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大書庫館

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

前回のあらすじぃぃぃぃぃい!!!


『シリアス……』


『エルフの国?』


『一体何が……』


のどんっ!ι(`ロ´)ノ




大食い大会の結果は、予想はしているだろうがシキの圧勝であった。他の参加者には図体の良い人や、大食いの者達をもいたのだが、シキの食いっぷりには届かなかった様だ。といっても、シキはただ出された料理の数々を味わって食べただけだったのだが。


例えば大きなステーキはただ大きいのではなく、そのステーキの中には美味しい肉汁が溢れており肉質も柔らかく、タレに浸けていたのか味もしっかりしていた。他には丼物があり、日本で食されておる米より少しサイズが大きく形が異なってはいるが、よく上に乗っている肉のタレがよく染みていて美味。しかも野菜の中には炒めた時に滲み出る出汁がスパイスの効いた、ご飯が進むものだったり、その米を生地にしたピザも地球で食べた物よりまた異なった美味しさがあるものであった。


かなりの料理数であったが、シキに続いて最も食べていたのが娘であるアイリスだ。アイリスも非常に美味しそうに食べているので観戦者の殆どが自分も食べたいなぁ、と思っていただろう。しかし、かなりの量を食べた筈なのだが、シキとアイリスの体型は全く変化無しだ。二人の胃は何処かの異次元に繋がっているのかと誰もが思う程に変化無し。


優勝はシキ、準優勝はアイリス。


与えられた景品は、優勝者には賞品としてBランクモンスターである牝の『クーヒェイト』一体を。準優勝には料理にも使われたこの世界の米『コモチヅキ』が入った俵を1つだ。


『クーヒェイト』は、Bランクモンスターではあるが、それは希少性だからである。実力的にはCランクは無いだろう。しかし、『クーヒェイト』というモンスターは牝から取れる母乳は濃厚で栄養価が高い。貴族や名のある商人ならば『クーヒェイト』を飼育して個体数を増やしていたりするのだがこれが中々難しいらしい。恐らく地球で飼育しても難しいだろう。賞品として貰ったこの牝の『クーヒェイト』は偶々野生で捕獲したらしく、逃げ足は速かった様だ。話によるとカグヤではなく、他の国でらしい。そしてこのカグヤへとやってきたということだ。この大食い大会の主催者である店長は賞品を何をするか考えていたのだが、『クーヒェイト』を見た瞬間、これだ!と思って買い取った様だ。


『クーヒェイト』は見た目は黒色の牛で、地球のよりも少し大きいだろうか。頭には山羊の様な捻れた角を二つ生やしており、体型はずっしりしている。他のティムモンスター達を見ても動じない事から肝は据わっているのだろうか。


大会は無事に終幕し、一段落かと思われたが観戦者達がシキとアイリスが美味しそうに食べているのを見て今から自分達も食べる!という事で何時もより繁盛しているらしい。既に行列も出来ているのでどれ程の時間が経っても大会で出された料理を一口でも多く食べたいと待っているのだ。


そんなこんなで、シキ達は『クーヒェイト』を連れ、『コモチヅキ』はシキの[空間庫]へと収納している。まあ、こっそりしたので他の者にあの俵は?と聞かれれば思いからある場所に預けてると言っている。


他の店でもシキ達は食事をしたのだが、シキとアイリスは先程までにあんな大量の食べ物を食べて尚、何の問題もなく食べる姿に従者のシリルと葵は驚いていた。しかし、シキとアイリス、親子似てなのか別に食いしん坊な訳ではないらしい。何時もは標準の食事で十分だが、それ以上に食べるのも可能だというだけ。今回はノリで、といった感じだ。マシロはアイリスの口についた料理のタレを綺麗にしながら美味しそうに食べているアイリスを嬉しそうに眺めていた。


そして現在。


シキ達はこの『カグヤ』に存在する図書館へ寄っていた。


図書館というより、大書庫館。本の数は多い為にその館全体が大きく高いのだ。階数は5階。3階までは一般で開放している。その一階でシキは集めた本を近くにある読書スペースの机へ置き、情報収集をしていた。



「『大樹の郷』、ねぇ……)」



シキが調べていたのは『大樹の郷』と呼ばれる首都『キョウラク』から離れている。その『大樹の郷』というのは『エルフ』の郷とも呼ばれている程に多くのエルフ達が住まう場所なのだ。


何故、シキが『大樹の郷』を調べているのかというと、その切っ掛けは今[箱庭]の家で女子会をしているリラなのだ。元々、リラとマリンがあの『境界都市マージナル』に居たのはアルトレアを探す為にその『大樹の郷』へと目指していたらしい。話を聞いたのだがそこはかつてアルトレアの母親の生まれ故郷ということだ。アルトレア本人はその事については初めて知ったらしい。生まれて直ぐに無くなってしまったのだから仕方がないのだろうが。


この事もそうだが、シキが調べているのはそれだけではない。


それは、帰還方法だ。


恐らく『大樹の郷』には『世界樹(ユグドラシル)』が存在しているだろうと考えているのだ。あくまで可能性の話なのだが、帰還方法の手掛りとなるかもしれない。『世界樹(ユグドラシル)』とはその世界の空間を安定させる役目を担っている。シキはその世界の『世界樹(ユグドラシル)』の力を貸してもらう事で元の世界へ帰還出来るのではないかと考えているのだ。しかし、それは簡単では無いので今すぐということは無理があるが。


その『大樹の郷』は全てエルフ禁制というわけではないが、神聖な場所にはエルフのみしか入れない場所もあるらしい。恐らく『世界樹(ユグドラシル)』がある場所なのだろうか。『大樹の郷』は『カグヤ』の首都『キョウラク』からは少し離れているが行けない距離ではない。一日もあれば着くだろう。



「とーさま」


「ん?どうした、アイリス」



ここは大書庫館なので小さめの声でアイリスが声をかけてきた。シキの座っている膝上にアイリスとマシロが座っている。一応座る場所はあるのだが、二人はその場所がいいらしい。本当に父親大好きなのだろう。他の利用者もチラホラいるのだが、女性からは静かに絵本等を読んでいる様子が微笑ましそうに見られているが、恐らく姉妹か母娘という認識をされているのは内緒である。一階では子供達も本を読める様に多少の話し声は大丈夫らしい。それが気になる場合は2、3階にある場所なら静かなので大抵はそこで調べものをしているのだ。


声をかけてきたアイリスは絵本を持ちながらシキの顔を見て、その次に胸元にあるネックレスの様な物に注目していた。恐らくこれが気になるのだろうか。首から下げられているのは鉱石ではなく、白い毛束が纏められた少し変わったものだ。これが鳥の羽根ならしっくりくるかもしれないが。



「これなに?」


「あぁ、これかい。これは……お爺……いや、曾祖父さんから貰ったものなんだ」


「ひいじいさん?えっと……とーさまの……?」


「パパのお母さんのお父さんだよ」


「そーなんだっ。これ、きれいだねー」


「そうか。なら帰ったらお願いしてみようかな?」


「うんっ」


「ま、ましろも~」



マシロもどうやらそれが気になっている様だ。これはシキのみしか付けられない様になっているので譲りたくても譲れないのである。なので『あちら』の世界へ戻った時に頼んでみるしかないのだ。


葵とシリルも近くにいるが、二人に何か少しでも手掛りになりそうな資料があるか探して貰っているのだ。その中でも『勇者』に関する資料は何冊か発見できた。


中でも『悲劇の英雄』という本では中々胸糞悪い内容の物語だ。端的にいうと異世界から来た『勇者』が悪魔の様な非道を犯す蛮者ということがよくわかる内容だ。『悲劇の英雄』である主人公の恋人達だけでなく、その国の人々を全て魔法を掛けて、その『勇者』と名告る蛮者は主人公の立場や存在を自分の物にしたという。恋人達はその蛮者と結婚し、主人公の功績全てを自分の事の様に褒め称えられかなりの地位を手に入れたらしい。一方の主人公は蛮者によって『魔王』というこの世の全ての悪者に仕立て上げられ、最終的にはその蛮者と奪われた恋人達の手によってこの世から去ってしまう。


しかし、話はこれで終わる訳ではない。


その魔法も氷が溶ける様に解かれると、事態は急変するのだ。


主人公だと思って結婚した相手が見ず知らずの男。しかも黒髪黒目のだ。子供も授かっていたが、彼女達にとってみれば悪夢を見た気分だったのだろう。その蛮者の魔法によってこの様な取り返しのつかない事態に彼女達は怒り狂い、国民や王に貴族達はその蛮者を捕らえたのだ。しかし、彼女達には、既にこの世に主人公は居ない。


彼女達は嘆いた。


主人公の恋人だった、その国の王女は生きる気力を失ったかの様に倒れ、幼馴染みだった女はその手で主人公を殺めてしまった事に叫び、泣き続けていた様だ。元奴隷だった犬の女は何時か主人公が自分の元へと帰ってくると信じ、初めて出会った場所で待ち続けた。エルフの女は、泣く事もせず、心を失った、圧し殺して、罪のないあの蛮者の子供を育てていた。いや、あの蛮者ではなく、主人公との子供と思って……。ダークエルフの女は主人公以外の男に身体を許した事を自分自身許せなかったのか、自ら命を断とうとするのだが、同じ同族に止められたがそれからも何度も自殺を繰り返していたらしい。


その主人公の恋人だったその五人の女性は未だに主人公を求めてこの世を彷徨っていると記されている。これは単なる物語ではなく実話だということに酷く胸糞悪さを更に感じさせるのだ。


だが、異世界から現れた『勇者』が悪いという本は多くあるが、それ以外に村を救った、人々を救ったとされる『勇者』もいたのは確かな様だ。異世界の『勇者』にも良い人物はいたかと思い少しホッとするが、正直圧倒的に悪者の『勇者』が多い。子供向けの絵本でもそういうのが多いのだからこの国の者達は少なからず『勇者』は良い人物、というのは信じるのは難しいのかもしれない。


さて、この国に『勇者』が来たのだが、その『勇者』達の誰かが万が一な事をすれば、と考えると少し頭痛を感じてしまうシキ。しかし、だからといって助ける気は正直無い。あの『覇王』……いや、『金剛』については特別だったが、それ以上は彼等の責任となる。あまり首を突っ込む気にはなれないが……。



「むにゅぅ……」


「なのぉ……」



どうやらアイリスとマシロの二人はシキの膝上に乗り、頭を胸に乗せて眠ってしまった様だ。昼食後なので眠たくなるのは仕方がないので、時間帯的に無理も無いだろう。そんな娘二人を落とさぬ様に手に持った本を机上に置くと暫く抱き締めてゆっくりと時間が過ぎるのを感じるのであった。



「(……リゼ達、楽しんでいるかな?)」





【さくしゃのつぶやき~】


ぶっちゃけ、『悲劇の英雄』の最大の被害者ってその子供達なんだよねぇ~。


実話じゃなくても、これは胸糞だよね。それが好きな人なんている……のかなぁ?


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