勇者は置いといて宿に行こうっ!
前回のあらすじぃぃぃぃぃい!!!
『昼食!』
『シキの家族っ!』
『従姉妹も!』
のどんっ!ι(`ロ´)ノ
公園での昼食を終え、片付けた後にシキ達は宿探しをしていた。
勇者とかこのマージナルに来ているのは気配でわかったが、優先順位としては今日泊まる宿を探す事を第一として都市の街並みを歩いている。シキの両手にはアイリスと一緒に手を繋いで歩いている。リゼットはマシロと。スミリアは両手にスライムのラヴィを抱えている。アルトレアはマリンと会話をしている。積もる話もあるだろう。
葵は服から顔を出しているクリムを撫でながらも護衛として警戒もしながら歩いている。リラはというとシリルと何やら話している。どうやら闘技場での戦いについて根掘り葉掘り質問している様だ。まあ、リラにとっては本気ではないとはいえ『剛剣』として初めて敗北。だが、自分より強い相手だからこそ彼女はまるで対等に話し合えるシリルに色々と戦闘面について聞いていたのだ。……彼女自身、シリルに対して意識をしているので積極的にアピールしている様にも見えるが。シリルは馬車を引く『ロット』を引き連れながらもリラの質問に受け答えをしていた。
シキ達が宿探しの為に向かっているのは冒険者ギルドである。いい宿は冒険者ギルドの近辺にある事が多いらしい。これはリラから聞いた話である。リラも前に旅をしていたらしく何度かこのマージナルに訪れている様だ。
「(……何か、勇者達が冒険者ギルドにいるんだが)」
「どうしたの、とーさまっ?」
「いや、何でもないよアイリス」
不思議そうにアイリスが声をかけると考え事をしていたシキは笑顔で優しく微笑む。それを見たアイリスも一緒に笑顔になって繋いでいた手に自然と力が入った。それに気付いたシキも応える様に手を握り返す。
だが、正直な本音は『勇者』と遭遇したくはない。
「(最悪……『シャドー』の姿で何とかするしかないか)」
遭遇したくはない、が、同じ同郷なので何かあれば自分が解決しなければならないと思っていた。いや、ここまでする義理は無いかもしれないがその『勇者』の中に数名知った者がいたのだ。
だからといって自分が行くのも色々と面倒だと思っている。加えて変装時の『レッド』や『クロ』は冒険者ランクSSとSSS。その変装時はなるべく頻繁には出したくはない。よっぽどこの都市が危険に晒される限りは。
葵も『勇者』の気配を察知していたらしく昼食中にシキに話していた。
自分のクラスメイト達もいる、と。
それを聞いた時、シキは昼食後シリルと葵を着替えてもらった。
葵は『闇紛れの仕込みコート』と『闇黒のショートパンツ』。シリルは『白蓮のシャツ』と『蒼天のオーバーオール』を着用することとなった。どれもシキのお古ではあるがいい匂いらしくシリルは受け取ったその服を猫の様にスンスンと可愛らしく嗅いでいたのは葵しか知らない。葵は輻湊だけでなく、黒髪黒目では気付かれてしまうので茶髪に茶目に変えている。
そして、『シャドー』。
シキに対してこの様な疑問を思った事はないだろうか?
何故変装が得意、長けているのだろうか、と。
『ホワイト』の時だけではなく、『レッド』・『クロ』・『六華』等々も完璧な変装でなりきっており誰もが違和感に思わない。
初めてシキが変装をしたのはまだ『あちら』の世界の軍に所属していた時だ。
その初めての変装こそ、『シャドー』である。
髪型や髪色・目色・声・雰囲気・服装等を変えて変装をしてきたが『シャドー』の場合は体格や存在感をも一変するものである。中身はシキではあるが、誰もがシキとは思わない程の初代の変装である。
なら、最初からその『シャドー』に変装すればいいのではと思われるのだがそれには理由があるのだ。その『シャドー』の変装をしてしまえばあまりの存在感によって普通の人は失神してしまう程、その姿が恐ろしい。別に何をした訳でもないのだが。
まあその『シャドー』は軍用の変装であり、上の上司である元帥の懐刀とも呼ばれる存在でもある。もう数年も『シャドー』の変装はしていないだろう。
そんな事を考えていると、スミリアに抱えられていたラヴィはテレパシーでシキに一応止めておく様に言う。
"弟よ。止めるのだぞっ、『シャドー』に変装するのは。恐らくアイリスとマシロ……泣くぞ?"
"っ!そうだな、『シャドー』は止めておこうっ"
"親馬鹿だな……。だが、あの『シャドー』は何だ?余も一度目にした事はあるが、何かモデルでもあるのか?"
"モデルは……冥界主神『ハーデス』様ですよ"
"あ~……納得したぞ"
『シャドー』のモデル。
それは冥界主神『ハーデス』という神である。だからといって恐ろしいのは『ハーデス』であるが。
「ねーねー、とーさまっ。あのばしゃはなにー?」
「何なのかなー?お父さんもわからないや(王族の馬車か。恐らく『勇者』達が乗ってきたんだろう。馬車には気配はない……冒険者ギルドにいるのか)」
アイリスは冒険者ギルド付近に止めてある数台の馬車を不思議そうにシキに聞く。シキは分からない素振りをしていたが、明らかに王族のマークがある馬車なのはわかった。しかもその王族のマークはエルディンテのもの。とすればその馬車には左記ほど気配を察知した『勇者』達が乗車していたのは間違いないだろう。その証拠に冒険者ギルド内にその『勇者』達の気配がある。
「(朝比奈の気配もある……うん。いたって健康そうだな……あ、小早川先生もか。うーん。何か今であったら面倒な事になりそう……)」
という事でシキ達は『勇者』達をスルーして冒険者ギルドから徒歩五分にある豪華な宿屋を発見する。もうホテルではないかと思ってしまう程の巨大な建物だ。高さは冒険者ギルドと大差無いが幅の広さは他の宿よりよ圧倒的に広い。
リラが言うにはその宿屋はマージナルでは高級であり、評判もいいらしい。見た目からしてみて設備も非常に良さそうだ。
チラリとアイリスとマシロを見てみると元気そうにしてはいるが少し眠たそうにも見える。あまりこれ以上宿探しは負担になると考えてこの宿、いやホテルに泊まる事となった。馬車を止めるのは宿の横にあるので自由に止められる様だ。馬車に積んでいた荷物はシキがこっそり[空間庫]へと収納する。ロットも[箱庭]へと戻ってもらった。ロットは[箱庭]にいる方がいいらしい。誤魔化すのは簡単であった。
「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」
「大人8人、子供2人の計10人だ。あとティムモンスターも2体いる。一泊で頼むよ」
「畏まりました。では…そうですね。寝室が4つある広い部屋がありますが……」
「うん。じゃ、それで」
「承りました。御食事はどういたしましょうか?お作りも出来ますが御部屋にはキッチンもありますのでお客様自身調理も可能です。一食につき御一人様小銀貨1枚となりますが……」
「いや、食事はこっちで作るよ」
「了解しました。料金は一泊の部屋代となりますので、中金貨5枚となります」
シキは懐から中金貨5枚を受付に渡す。
受付からはその部屋の鍵を受け取ると後ろにいたシキの妻子達以外のメンバーは呆気に取られた表情をしていた。どうやら中金貨5枚を簡単に支払うのに驚いていたらしい。まあ、シキ達からしてみれば殆どお金は使う事は無いので貯まっていく一方である。下手すればそこらの貴族よりもお金持ちになっているだろう。
そんな事をあまり気にしないシキはアルトレアの母親的存在であるリアもいるのでちゃんとした所に泊まろうと考えたいた。後、昼食時ではあまりリラはアイリスとマシロの交流も無い。恐らく子供相手にどうすればよかったのかわからなかったのだろう。ならば広い部屋で泊まってリラからしてみれば孫娘の様な存在であるアイリスとマシロと触れ合って欲しいと思っていた。
そうこうしているうちに、今日一泊する部屋に到着し鍵を開けて入ってみるとそこは驚くべき部屋であった。
その部屋は受付けでも言っていた様に非常に広い部屋であった。
部屋は広いリビングがあり、そこにはふわふわなソファーやクッション等々ゆったり出来る家具が多々あったのだ。部屋も調べてみると確かに4つの寝室もある。恐らくこれは貴族だけではなく高ランク冒険者達が集団で泊まれる様にしているのだろう。キッチンもあり、その調理器具も充実していた。辺りも綺麗で非常に過ごしやすい空間だ。
もう、大きな家である。
別荘でも通用する程いい部屋だ。
日本でもここまで広く綺麗な部屋はそうそうないだろうかとシキだけではなく葵も感じていた。
「わーいっ!ひろいー!」
「なのーっ!」
[箱庭]の家も中々なものではあったが、ここまで広くはない。なのめアイリスとマシロも驚きながらも目をキラキラと輝かせていた。
シキはリビングの中央辺りにある大きなクッションへとゆっくりと俯せのまま突っ込んだ。はたからみてみれば会社の残業を終えてやっと帰ってきたがベッドに身を預けて力尽きてしまった、という風にも見える。
「ふぁぁぁ~……」(ポンッ!)
「「!?」」
何やら電池が切れたかの様にだらけてしまったシキだったが、欠伸をした瞬間に『獣人族』へと変身してしまった。狐耳と狐尻尾を見たリラとマリンは驚くしかない。
説明はシキがすればいいのだが、だらけモードになってしまっているのでアルトレアが代わりに説明することとなった。その説明を聞いた二人は驚きはしたが何やら納得したらしい。
「とーさまっ!」
「なのっ!」
だらけてクッションに俯せになっていたシキの腕の中へと潜り込む様に入ってきたアイリスとマシロ。楽しそうにはしゃいではいるが眠たいのかシキに寄り添う。シキはその娘達二人を優しく抱き締めながら再び欠伸をする。
「(何だろ……眠たくなってきた……)」
「シキ、暫く眠ってろよな。オレは横で編み物やってっからよ」
「ボクもシキさんの横にいますねっ」
「わ、私もっ!」
「いいよ~……」
シキの妻子達はシキの元に自然とくっついてそれぞれがゆっくりと寛いでいく。ラヴィといえばポヨンポヨン身体を弾ませながら定位置のシキの頭へとちょこんと乗る。そしてシリル達にもゆっくりするように伝えるとシキは瞼を落として軽く昼寝をするのであった。
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……さて、やるかっ!(え、何を?)




