に現れたのか。それを幾つか予想は出来た女神クシャルはその中でも可能性が高そうな一つを確認する。
「まさか、だとは思いますが……女神たるこの私を止めにきたのですか?」
「……それを言って、貴女は止まるのかしら?」
「何しに来たのです」
どうやら全く止める気でやってきたのではないらしい。それはそれで良いのだが、では何故ここに着たのか。女神クシャルは神殺者の女性を更に警戒を増しながら様子を伺いながらも考えていた。
が、その前に女神クシャルの疑問を自ら彼女が答えた。
「貴女達に協力しようと思った。ただそれだけよ」
「協力……?」
「えぇ、協力よ。我が主からはちゃんと許可を取ってるわ」
女神クシャルは思った。
これ程の実力者から協力を得られる、というのは願ってもない。今から攻め入る、倭国カグヤは女神クシャルにとって危険な敵地に赴くからであり、そこに住まう超越的な存在がいる。それは女神クシャルの様な神々であれば余計に警戒が必要な存在だ。
「まあ、大体は貴女の命には従うわ」
最も確認したかったことをいう神殺者の女性。女神クシャルにとって彼女自身は計り知れない存在なのはわかっていたが、底が全く見えない。この神殺者の女性も、超越的な存在なのは女神クシャルやクシャルの盾の様に立つ男も肌でわかってしまう。
「……わかりました。貴女の協力を、受けましょう」
女神クシャルは、女神クーディアの眷属であり、神殺者でもある女性を一時的に仲間として倭国カグヤへ向かっていくのであった。




