『剛剣』
前回のあらすじぃぃぃぃぃぃい!!!
『空海挺所!』
『満員?』
『冒険者っ!?』
のどんっ!ι(`ロ´)ノ
「アルト……アルト、なのか……?」
背中に大きな大剣を背負い、腰に両手剣を携えた女騎士が戸惑いながらもアルトレアに問う。
そう言えば、アルトレアが男だった時の名前は『アルト』だった筈だ。その『アルト』という名を知っているのはアルトレアにとってかつての家族かそれに近い人物だろうとシキは思った。
女騎士の後に使用人の少女も目をまんまるとしながら同様に驚いている。
「アルト様……っ!」
「っ!?」
アルトレアは一瞬表情が氷の如く固まってしまうが、何やら切り替わったかの様に振る舞いだした。
「な、何でしょう……か?」
普段使わなそうな御上品な口調で言うのだが、目が完全に泳いでしまっているので隠しきれていない。それにそんな言葉遣いをされればシキ達も違和感を覚えて仕方がなかった。
そんな中、女騎士はずかずかとアルトレアの元へと近付くとそのまま両手で彼女の両肩をがっしり掴んだのだ。その時にビクッ!となったアルトレアは一体どうしたらいいのか混乱状態になってしまう。
女騎士は涙目になりながら言う。
「いや、間違いない!アルトっ、よかった……無事でよかった……」
「っ!」
アルトレアに近付き、優しく抱き締めた。
もう、二度と離さないと。
あの様な屈辱を、絶望を味合わせないと。
そう強く抱き締めるのだが、ある違和感に気付いた女騎士。
男にしては非常に身体が丸く帯びており、髪も伸びて女性らしくなっているのだ。まあ、アルト時も少女らしかったので気のせいかと思っていた。
ある一部分を除いては……。
「……あ、アルト?これは……これは、一体、どういう……ことだ……?」
「……は、はい?」
その女騎士は抱き付いていたアルトレアの両肩を持ち、少し離すとそのまま目線が下へと向いていた。
より具体的に言うのであれば、胸部。
年齢的には、失礼ながら非常に控えめではあったものの確かに膨らみはあったのだ。
将来的には望み薄だとかなり失礼だが、客観的にわかるだろう。
その女騎士はワナワナしながらアルトレアに目を引き開きながら問う。
「な、何故……なぜ、女になっている……?」
「え、えっと……色々ありまして……」
「色々、とは何なのだ?」
「ひ、ヒィっ」
まさかアルトレアが男ではなく女になっていた事実に動揺が隠せずに、怒りに満ちた表情となっている。別にアルトレア本人に対してではなく、女にした元凶を聞き出そうとしていたのだろう。アルトレアにとってみればもう鬼の形相で睨まれる様に問われているので怖いのか悲鳴の様な声を出してしまう。
流石に怯えた表情を見たシキはその女騎士がアルトレアの肩を掴んだのだ手を掴むと落ち着かせる様に言う。
「誰だかは存じませんが、一旦落ち着きませんか?」
「シキさんっ」
「なっ!?」
アルトレアは怖かったのか掴まれた手から逃れると愛しい夫であるシキへと抱きついた。そしてお腹に向けて顔を埋める様にグリグリしているとシキはアルトレアの頭を撫でながら呆然と驚いている女騎士を見た。
その女騎士はアルトレアにしか見ていなかったのかいきなり現れたシキに驚きつつ、何かを悟ったのかワナワナと怒りを露にしていく。
「貴様か……」
「え?」
「貴様っ!アルトに何をしたぁぁぁぁぁあ!!!」
「え~……」
どうやら、アルトレアが女になったのは目の前にいるシキが何かしたからだと思っているらしい。何故、話もしていないのにその様な結論になったかはわからないが、抱き付いていたアルトレアが女騎士に慌てながら話す。
「ち、違いますっ!この人は……シキさんは、命の恩人でもありますし……その、ボクの旦那様なんですからっ!!!」
「なっ……!だ、だんな……だと……」
アルトレアはその女騎士に大打撃を与えた発言をしていたのだが、そろそろこの人は一体何者なのだろうかと知りたいシキ。なので聞いてみる事にした。
「アルさんやアルさんや。この人達は一体誰なんだい?」
「えっと、ですね。この人はボクがまだ勘当される前、父親だった人の第一婦人のリラ様です。それと……後ろにいるのがマリン、ですね」
話を聞いて名前を知ると、マリンという名前はかつて初めて出会ったアルトレアとの話を思い出した。
マリンは貴族で男だった時のアルトレアの使用人だった人物だ。シキにとってわかっていたのはそのマリンという使用人の少女がアルトレアを裏切った、という事。正直、これを聞いた時はシキはアルトレアは精神的に大丈夫かと思っていたが吹っ切れている様だ。しかし、我慢している可能性もあるので後でゆっくりと話を聞いたりする等をしなければならないとシキは考えながら女騎士リラと使用人マリンを見ていた。
「アルト……私の聞き間違いか……?その女を夫と……」
「シキは男ですっ!」
「「「男っ!?(はぁぁっ!?)(嘘でしょっ!?!?)」」」
シキが男だと驚いたのはリラとマリンだけではなく、その場を目撃し聞いていた冒険者達であった。しかも、冒険者のティムモンスターも言葉がわかるのか目をまんまると驚愕しながらシキを見ていたのだ。
女と間違われるのは仕方がないと理解していたシキではあったが、やはり間違われるのは少し傷付く。
そんな中、女騎士は更に間違った方向へと勘違いをしていく。
「そうか、貴様……アルトを籠絡したのだな?どんな方法かは知らんが、女にしたアルトを……」
「だから、シキさんはボクの旦那様だって!」
「なっ……だ、旦那……ま、まさか……アルト、その女……ではなく、その男と……手を……繋いだのか……?」
「はい、この通りっ!」
そう言いながらアルトレアはシキの手を指を絡めて、繋いだその手をその女騎士リラに見せる様に突き出したのだ。それを見たリラは「なっ!?」と声を詰まらせる様な声を出すが、顔を左右に振りながら言う。
「まさか……き、きききき……キス、も……したのか……?」
「はい!信じられないのなら……シキさんっ」
「え……むぐッ!?」
リラは面白い位に取り乱しながらアルトレアに問うと、次はシキに向かってジャンプするとそのまま両手を首に回す。そしてシキの唇を奪うように口付けをしたのだ。
周りでは、特に女性陣が黄色い声を上げているがシキはアルトレアの肩を掴んで一旦離れてもらう。
目の前でその様な事をされたリラはもう燃え尽きた様に白い灰となってしまった。そして今までキレのある声ではなく、今にも描き消えてしまいそうなか細い声で最後の確認をする。
「……ヤったのか?」
「やr「はい、アル。一旦落ち着こうね~!!!」」
最後の最後でアルトレアは暴露しようとしていたが、透かさずシキがその口を手で押さえ込んだ。流石にこれ以上の暴露は色々と駄目だと思ったのだろう。しかも、近くにはアイリスとマシロもいるのだ。
後ろにいるリゼット達を確認すると、リゼットはアイリスを。スミリアはマシロの耳を塞いでいた。子供の目の前でこれ以上の醜態は見せる事は出来ない。
アルトレアは我に帰って落ち着きを取り戻し、自分が今言おうとしていた内容に思わず顔を真っ赤にさせてしまう。混乱していて正常な判断が出来ていなかったのだろう。まさか、ここで男だった時の知り合いに出会ってしまったのだから。もしかすると、本当は会いたくはなかったのかもしれない。
女騎士、リラは俯いたまままったく動かなくなってしまう。髪の毛が邪魔になって表情が見えなかったが、何かを口にする。
「……ぅ」
「う?」
思わずシキはリラから聞き取れた言葉を言うのだが、次の瞬間彼女の限界を超えてしまった。
「うわあああああぁぁん!!!」
まさかの、号泣であった。
シキ達やその他の冒険者は勿論、側にいた使用人マリンも思わずギョッとした表情をしてしまう。女騎士リラは見た目からして堅物そうであり、感情には流されない様なクールさがあったのだが……。
リラは回り構わず号泣しながら叫ぶように言う。
「アルトっ、アルトがっ!女になっでぇ……しがもっ、おどごだとぉぉぉぉお!?!?わだっ、わだじばぁ、ルーシェどやぐぞぐじでだのでぃぃーー!!!」
「……(何言ってるのかわかんない)」
本当に子供の様に駄々こねるかの様に泣き叫ぶみっともない女騎士、リラ。それを見たシキは何となくこれはアルトレアには見せられないと思いとりあえず顔を自身の胸に、両耳を塞ぐのであった。
いきなりの事にアルトレアは驚きはしたが、何やら見てはいけない何かがあるとわかり素直にそれを受け入れる。
すると女騎士リラは暫く泣き叫んでいたが、何かスイッチが切り替わったのかの様に静かになってしまう。
落ち着いた、と思っていたがリラは腰に携えていた剣を手にかけるとシキへと睨み付ける。その場にいた冒険者達は思わず死を悟ってしまったのか恐怖に怯えてしまう。そしてモンスターティムしていたモンスター達も主である冒険者を守ったり怯えて隠れてしまっていた。
リラはドスの効いた声で言い放つ。
「シキ、と言ったな。アルトを返してもらうぞっ!そしてっ、貴様を斬るッ!?」
手に添えた剣を腰から抜き、シキの首に目掛けて解き放った。
が、その前に黒い影がその剣の軌道を阻止してしまう。
ーーーガギンッ!!!
「なにッ!?」
リラは『剛剣』という異名を持つ英雄であり、大木を纏めて斬ってしまう程の実力者だ。それほどの力を有しているので冒険者や騎士だけでなく、モンスターでもその一撃に耐えられないか又は怯んでしまう程。
それを目の前にいる猫の獣人である黒スーツの少年シリルが、手にもつ『魔剣』によって阻止されたのだ。
まさか、威嚇の為寸土目で止めようとしていたとはいえ自分の一撃を阻止されるとは思っていなかったのだろう。
「動かないでくださいっ」
そしてリラの後ろにはギルドカードを受け取った葵が頭に向かって銃口を向けられていた。
葵が手にもつ銃はトンプソンセンター・コンテンダー。
これは葵が製作した最高の一品である。弾丸は一発しか充填出来ないが、威力は数々の銃の中でも絶大だ。弾丸が入ってない状態の発砲でも普通の人なら肉片になって飛び散ってしまうだろう。
「っ!?」
「女騎士、おれの御主人に剣を向けるなら容赦はしない!」
「剣を収めてくれませんか?」
この状況では身動きが取れないどころか、反撃する隙も無い。それはリラもわかってはいたが、騎士としてなのか何処か納得していない様子だ。恐らく引く事はないだろう。
このままでは埒が開かないので、シキはこの状況である提案をする。
「リラさん、でしたっけ?事情はわかりませんが、ここは一つ手を打ちませんか?」
「何?」
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さて、シキはどんな手を打ったのでしょうか?




