監視
何とか、間に合った……。
来週も、仕事も執筆も頑張るぞぉぃ!
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前回のあらすじぃぃぃぃぃい!!!
『遺跡!』
『巨大人型ロボット?』
『リゼットのそっくりさん?』
のどんっ!ι(`ロ´)ノ
日が落ちて夜が始まった時、『勇者』達が泊まっている『カグヤ』の王宮を監視するかの様にある二つの影があった。
その二つの影は王宮の警備兵達も気付かれる事はない。そもそも距離があるので無理はない。
「……特に問題はない、か」
そう小さく呟きながら、右目の金色の目だけを開く茶髪の華奢な少年は監視対象である『勇者』達を考えながら腰を落とした。その右目の金色は、まるでレンズの様に発動し、何キロも離れた場所から視ていたのだ。
そしてその少年の斜め後ろには腰まで伸ばされた赤髪に長身の美女がそこにいた。
共に黒いローブを着用し、夜の景色に紛れ込んでいた。
茶髪の少年、桜間葵は少し休憩という感じ右目の金色の瞳を閉じ、逆の左目を開いてその場で座る。
別に24時間監視している訳ではない。だが、様々な手段を用いて『勇者』達の監視をしているのだ。
例えば……。
ーーーピィっ!
ーーーピー!
ーーーピヨヨっ!
ーーーピピピ!
ーーーピッピィヨー!
「あっ、きたきた」
1羽の小鳥達が、葵の元へやってきた。
その数は5羽。大きさは手に収まる程度だろうか。小鳥達は葵が差し出された指にピトッと止まると、そのままピヨピヨと話すように鳴く。その小鳥達が語る内容は勿論『勇者』達の事である。
「そっか。うん、ありがとう。引き続き頼むよ」
ーーーピピッ!
ーーーピィピッ!
ーーーピヨー!
ーーーピ!
ーーーンピ!
5羽の小鳥達は了解!といった感じで再び『勇者』達がいる王宮へ飛びだった。
夜遅くに気付かれてしまうのではないかと思われるかもしれないが、そこは問題ない。
あの5羽の小鳥達は『ヴォ・ミクリ』と呼ばれるモンスター。
『ヴォ・ミクリ』というモンスターは、身体を周りの環境によって擬態させ隠れるのだ。しかもその擬態は、本当に景色と完璧に合わせており、加えて鳴き声も環境の音に合わせて発しているので違和感はないし、見つけるのも非常に難しい。
そして先程の5羽の『ヴォ・ミクリ』達は、元々はシキの[箱庭]出身で、葵が修行中に仲良くなり、そして『ティムモンスター』となったのだ。
再び葵は『勇者』達の監視をもう暫くしようとするのであったのだが、不意に背中から抱き付く様に赤髪に長身の美女、クリムが身体を密着させてきた。
「っ!?」
「ふむ、『勇者』達の監視だけ、というのはなんとも退屈だな。……葵、少し外は寒い。我が暖めてやろう」
唐突なクリムの行動に葵は先程の冷静さを失い、ドギマギしてしまう。少しは前よりクリムの大胆な行動に慣れてはいるが、それは完璧ではない。だが、やはりというか女性としての象徴が背中に押し付けられるのは男として嬉しくはあるが同時に恥ずかしいのだ。
[箱庭]で初めて出会い、そして互いに一目惚れをした。それから今に至るまでクリムの行動も徐々に誘惑的なものとなっている。それを葵は何とか理性を保って耐えてはいるが、正直我慢の限界は近い。
「……葵よ。『勇者』達が気になるか?」
クリムは少し拗ねた様子で抱き締めながら、葵を見下ろす。葵とクリムの身長差はあり、背の高いクリムが葵を見下ろしてしまうのは仕方がない。
ぶっちゃけるならば、クリムは葵が5羽の『ヴォ・ミクリ』と仲良くしていた様子に嫉妬してしまっていたりする。
『勇者』の中にはかつて葵の姉妹、そしてクラスメイト、教師の数名がいる。更に加えるとシキ……不知火姫希のクラスメイトと教師もだ。
クリムは葵自身から[箱庭]で二人きりの時に話を聞いている。葵の過去、裏切った母親、亡くなってしまった父親。そしてこの世界で役立たずとなり、クラスメイト、姉妹の裏切られた事も。
葵には、頼れると思える存在がいなかった。いや、いたが、その頼れる父親はもうこの世にはいない。
もう誰、一人。
だが、今は違う。
今の葵には主であるシキやその妻であるリゼット、アルトレア、スミリア。同じ従者であるシリルにリラ、マリン。そしてクリムがいるのだ。
しかし、だ。
クリムは葵と同じ人間ではない。
龍だ。
だからこそ、わかる事もあるしわからない事もある。
今の葵はどう思っているのだろうか。
我よりも義理の姉妹達が心配なのか?
それとも、同じくらすめいとである『ゆうしゃ』達か?
その中に気になる女子でもいるのか?
そんなの……嫌、だ。
こんな感情はクリム自身、初めてだ。
前にリゼット達に尋ねたところ、それは『恋』ではないかと答えた。それが何時しか『恋』から『愛』へと変わるのだと。
そう言われてもわからないクリムであったが、今はこの感情こそがそれなのだと感じる。
無意識に、葵を抱き締める力を強めていたのだがそのクリムの力で負けてしまう葵ではない。
内心不安がっていたクリムの手を優しく手を添える葵。
そして葵は、その手を掴んでクリムの顔を見上げた。
「クリムさん」
「なんだ?」
「……僕が気になってしまう人なんて貴女しかいませんよ」
「~~~っ」
不意討ちに困った様な、照れている様子の方が勝っている葵の発言に衝撃を受けてしまう。
もう、告白である。
誰もがまさか、と思うだろう。
しかし、この発言は葵にとっても覚悟を決めた発言でもある。この告白の様な発言を察してくれるかは不明であったが……。
クリムは何とか意識を保ち、そのまま葵を顔を近付けていく。
一方の葵は抵抗する事も、慌てる事もなく受け止めようと動くことはない。
そして、葵とクリム。
二人の唇が、触れるーーー。
その筈だった。
「っ?」
互いの唇が、触れる直前に葵は突然、クリムを抱き寄せたのだ。抱き寄せたというより、髪を触るように頭を手で己の胸に。
元々背か高かった為にクリムは葵に身体を預ける形に持たれてしまうのだが、葵はよろける事はない。
クリムは何が起こったのか不明であったのだが、葵は抱き締めながら何処かへ向けて目を向ける。右目の金色の瞳も開眼しながら、その向ける何かに向けて何処からともなく現れた銀色の銃を片手で構える。
その銃はトンプソンセンター・コンテンダーというもの。
葵はこの銃を『ジルヴァラ』と呼んでいる。
『ジルヴァラ』からはまるで『聖剣』の様な光のオーラが現れている。そう、その『ジルヴァラ』は『聖剣』ど同様の力を有した現代風の『聖なる武器』である。元々は葵が試行錯誤、シキ達からのアドバイスもあって作り上げた自家製の銃。しかし、それだけでは『聖剣』の様な力を有することはない。その『聖剣』と同様の力を有しているのは、シキの[箱庭]で出会った鉛色の『原点』。
『ジルヴァラ』は銃でありながら『原点』。
しかし、今では銃として形を有していないのだ。
「……そこにいるのは誰ですか?」
先程の様な柔らかな表情ではない、冷酷な表情でここから離れた家屋の上にいるその何かへ問う。しかし、そこには何もない。何処からどう見てもそこには何もいない筈。
しかし、クリムは葵が睨み付けるその家屋の上に違和感を感じたのだ。それは葵が言ってから後から気づいたのだが。
先程から風が強くなった感覚を抱いていた。
「……っ!」
葵は一瞬、敵意を感じ躊躇なくその家屋の上へと引き金を引く。そして本来なら銃声が響く筈だったのだが、突如暴風の様な凄まじい風音と風力によって掻き消された。
「……」
「風を操る、ですか」
葵はハッキリと見えていた。
その家屋の上にいる何かを。
その何かは、何とも例えがたい。
例えるなら……名状しがたい、存在。
その存在は、風を操る何かだ。
人なのか、モンスターか。
魔族か、それとも……。
「葵」
「注意してください、あいつは……何か、恐怖を感じます」
葵は素直にその存在に対しての感想を、恐怖だと答える。
それはクリムも同様であった。
確かに何かがいる。それは葵ほどに鮮明に見えている訳ではない。だが、恐怖を感じるのだ。
相手の実力もわからない。
もしかすると、強いのかもしれないし、弱いのかもしれない。
あれはあの何かの能力なのだろうか。
相手に恐怖を抱かせる能力を発動しているのかもしれない。
「……」
「っ!?」
「これは!?」
再び暴風が巻き起こるのだが、その轟々しく吹き起こる風はその何かを中心に発生していた。それは明らかにその何かが起こしたものだろう。
葵とクリムは警戒心をより高めるのだが、すぐにその暴風はおさまる。
そして、その暴風の中心になった場所には……。
「H0ぅ、こnO6界8、オM4RoイyぅG6、ナa?」
そこには、古びた黄色いローブと深々とフードを被った人形のなにか。フードの隙間からチラチラと白銀の仮面が見えている。
しかし、そのローブと仮面はまるで着けているのではなく身体の一部にも見えるのだ。
謎の言葉を、声を発しながら、その何かは葵とクリムと対峙するかの様に身体中から風を放出するのであった。
【さくしゃからのじかいよこくぅ】
さてさて、この次の次の話では、『大樹の郷』で急展開?ですね!
次の次の話でですよ?
もしかすると、皆様が思っている様な展開ではないと思われます。
そしてかなり前の話しと繋がっていく……筈です!
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