リゼットのお願い
前回のあらすじぃぃい!
『到着!』
『ギルドへ』
『アルトレアをナデナデ~』
『リゼット<(`^´)>』
『宿へ!』
のどんっ!ι(`ロ´)ノ
部屋の鍵を受け取って外に待たしていたランスロットを馬小屋に預けるとシキ達は泊まる部屋へと向かう。
場所は2階の209号室だった。
入ってみるとその部屋はベットが3つあり、広さも中々の物だった。
いきなりリゼットは並んでいた窓際のベッドへとダイブした。他の宿屋よりは少し高めの値段だがベッドの質は良いようで白くふかふかだ。
「俺はここな~!」
「シキさんは何処にしますか?」
「俺はどっちでもいいぞ。アルトレア、先に決めていいぞ」
「えっと……なら、ボクは……」
こうして決まったのがこんな感じだ。
ーーーーーーーーーーー
[窓]
リゼット
シキ
アルトレア
[扉]
ーーーーーーーーーーー
「宿は決めたとして、今日は何するんだ?」
「そうだな……とりあえず、アルトレアの武器と服を買わないとな。流石に毎日俺の服じゃ嫌だろ」
「そ、そんな事ないですよ!だって……(シキさんの服……とても良い匂いがするし……)」
今アルトレアが着ている服は茶色いズボンに黒の上着だ。その上から茶色いローブを着ている。
これはシキがエルディンテにいた時に着ていた服だ。それ以外に着替えは無いのでそれしか着ていない。
「アルトレアも元男とは言え今は女だ。服に関しては同じ女性のリゼットに任せるから。」
「わ、わかりました!」
と言うことでシキ達は服屋へと向かう事にする。
ギルド近くに服屋らしき場所は見かけたので直ぐに着く事ができた。
「え……えっと……リゼットさん、こんな所に入るんですか?」
「そうだぜ。女が女物の場所に行くのは当たり前だろ」
「ふぇぇ~」
意外にも服屋では女性用の下着も取り扱っていて服のデザインも派手では無い物が多いが良い物も置いているみたいだ。
「(にしても、男の俺がこんな所にいたら居心地悪くなる筈だが……)」
リゼットとアルトレアの女性用の服、下着の前には男であるシキが入る事ができてしまった。いや、定員に強制的に連れられたと言った方が正しいか。アルトレアも男であるシキに来てもらいたかったらしいが、シキ個人的にはとても居づらかった。
「アルトレア、これなんかどうだ?」
「なっ!そんなの着れないですよ!」
「女ならブラはしなくちゃいけねぇだろ」
「だ、だからって……そんな……」
「いいから着てみろよ!」
そんなこんなで約2時間以上掛けながらやっと下着や服類を決める事ができた。そしてちゃっかりリゼットも服を買っている。買っていたのはジャージの様な黒い長袖と長ズボン数着だった。
服の購入が終わったので次に行こうと思ったシキだが、リゼットに呼び止められた。
「なぁ、シキ。お前も何か買わねぇのか?」
「俺はいらないぞ」
「シキさん、買わないんですか?」
「いや、別に……」
「アルトレア、シキの服も選んでやろうぜ!」
「そうですね!行きましょう!」
リゼットとアルトレアに両腕を引っ張られて男性用の服へと直行するのだった。
そしてまた1時間着せ替えをやらされて2人に選んでもらった服を2着を購入したのだった。
あと、店員はシキが女ではなく男だと知ると酷く驚いていたのだが本人はあまり気にしないようにしていたのだった。
次は武器屋に行くと無口な男のドワーフが椅子に座りながら武器の手入れをしていた。
「武器を買いたいんだが……」
「……お前か?」
「いや、この子に……」
「あ、あの、よろしくお願いします!」
「……」
ドワーフはもじゃもじゃな髭を触りながらアルトレアの頭の先から足の先までじっくりと観察すると武器の手入れを止める。
「……お前、ハーフエルフか?」
「は、はい!」
「……そうか……お前何か扱いたい武器、あるか?」
「特には……」
「……わかった……待ってろ」
するとドワーフは椅子から降りるがやはりイメージ通り背が低いがそれほど極端に低くは無い。店の奥に入っていくと約5分後に弓を持って戻ってきた。
「……これが、いいだろ」
「アルトレア、どうだ?」
アルトレアは持ってきた弓を持つと何かを感じ取った様だ。
「……凄いです。手に良く馴染みます!」
「そうか。店主、値段は?」
「……金はいらねぇ。やる」
「流石にそれは……」
「店主、何でただなんだ?」
するもドワーフはアルトレアが持った弓を見ながら遠い目をしていた。昔の事を思い出している様だ。
「……それは……亡くなった親友の形見だ……そいつもハーフエルフだった……」
「そんなの尚更貰えませんよ!」
「……その弓は……エルフでも……他のハーフエルフでも……手に馴染めない……だがお前は馴染めたと言った。……なら……それはお前の物だ。……いや……貰ってくれ……その弓は……お前に使われるのを……望んでる」
「いいのか?」
「……二言は無い」
「わかった。アルトレア」
「わかりました。この弓を大事にします!」
「……よろしく頼む」
先程まで仏頂面だったドワーフの表情に少し緩む。それほど大事な形見で新たな主を見つかったことが嬉しかったのだろう。
他に矢を購入するが、シキはドワーフにあることを尋ねた。
「店主、聞きたいことがあるんだが……」
「……何だ」
「……『ギガヴィゴス』の武器、作ったことあるか?」
「……ある」
「なら、見てほしい物がある……何処か広い所はあるか?」
「……着いてこい」
「わかった。……リゼット、アルトレア。ここで待っててくれないか。少し店主と話をするから」
「おう、わかったぜ!」
「待ってますね!」
シキはドワーフに着いていくとその場所は地下の広い部屋だった。
「……見せたい物は?」
「あぁ、これだ」
シキは[空間庫]からカルディアスから貰い受けた牙、『朱十槍猪魔王の至高の黒牙』を取り出した。
「……これは!」
「かなりの物だが……これで武器は作れるか?」
ドワーフは『朱十槍猪魔王の至高の黒牙』を触ると懐から白銀のナイフを取り出した。
「……これを少し斬ってもいいか?」
「構わない」
了承を確認するとドワーフは『朱十槍猪魔王の至高の黒牙』に向かって白銀のナイフ、ミスリルナイフで勢い良く斬り付けた。
ーーーガギィィィィン!
バキッ!
『朱十槍猪魔王の至高の黒牙』を斬り付けたミスリルナイフの刃が折れてしまう。
「……こいつギガヴィゴスの牙じゃない。それより上……手強いな」
「無理か?」
「……いや、出来る。このミスリルナイフは純粋なものじゃない。これよりタフな工具はたくさんある。だが出来るのには少し時間が掛かるぞ」
「どれくらいだ?」
「……4日だ。……どんな武器を作る?」
「武器は……ランス一本に太刀一本、短剣は二本だな」
「……それだけなら半分以上は残るぞ」
「なら、残ったその半分は店主にやるよ」
「……本当か!?」
「二言はねぇぜ?」
「……いいだろう。今日はとても良い日だ。今から店を閉めて作製にかかる。あと金はいらない。」
「いいのか?」
「……こんな素材は初めてだ。だがこれは俺が作りたいからだ。気にするな。むしろこの素材を少しでもくれるならこれくらい当然だ」
「じゃぁ頼む」
「……任せろ」
シキはドワーフとの取引を成立させるとリゼットとアルトレアを連れて武器屋を後にする。
宿に戻ると既に夕食の時間になっており一階の食堂で食事を済ませると部屋へ戻った。
そして就寝して皆が寝静まった頃、リゼットは布団を被りながら眠れずに悩んでいた。
「(あ゛ー、眠れねぇー!)」
理由は簡単だ。
ギルドでシキがアルトレアの頭を撫でていたのを見ていたのが原因だった。
「(はぁ……俺も……頭、撫でて欲しかったのか……?)」
リゼットは想像してみた。
シキが自分の頭を優しく撫でてもらっているのを……。
それを思い浮かべた瞬間、自分の鼓動が速くなるのがわかる。それが実現できれば心が満たされる様な気がして、心のもやもやも晴れる気がした。
「(……シキ)」
リゼットは布団から出てベッドから降りると隣で寝ているシキの布団の中へと潜っていった。
そしてシキの身体に密着させると顔を胸元に押し付けた。
「(あぁ……これがシキの匂いか……良い匂い……身体も暖かくて……何だか……頭がくらくらしてきた……)」
リゼットは自分のしている事がおかしい事に気づきながらもシキを求める様に服を掴み、片足を両足で絡めてさらに身体を押し付ける様にだきついた。
「(何馬鹿な事やってんだ……俺は……)」
「……んっ……リゼット……か?」
「(なっ!?)」
シキは眠そうに目を擦りながらもリゼットがいる事に戸惑いっていたがそれと同時にリゼットの顔は真っ赤になってしまう。
「(嘘だろ……シキが起きるなんて……)」
「何でリゼットが一緒に……?」
「え、あ、……あのな……シキ。」
「……うん」
「(う~、この際言っちまえ!)……あのな……今日……ギルドでよ……アルトレアに……やったことを……してほしいんだ……」
「え?」
「……あっ……頭を……な……撫でて……欲しいんだよ……アルトレアの様に……」
「……頭を撫でればいいのか?」
「……うん」
リゼットの顔は熟したリンゴの様に真っ赤にさせて自分でも顔が以上に熱い事はわかっているようだが、頭を撫でてもらう事をお願いするのに緊張や恥ずかしさでそんな事は気にしてなかった。
シキはリゼットの要求に従い、優しく頭を撫で始めた。
「ぁ……」
「どうだ?」
「ぁぁ……」
もう既にリゼットは頭を撫でられて想像以上に気持ち良いのか緊張と恥ずかしさで固まっていた身体をリラックスした様になっていた。
「(……やべぇ……気持ちいいし……安心するな……これは)」
「なぁ……もう止めてもいいか?」
「……駄目だ」
頭から手を離そうとするシキをリゼットは服を摘まんで初めて両親や祖母以外に甘えたのだ。
「わかったよ」
やれやれと言った感じにシキは甘えん坊の妹ができたかのように優しく頭を撫で続ける。
「……なぁ、シキ」
「何だ?」
「このまま一緒に寝るからな」
「いや、自分のベッドで寝ろよ」
「……やだ」
「やだって言ったって……」
「……これからもこんな感じに一緒に寝てもいいか?」
「リゼット、いい加減に……」
流石に怒ろうと思ったシキは抱き着いていたリゼットを離そうとするがそれを彼女は頑なに拒んでしまう。それをすれば襲われてしまうのはわかっているつもりだが、リゼットはそれを分かって言っているのだろう。しかも顔を真っ赤にさせて瞳をうるうるさせているのを見てしまえば罪悪感があるのでシキは仕方がなく折れてしまう。
「わかったよ」
「……ありがとな」
リゼットはシキに頭を撫でながら子供の様にすやすやと眠りに入っていったのだった。
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