勝者は……
前回のあらすじぃぃぃぃぃぃい!!!
『お待たせ!』
『勇者達!』
『どんまーい!』
のどんっ!ι(`ロ´)ノ
「な、なんだよ……ありゃぁ……」
「すげぇ……」
「何者なの……あの子は……」
観客席で観戦していた冒険者達は今訓練所で繰り広げられる戦いに釘付けになっていた。釘付けになっていたのは冒険者達だけでなく、ギルド職員達もだ。
「はぁぁぁあっ!!!」
「ふっ!!!」
両者の剣と剣がぶつかり合う音と同時に衝撃も観戦席にも伝わる。
リラが力強い一撃を浴びせていくのだが、それをシリルは完璧とも言える程に見事な剣捌きで反らし流していた。リラは剣の一撃の強さや速さを高めていくのだが、それに対応するシリルに驚愕する。だが、シリルもリラの攻撃を捌くのは中々骨が折れるらしく攻めいる余地が無さそうであった。
この様な戦いに両者の剣はどちらもよく折れないものだと思うだろう。二人共、剣を[強化]しているので何度も打ち込もうと、受け止めようと折れる事は無いのだ。
「リラ様の剣についていけるなんて……」
かつてアルトレアがアルトだった時の使用人、マリンも冒険者やギルド職員同様に驚いていた。マリンはリラの立っている後方の観客席でシリルという存在に目を疑うしかなかったのだ。何せ、リラと共に行動をしている中で彼女の剣に耐えうる存在は目にした事がなかったのだから。
「ふんっ!」
「くっ!?」
上から降り下ろされたリラの剣をシリルは防ぐ様に剣で受ける。しかし、その一撃が思った以上に重い衝撃が走ったのだ。体勢が崩れると思ったシリルはリラ本体ではなく、リラが持つ剣に向けて二撃、目にも止まらぬ速さで剣を振るう。
初めての反撃だったがリラはそのシリルの剣が見えていたのか見事に弾き返したのだ。
シリルは弾かれて後ろへと下がってしまうが、そのままアクロバティックな動きで更に後方へと距離を離すように後退する。
シリルとリラの間に開いたのは約50メートル。
リラは追うことはせずに、その場で剣を片手で担ぎながら言う。
「なかなかやるな……ここまで持ち堪えた者はお前だけだぞ。しかも全てを防ぎ、捌くとは……芸達者な奴だな。まあいい。さあ、距離を取ったのは魔法でも撃つのか?私は一向に構わないが……そうだな。あの『魔剣』でも出しても構わんぞ?」
「流石『剛剣』だねぇ……一撃一撃が重いなぁ~もぅっ!でもまぁ……貴女の剣、[強化]しているけど、そろそろ耐えきれないんじゃないかな?ほら、罅入ってるよー」
「……む、確かにそうだな。だがそれは貴様も同じではないか?」
「にゃ?」
どうやら両者の剣は[強化]をして頑丈にしていてはいたものの幾度となく打ち合いでボロボロになっている。しかし、どちらの剣も武器としての役目はしっかりと全うしているだろう。だが、剣は武器であり、道具でもあるのだが壊れかけていると知りながらも使うのはしたくは無いのか両者はその持つ剣に感謝しながら鞘へと納める。
すると、リラは地に刺さっていた超大剣ロンハルトの柄を持つとそれを抜き取った。その抜き取り、肩に担いぐとその動作で風が切る音が辺りに響く。
観客席からもリラが超大剣を持った事に動揺の声がする。まさか、『剛剣』が本気を出すのではないかと。
超大剣ロンハルトを持った事にシリルは両手が手ぶらな状態で言う。
「あれ、その剣使わないんじゃなかったっけ?」
「すまんな。よく考えた結果、圧倒的な力でお前を倒す事に決めたのだ。嫌なら素手にするが?」
「ふーん。まっ、いいよ。なら、おれもそれに相応しい武器で望まないとねっ!」
シリルの手に魔剣テルヌーラが現れる。
魔剣とはいえ、やはり闇のオーラが陽炎の様にゆらゆらと揺らめく。しかし、その闇はシリルを守るかの様な優しいものだ。
それは魔剣とされるその剣がシリルを完全に主として認めているからこそだろう。そんな様子に驚きながらもリラは超大剣ロンハルトを担ぎ、目だけを観客席にいるシキにチラリと横目をしていた。
リラは圧倒的な力でシリルを倒すだけではなく、その力をシキに見せつけようとしていたのだ。これはある意味シキ本人に対する宣戦布告ともとれるかもしれない。
「(ん~、でも、あのバカでかい剣の一振りはこの状態じゃぁきついかなぁ~。なら……)」
シリルは右手に魔剣テルヌーラを持ちながら身体全体に薄い闇の衣が纏っていく。その闇の衣は徐々に形を固定していくと、黒スーツの上から黒い鎧へと変化していった。
「何ッ!?」
「お、おい、あの黒い鎧は……」
「なんてことなの……っ。魔力で出来た鎧っ!」
「嘘だろっ。あんな芸道、出来るやつなんていたのかっ!」
そのシリルの鎧姿にリラだけではなく、観客席にいた実力派の冒険者達は思わず驚愕し、絶句していたのだ。
シリルが纏う鎧は[闇夜]で具現化したものである。一部の冒険者はそれは単なるハッタリであり、何らかの魔法で生み出された幻か何かだろうと思っているだろうか。シリルが行ったのは、伝説や神話でしか語られない芸当をやってのけてしまったのだ。それには流石のリラも驚くしかない。
冒険者ギルドの職員達も希少な逸材だとわかったのか何名かが慌てて冒険者ギルドの方に繋がる観客席の出入り口へと消えていった。恐らく此処の冒険者ギルド最高責任者であるギルドマスターを呼びに行ったのだろう。
「(まさか、魔力で鎧を具現化したのかっ!加えて凄まじい気力……只者ではない少年だとは思っていたが……これ程とは)」
「ーーーじゃぁ、いくよッ!!!」
「ッ!?」
シリルは鎧姿のまま、構えもせずに自然体の状態で前へと突っ込んでくる。これがシリルの本気なのかリラはその一瞬の気迫に負けてしまい超大剣ロンハルトで防御の構えを取ってしまう。本来ならここで迎え撃つ様に攻めるのだが、リラの行動は無意識な行動だったのだ。
ーーーガギィィィイイイ!!!!
「クッ、はぁぁあっ!!!」
降り下ろされたシリルの魔剣テルヌーラを超大剣ロンハルトで受け止めるとそれを押し返した。そこから一瞬で横へと凪ぎ払うのだが超大剣ロンハルトの重さを感じさせない迅速な速さだ。だが、リラの超大剣ロンハルトを扱うのは軽そうに見えるが凪ぎ払う瞬間に風を切った音に遅れて剛風が発生する。
しかし、だ。
「な、なにっ!?」
シリルはそのリラの攻撃を避けていたのだ。その避ける様は、まるで風の流れに身を任せる木の葉。リラが凪ぎ払った瞬間に真上へと飛躍していたのだ。
「隙ありーっ!」
「っ!?」
真上から落ちてくるシリルは魔剣テルヌーラを構え、横へと振り切ったリラへと迫る。
リラは凪ぎ払いが空振りとなり振り切った体勢となっていたが、器用に身体を動かして落ちてくるシリルに向かって下から上へと斬り上げる様に超大剣ロンハルトを振るう。
このままではシリルはリラに攻撃は叶わずして超大剣ロンハルトの餌食になってしまったとシキ達を除いた観客席の者達は思っていた。
だが、この流れになることはシリルもわかっていたのだ。
「よっとッ!?」
迫り来る超大剣ロンハルトをシリルは魔剣テルヌーラを使って防ぐ。だが、防ぐだけではなくそのまま滑らせる様に避けながら地へ着地したのだ。テクニシャンな剣の使い方をするシリルにリラは目を見開きながら驚いていた。剣術だけではなく体術、身体の使い方。そして剣を武器や道具としてではなく、自身の身体と一部として完璧な技術なのだ。加えて一つ一つの動作に癖が無く、形に填まらない動き。攻撃前の予備動作が殆ど無い為に次の一手がどう来るかが予測がしにくいのだ。
そして着地し、立ち上がるのと同時にリラの首元前へと魔剣テルヌーラの尖端を突き付ける。
「チェックメイト……だよね?」
「……っ」
剣を突き付けたままシリルはリラににっこりと余裕の表情で言う。リラは剣を突き付けられる前にシリルを沈めようと直ぐ様切り替えて超大剣ロンハルトを片手で降り下ろそうとしていた。だが、この状況では詰んでしまって素直に敗北を認めるしかない。もし、これが実戦であれば首を跳ねられていただろう。
「……あぁ。私の……負け、だ」
そしてリラはゆっくりと超大剣ロンハルトを下ろす。
それを見ていた審判である受付嬢は呆気に取られていたが、リラ自ら降参した事を脳内で認識すると慌てながらも大声で発する。
「そ、そこまでッ!!!勝者は、シリルッ!!!」
「「「ウォォォォォォオ!!!」」」
審判が下した瞬間、観客席にいた観戦者達から歓声が沸き上がった。まさか『剛剣』が敗北した事に驚いていた者達も多数いたのだが、あの人間離れした素晴らしい戦いに盛り上がってしまう。そして勝者であるシリルだけではなく、負けてしまったがリラの『剛剣』としての戦いにも称賛するのであった。
シリルは魔剣テルヌーラと[闇夜]の鎧を解除すると、透かさず観客席にいるシキへと喜びの笑顔を向ける。その笑顔には「御主人、やったよっ!」という意味が込められていた。
それを見ていたシキは勝利を称えるかの様な微笑みをしながら「やったなっ!」という意味を込めた親指を立てていた。
「♪」
褒められた事にシリルは喜ぶが、それを内側に閉まって落ち込んでいる様な、悔しそうな表情をしているリラへと手を差し伸べる。リラは一瞬驚きはするが、改めて敗北した事を認め差し出された手を掴み握手をするのであった。
「完敗だ。貴様の……いや、シリルだったな。君のその剣の太刀筋は素晴らしいものだった……」
「あの、『剛剣』さん?」
「リラで構わないぞ。どうしたんだ?」
「お願いがあるんだけど……」
「……お願い、か。私は君に負けたのだ。その願いを聞く義務がある。……そ、その願いとは……何だ?あ、あれか?そ、その……わ、わわわ、私の身体が、目当てか?ま、まだ私は20代ではあるが……」
「あ、今そういうのいいんで」
「なっ!?た、確かに20代とは言っても再来年には30になるが……でも酷いなぁ。それほど私に魅力には無いのか……」
そう、リラの今現在の年齢は28歳。
だが、年齢に反して10代後半から20代前半位にしか見えないだろう。武人やアスリートの如く身体は鍛えられている。しかも顔は整っているので中々の美人でもあるだろう。
だが、シリルにとっては今はどうでもいいらしい。今聞いてほしい願いをリラへと言う。
「ぼくのお願いは……御主人達の話を聞いてほしいんだっ」
リラはその事を聞いて気持ちを切り替えると決心した様に答える。
「……わかった。彼の話を聞こう」
「よかったぁー……。あ、そうだ。リラさん」
「なんだ?」
「リラさんはとっても魅力的な女性だよ?」
「なっ///」
それを言い終わるとシリルは何事も無く、シキ達の共へと向かっていく。不意に言われてしまったあの言葉に思わずリラはドキッとしてしまう。今まで生きてきた人生の中で初めてであろう顔が赤面してしまった事に混乱してしまうリラであったのであった。
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シリルも鈍感かもね……




