真の姿
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前回のあらすじぃぃぃぃぃい!!!
『シキ VS ディー !』
『悲劇の英雄とは……』
『ひめちゃん……?』
のどんっ!ι(`ロ´)ノ
その瞬間、何が起こったのかレイティアはわからなかった。
気付いたのは、大事な繋がりが切れてしまったこと。
大事なもの、というのは今まで大事にしてきたディーの身体である。
目の前には忌まわしき『勇者』の娘、アルトレアが『白椿』を構えていたものの、本来ならその場を余所見するべきではない場面。
だが、レイティアはディーの身体、そしてシキの方へと向けてしまった。
そこで、本来ならば有り得ないものを目撃してしまう。
それはアルトレアと後ろにいたアルフィも同様であった。
何故なら、それはとてつもなく、大きい存在。
長い巨体は、山をも巻き付いてしまう程の長さであり、生命体として最高位に君臨する翼無き酷く痩せ細った龍であった。
避難していたエルフ達も突如現れた龍に呆然とするしかない。
しかし、同時にその龍に目を奪われてきた。
痩せ細った身体は元々の肉体から、あるべきものが抜けてしまい、萎んだ様にも見えるだろう。だが、その見た目にも関わらず、龍の眼力はそんな事など関係なくなってしまう程の存在感であった。
その龍の瞳の先には、儀式にも使われている様な黄金にあしらわれた巨大な槍が4つ、四肢を封じられるかの如く貫かれていたディー。その瞳には感情も痛覚も苦痛も何もない、壊れた人形の様にそのまま動かなくなっていた。貫かれていた傷口には本来ならば夥しい赤い……いや、黒々とした血液が流れるはずだが何一つその様なことはない。その代わりに、傷口から光の砂が宙へと微かに流れてきた。
「そんなっ……!?」
まさか全盛期のディーの身体が操っていたとはいえ一瞬でこの様な有り様となっていたことに驚きを隠せなかったが、それよりも更なる事態が起こる。
魔力が、消えていく……。
いや、喰われている。
「(……まさかっ、あの龍が!?)」
長年集めに集めた膨大な魔力が消えていく。
より正しくいうのであれば、あの龍に喰われているのが直感で理解した。
しかしーーー。
「(いつ!?いつから、魔力を喰らっていたの!?)」
既に半分を切ろうとしていた。
一瞬とはいえ、レイティアであろう実力者が今気づいたのだ。
だが、先程現れた龍が、魔力をこれほど一瞬で喰らうとは思えなかったのだ。
そしてレイティアはその龍の頭部に立つ人物を確認する。
そう、シキであった。
「起こしてすまないな"空"」
『ん、問題ない。むしろ、久々の外の空気、美味しい。ついでにさっきの魔力も美味しかったっ』
そう念話で語りかける痩せ細った龍。
その正体は、シキが所持していた『神刀"空"』。
真の名を、『無虚龍抜殻』。
これこそが、本来の姿。
巨大な東洋の龍の身体は、色が抜けたものであり、周りにある魔力を吸収している。
「そのモンスターは、なに」
「あぁ、すまないな。さっさと様を済ませる為に呼ばせて貰った。」
『ヤー。久々の登場。ここにあった魔力、ちょっと味見、美味。でもシキの魔力の方が美味……あとでチョーダイ、シキ』
「この件が片付いてからな」
そうシキの周りを取り囲む様に守護する"空"は念話で周りに全て聞こえる様に言う。そんな"空"の頭を撫でるシキはレイティアへと目を向ける。
レイティアはディーを動かそうとするが、巨大な槍がそれを妨害されてしまい動かすことは叶わない。
アルトレアもレイティアが隙を生み出した好機を逃すことなく、レイティアの影に向けて矢を放った。
「くっ!?」
影に矢が刺さった瞬間、金縛りがあったかの様にレイティアの動きが封じられてしまう。アルトレアが放った矢は『影止め』と呼ばれる単に相手の動きを封じるのみに特化した特殊な矢。基本的に相手を無力化するために生み出したのだ。
これでレイティアは詰んでしまった。
身体を動かせず、ディーの身体も動かせない。
加えて長年集めに集めた膨大な魔力も半分を切りかけていた。
もうどうすることもできない。
やっと。
やっと、ディーと一緒になれると思ったのに……。
ディーまでもが、拒絶されてしまった。
ああ、それは仕方がない。
何故なら、私が、私達が、彼を裏切ったのだから。
それが洗脳されていたとはいえ、裏切ったことに変わりない。
あの時に戻りたかった。
ディーと共に変わりない日常を暮らしたかった。
私だけでなく、私と同じディーを愛した彼女達も同じだ。
ただ……。
ただ、本当にディー会いたかった。
それだけなのに……。
あの『勇者』さえ、現れなければ……。
もう、どうすればいい。
何も、わからない。
もう、いっそう……。
全て。
全て消しちゃえば、いい。
そして……。
ああ、そうだ。
元に戻ればいいんだ。
地球を滅ぼしてしまおう。
そして、過去に戻ろう。
そして成功すればあの『勇者』が現れる前にもう一度地球を滅ぼそう。
いま、あの『勇者』がいた地球を滅ぼさなければ、この怒りは永遠に収まることはない。
二度手間になってしまうかもしれないが、過去に戻れるかはわからない。
せめて、地球、を、滅ぼす。
ホロボシテヤル。
何故、ここまで地球を滅ぼせるとレイティアは確信しているか。
それは、星を滅ぼす魔法を開発していたこと。
そして、地球という星が何処にあるかを、あるものによって間接的にわかっているからだ。
あるものというのが、この郷にある『世界樹』である。
地球が宇宙の何処にあるかを知ったのは本当に偶々であった。
ある時、『世界樹』を経由して理解したのだ。それは一回で理解することなどは不可能に近い。レイティアは地球が宇宙の何処にあるか、そして『世界樹』がどういうときに、地球を受信するのかを研究をした。
その結果、『勇者』がこの世界に現れる度に地球の反応が出るのだ。そして最後に地球の反応が出たときに、あまりにも反応が大きかった為に地球の場所を特定したのだ。
しかし、場所が何処にあるかはこの『世界樹』があってはじめてわかる。レイティアだけでは不可能なのだ。
地球を滅ぼす魔法を『世界樹』を大砲の様に充填し、地球へ放出すれば成功する。
地球は滅ぶ。
もう、準備は整った。
膨大な魔力は半分に切っているが、最低でも大打撃を与えるのは間違いない。
そして、レイティアは己の魔力と、今ある膨大な魔力で、地球を滅ぼす大魔法を生み出す為に、その大魔法を口にした。
「滅ぼせ」
彼女は地球を滅ぼす行動に移してしまった。
ただ一人の蛮者が、己の欲望を満たすために自分勝手にやってきた結果がこれだ。
人の人生をボロボロにしてもなお、この様な愚か者は欲望を満たそうと他の人々の人生を壊し、食いつくすのだ。
さて、君達はどう思う?
この様な現実が当たり前だと思うか。
変えなければならないと思うか。
答えなどはないのかもしれない。
しかし、己にとっての答えは持っていなければならない。
そんなものに答えなどない、と思ってはだめだ。
何が正しいのか、間違っているのか。
数多の人々が生きる世界で、大多数の答えを求めようとするのではなく、己一人の答えを持て。
その己の答えに自信を持て。
それを嗤うものは、その者達には己の答えを持っていない、まさしく愚か者である。
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