第三王女
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「……で、なにか言うことは?」
シキは現在、学園長室である一人の生徒に向けて少し怒った表情でいた。その目の前にいる生徒は中学生位の子供だ。しかし単なる子供ではなく、頭には申し訳ない程度の捻れた山羊の角の様なものがひょっこり生えている。その生徒も怒られてシュンとなっているが、オドオドした様子でこう答えた。
「も、モンスターを見たくて……」
というのが理由であった。
どうやらこの生徒は学園長ビティーカの配下らしいが、ビティーカからしたらこの生徒の保護者みたいなものだろう。
この生徒の名前は『ロード・メモリア』。
モンスター大好きな生徒であり、実は成績も上位に入るほど。
しかし、そんな優秀であっても授業をほっぽかすのはいただけない。同じ生徒ならばスルーするのだが、今のシキは一応教師である。それに、この学園は受けるのは自由なのだが欠席するかどうかは事前に教師へと知らせておかなくてはならないのだ。それをロードは以前にも一回怠っていたらしい。
シキは、授業を受けるかどうかは置いておいて事前に教師等に連絡すること。勝手に野生のモンスターが出る森へいかないことを説明する。授業を欠席する前に連絡するのは、大抵自分がしたい研究を行うことのみ許可されているのだ。
「ご、ごめんなさいなのだ……」
「まあ、無事で何よりだよ。でもね、学園長は君を心配していたんだよ?」
といった感じに説教するシキ。
だが、シキの説教はそこまで長くはない。
教師として長めになってしまったようだ。
そんな様子をリゼットは腕を組んで椅子に座りながらその様子を眺めていた。
「(おーおー、先生してるなー)……ん?」
すると先程から学園長ビティーカがリゼットを凝視していた。
それはまるで信じられない目で、何故ここにいるのだ?といった感じである。流石のリゼットも最初は足元で伏せている三匹の狼『リル』・『マナ』・『ミコ』の事だと思っていたが、その目線は自分に来ているとわかり、少し困った様子で言うのであった。
「なんだよ、オレになにか?」
「君は、どうしてここにいるんだい?それに髪まで切って……」
「は?アンタ何言って……」
「あ、でも……少し雰囲気が?」
どうやらビティーカはリゼットを誰かと勘違いしているらしい。大体は予想はつくが、シキはロードへビティーカと少し話があるから席を外してもらう。ロードも「わかったのだ」と言い残すと学園長室をあとにするのであった。
「学園長、彼女は……」
「リゼットだ。オレの旦那がお世話になってる」
「シキ君の奥さん、なの?(てか、奥さんいたの!?)」
「はい」
「そ、そーなんだっ。驚いたよ、あまりにも似てるから『リミリィ様』だと……」
「『リミリィ様』?」
「あぁ、教師である君には言っておかなくちゃねっ!」
ビティーカが言う『リミリィ』という人物は前にシリル達が目撃したリゼットに瓜二つの少女。年齢はリゼットより一つ下で、なんとこの学園に通う生徒の一人らしい。シリル達の話からは恐らく貴族だろうと推察していた。
だが。
「リミリィ様……いや、『リミリィ・カグヤ』様はこの国の王族なのさっ」
「王族!?」
「へー」
「厳密には第三王女様なんだけどねー……っと、噂をすれば」
まさかこのカグヤの王族、王女だというのはあまりにも予想外であった。シキは驚きを隠せなかったのだが、一方のリゼットはどこ吹く風である。正直王族など興味がないらしい。
ビティーカは話をする途中、扉がノックされた事で中断となる。
そして。
ーーーリミリィです。お話が……。
「あぁ、入ってー」
扉が開かれ、そこに現れたのは、銀の瞳に髪の長さが腰まであり袴の様なものを着用し、その上に学生服を羽織っている少女。腰には藍色の刀を差しており、腰まである髪は下で白いリボンで結われていた。
彼女がビティーカが言っていた『リミリィ・カグヤ』であった。
「学園長、お話が……って、貴女は……」
「んぁ?」
リミリィは近くに座っていたリゼットへ目を向けると、驚愕した表情で凝視していた。それに対してリゼットは「何見てんだ、ゴラァ?」の様な感じであるが、それほど怒ってはいない。むしろ先程聞いていたこととはいえ、これ程似ている事に思わず声を漏らしていたのだ。 どちらも驚愕し、困惑していた。
シキは予想していた以上に、髪の長さや雰囲気を除いて本当に瓜二つのリゼットとリミリィにを交互に見ながら心底似ていると思うのであった。
しかし、シキは気付かなかった。
「「「……」」」
「ん?……ぁ」
最初は何故か三人の視線がシキに向いていたのだ。
そしてやっと気付く。
どうやら、あまりにもリミリィ第三王女がリゼットと似すぎていた為に驚いた拍子に頭にひょっこりと狐の耳、そしてお尻から九つの尾が飛び出していたのだ。そのもふもふは三人の釘つけとなっていたのだ。まだこの国ならば狐の獣人でならばチラホラ見かけたことがあるので可笑しくはない。が、問題はシキの尾には九つの尾があること。気が抜けていたとはいえ、本来のシキならば有り得ないといってもよいほどの失態である。
「え、えっと、これは……そのぉ……」
別に隠してはなかったシキではあったが、特にビティーカとリミリィ第三王女の目が獲物を見るかの如く、怖がりながら必死に言い訳を考えるのであった。
本当に希少過ぎるシキさんのドジっ子、発動!




