ある組織の王
あ、あれ……?
何か、ヒロイン増えてしまいそうな……。
o(T△T=T△T)o
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前回のあらすじぃぃぃぃぃい!!!
『倭国、カグヤ!』
『神話!』
『この世界の神々も……』
のどんっ!ι(`ロ´)ノ
目の前に、いつもの風景が炎に包まれていた。
そこは平和で豊かな世界からひっそりと存在していた何処の国にも所属しない町。
だが、殆どが炎によって燃やされていく。
そこに一体の『オーク』と一人の女性がいた。
その『オーク』は『魔王』と呼ばれており、武人を感じさせる武装をしている。身体は筋肉であり、生半可な武器では傷一つつけないだろう。
一人の『人族』の女性は、涙ながらにしてその『魔王』である『オーク』を引き止めようと泣きながら叫んでいた。
「駄目よっ!私も貴方と……!」
「……許してくれ、愛しき妻よ。じきに『勇者』共が俺を殺しにやってくる」
「何で!貴方なら、『勇者』なんて簡単に倒せるでしょ!嫌よ……こんなの、嫌よっ!『魔王』だからって、何で……っ!」
「お前の言う通り、あの『勇者』共が俺を傷つける事は無い。だが……だが、駄目なのだ。仮にあの『勇者』共を倒したとしてもそいつ等よりも強い奴等が現れるのは確実だ。俺よりも……な」
「でも、だからってっ!」
女性はこれ程最悪な状況に涙を流すしかなかった。
女性は自分の意思ではなく、自分の愛する夫『魔王』のオークに剣を向けていたのだから。
その剣は『勇者』では到底扱えない代物であり、『魔王』のオークが愛しき妻の為に自ら材料を調達し、作り出したこの世に一つしか無い愛の籠った剣と盾が合体した武器。
恐らく『聖剣』や『魔剣』等の武器を越える武器。
「俺は……俺は幸せだった。『魔王』であり『オーク』でもある俺を愛してくれたお前と出会えて。それが仮に嘘だったとしても……」
「嘘なんがじゃない!私は、本当に貴方を愛してるの!それに、貴方は言ったじゃないっ!何時か人や獣人、エルフ等の全ての種族が差別も無い幸せな国を作りたいって!そんな世界を作りたいってっ!」
女性は叫ぶ。
大粒の涙を溢しながら。
その『魔王』であるオークは妻である女性の涙を見ると、苦しそうな表情をしながらも本当は死にたくないという本音を圧し殺していた。
彼は『魔王』でありながらも、世界の平和を望んでいた。
だが、冒険者と名乗る人間達によって彼の家族を仲間を残酷な程までに殺されてしまったのだ。
偶然彼は生き残ってしまった。
彼は悲しんだ。
しかし、彼は復讐をしなかった。
その復讐心を、人間達にぶつけてしまっては自分の様に悲しむ人間側の者達が更に増えてしまう。
だからこそ、彼は復讐心に囚われる事無かったのだ……。
彼は悲しみの中で思った。
世界が平和になれば、こんな自分の様な悲しむ者は無くなる、と。
全種族が差別の無い、世界になれば……。
「……そう言えば……最初に俺の願いを笑わずに真剣に聞いてくれたよな、お前は」
仲間にはそんな理想を言っても誰一人耳を傾ける事はなかった。
そんな中、敵であったある一人の女騎士だけが彼の言葉を傾けたのだ。
強く、美しいと言われた……今は彼の妻だけが。
しかし、もうその願いも限界がきていたのだ。
もうそこらに冒険者や騎士であろう人間の声があちらこちら聞こえてくる。
自分は『魔王』だ。
だが、妻である彼女の存在は誰も知らない。
知っているのはもう、その炎に焼かれて死した仲間達。
彼等は人間との共存を望んでいた者達ばかりだ。
しかし、何時かはこうなる事を知っていたのだろう。
攻めてくると知った筈なのに彼等は人間達との対話を望んだのだ。
そして、人間達は彼等の声を聞き入れようとせずに躊躇無く殺した。
もし、彼女が自分の妻だと人間達に知られれば殺されるだろう。それも残酷な……。
せめて、彼女だけは生きてほしい。
まだ彼女は20も満たない少女でもあるからだ。
これから、また新しい良い伴侶を見つけられるだろう。
その美しさと、その強さなら。
なら、一つ芝居を打たなければならないと『魔王』は考えた。
彼女を、英雄にさえすれば……。
まだ、彼女は騎士であるので『魔王』である自分を『勇者』達より先に倒していても不思議ではないだろう。
「……」
彼は瞳を閉じると妻である彼女の幸せを望む。
そして、決心がつき、彼は……『魔王』は、咆哮を上げた。
「……グォォォォォォォオオアアアア!!!」
「貴方っ!?なっ、ま……っ!!!」
ーーーグザリ。
鈍い音が響き渡った。
彼女は、彼が何をするのかを理解して必死に自身の身体を止めようとしたが……虚しくも。
夫である『魔王』が操った事により、妻である女騎士は……。
女騎士が持っていた武器で、『魔王』の急所を貫いていたのだ。
その瞬間を、良いタイミングで『勇者』達と騎士や冒険者達が丁度目撃していたのだ。それを見逃さなかった『魔王』は妻である騎士に偽りの敵意を込めて言い放つ。
「グッ……ガハァッ……まさか……この『魔王』であるこの俺を倒すとは……(すまない……俺の最愛の人よ……せめて……幸せに……)」
『魔王』は力無くして膝を着き、そのまま前へ倒れた。
そして、それを目撃した者達から歓声が湧く。
彼女は……愛しき夫を、自分の意思ではないとはいえ、呆然とするしかなかった。
手には目の前に死した愛しき夫である『魔王』が自分の為に作ってくれた武器と、その赤黒い血のみ。
『魔王』は、夫は、安らかに、眠る様に死んでいた。
「な、んで……」
声が出なかった。
何故、こんな事になったのか。
目の前に倒れている夫から血が留まる事無く流れ、広がっていく。
彼女は、彼を本当に愛していた。
彼と幸せになれると、不思議と確信は持っていたのに。
彼女は、武器を手に持ったままその場に座り込んでしまう。
それを見た『勇者』達は急いで彼女の元へと近寄ってきたのだ。
この時、『勇者』達は彼女が命をかけて『魔王』を倒し、力が尽きかけたのだろうと思っていた。
加えて彼女は知る人ぞ知る『剣豪』の異名を持つ人物だったのだ。だからこそ、彼女を『魔王』をたった一人で倒した英雄だという認識になったのだ。
この活躍により、『勇者』達よりも有名になったその女性。
英雄として国に招待され、暫くの間、不自由なく暮らしてきた。
だが、ある日。
彼女は忽然と国から姿を消したのだ。
運ばれていた『魔王』である夫の遺体と共に。
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「……夢、か」
ある城の一室に懐かしい記憶を夢に見ていた女性がベッドから起き上がる。
あの時よりも既に何十年も経っているが、その女性は20歳位にしか見えない外見だ。美しくも、力強い雰囲気は女性としては異質ともいえる程であった。
「……あの時から、長い年月が経ったのですか」
懐かしい記憶は彼女にとって、最も忘れられない記憶であった。
すると、その一室の部屋の扉から声がかかる。
「母上、俺だ」
「……入りなさい」
部屋に入ってきたのは、一人の女性であった。
外見は10代後半位だろう。
長い茶髪の婆娑羅の髪に前髪を後ろに、オールバックにしている美女だ。格好は騎士の格好をしており、その佇まいからは一騎当千を成し遂げてしまう実力者だとわかる。口調は完全な男であるのでプライベートではかなり乱暴な言葉遣いをするであろうとは大体予想はつくであろう。
「で、何かあったのですか?」
「……何か『七天魔皇』の一人、ラバラスが死んだらしいぜ?大分前の話だけどよ」
「ほぅ……ラバラスが死んだのですか。同じ『七天魔皇』の一人として、情けない」
そう、母上と呼ばれた女性は『七天魔皇』の一人だ。
そして自分の娘から聞いた時は何とも情けないと心の底から思っていた。
だが、同じ『七天魔皇』でもその女性の方が圧倒的に実力は上である。
すると、同じ扉から一人のエルフの女性が入ってきた。
「何ですか、リューイ。珍しく取り乱している様で?」
「王よ。先程、部下から連絡が……マージナルにて、『勇者』と思われる集団を確認したと」
「何?」
エルフの騎士、リューイからの報告に王と呼ばれた女性とが反応を示す。
王は特に表情を変えてはいないが、無意識なのか辺りの空気が凍りついたかの様になっていた。それは殺気ではないものの、娘とリューイの二人にとってみれば背筋が凍るものであったのだ。
だが、そんな母親を間近で見ていたその娘は自我を取り戻すと何やら思い付いたかの様に母親である王に言う。
「なあ、母上。その『勇者』って奴等の始末なら俺に任せてくれよ」
「……『勇者』等、無視しなさい。邪魔をすればその時に斬ればいいでしょう」
「でもよ……」
「何ですか、エマ?」
王である母親の威圧に押し負けてしまった娘、エマは渋々としながらも文句無く指示に従うしかない。だが、何処か母親に対しての反抗期の様な反発が少し現れていたのだ。
いや、年相応だろう。
エマは周りに聞こえる様に舌打ちをすると、王に向かってこう言い放った。少し母親に対して恐怖心はあったもののそれに反発する気はあったのだ。
「母上がどう言おうと、俺はマージナルに行く。そして、害になる奴なら直ぐにこの俺が殺してやる!」
「……そうですか。なら、暫くは好きにしなさい、ですが、分かっていますよね?貴女は私の娘でもあり第三騎士なのだから……」
「ああ、わかってるよ」
そしてエマは部屋から後にすると、そのままマージナルへ行く準備なのか自分の場所へと戻っていく。それに続いてエルフ騎士のリューイも礼儀正しく退出する。
王である彼女は窓から見える景色を眺めながら、呟いた。
「貴方……。貴方が望んだ世界を私が作り上げる……それには、まずは今のこの世界を一旦……その為には、あの二つのモンスターが必要ですね……」
そうして、王であり『七天魔皇』の一人であるミュランが長い年月で費やしてあの伝説の神と伝えられる2体のモンスターを調べ上げた。これが彼女にとって、今は亡き最愛の夫が願った世界を現実に可能となる存在だとわかったのだ。
姿形等はわからない。
だが、実在するのだ。
神話の神と呼ばれし二体のモンスターが。
「全能を司る神『ハヴァピア』、無を司る神『デシィート』。その二体さえいれば……」
彼女、王が率いる組織は目的の為に本格的に動きだそうとしていたのだった。
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いよいよ、『勇者』やその他のキャラクター達も……!




