vsマーリン
前回のあらすじぃぃぃぃぃぃぃい!!!
『六華の正体!』
『シキでしたっ!』
『イアさん登場っ!』
のどんっ!ι(`ロ´)ノ
「はぁっ!?ふざけんなしっ!」
女神クーディアの発言に今までおちゃらけた口調だったイアが怒りを露にしていく。イアが怒るのは当然の事で、愛しい我が子を自分が認めた相手以外に渡したくは無いのだ。加えて自分を含めたシキの妻達を殺そうとするなら抵抗するに決まっている。
だが、その発言に最も怒りを現していたのはシキであった。
怒ると言っても怒鳴ったり喚いたり、叫んだりするのではなく静かなものだ。
この時、誰もがシキが怒りを抱いているのをよくわかる変化が本人自身の身体に起こっている。
それは、身体中が褐色に変化しているのだ。
これはかつて、イアとの戦闘でシキが憤怒した時に起こった現象。
すなわち、シキは『魔人族』へと種族が変化している事がわかるだろう。そして背中からは漆黒の大中小の三対六枚の翼が勢いよく現れる。
今のシキは少女騎士だったが、今では少女騎士の姿をした魔王という存在にも感じるだろう。
シキは静かに女神クーディアへ問う。
「女神クーディア、それは本気で言っているのか?」
「えぇ、そうよ?あ、あぁ、貴方のその姿もいいわねっ」
「……そうか……我が神剣よ、宿れ、『幻想』ーーー」
シキが持っていた神剣『エア』にある『力』を宿す。
それは、かつて、アーサー王が携えていた地球では有名なあの聖剣。
先程六華状態の時に使用した『幻想・巨宝聖剣』があったが、それよりも優れているのは変わり無い。
しかし、優れているのは威力ではなく、使い勝手の方だ。
威力だけなら『マルミアドワーズ』よりも上。
シキはその聖剣を『幻想』で生み出すと、神剣『エア』に宿していく。
そしてその聖剣を宿った神剣を女神クーディアに放とうとするが、割り込むかの様にマーリンが現れたのだ。
「『創造』ーーー」
この時、シキだけではなくマーリンもあのアーサー王の聖剣を『想像』していた。
マーリンがそれを『想像』するのは別段おかしくは無いだろう。アーサー王の身近にいた存在でもあるのだから。
そしてシキの『幻想』と『想像』がぶつかる直前、両者はその聖剣の名を叫んだ。
「「『輝波王聖剣』ァァァアッ!!!」」
両者の 「『幻想』・『輝波王聖剣』」 と「『創造』・『輝波王聖剣』」が衝突する。
どちらも本物では無いものの、極めて近い物だ。
その絶大な破壊力はこの『迷宮』を吹き飛ばしてしまうのではないかと考えてしまう程の威力。
この時、マーリンは先程といいシキに疑問を抱いていた。
今どちらも放っている『輝波王聖剣』は偽物ではあるが、自身の『想像』とシキの『幻想』で生み出したものは殆ど大差が無いのだ。
マーリンが『輝波王聖剣』を『想像』出来るのは、マーリン自身がその聖剣を見る機会が多かったからこそ、それほどの近い物になっている。
しかし、それはシキの『輝波王聖剣』も同様だった。
マーリンは激しい光と衝撃波に揉まれながらも考える。
「(何故だ?何故、彼は『巨宝聖剣』だけでなく『輝波王聖剣』までも生み出せる!?それにこれ程の力はその聖剣をある程度間近で見て感じ理解しなければならない筈だ。彼は……彼は、実物を見たことがあるのか?)」
「ッ!!!まさか、そっちも使えるとはね……ッ!」
両者の聖剣から生まれる衝撃波は止まる事を知らずに、威力が保ったままである。
「うぁぁぁぁっ!?!?」
「にゃわぁぁぁぁっ!?!?」
「よっと!」
その衝撃波に吹き飛ばされそうになった葵とシリル。そんな二人を助けたのは辺りに[神水]のベールで衝撃波を防ぎきった『海之神』のイアであった。
無事に[神水]のベール内へと無事に保護するとイアは二人に大丈夫かどうかを確認する。
「大丈夫~?」
「は……はい」
「う……うん、」
「悪いけどさっ、二人共、暫くそこから動かないでっ!」
イアの指示に葵とシリルは了解した様に頷く。
一方、女神クーディア達は前にアイアスが盾で衝撃波を何とか防ぎきっていた。その後ろには女神クーディア・酒呑童子・ブリュンヒルデの三人が避難していたのだ。
「あぁ、凄いわぁ……シキ……♥」
「女神さんも何言ってんねん。はぁ、僕が完全な状態やったらあの間に割り込めるんやけど……今やったら確実に消えるで、あれ」
「……そんな事より……彼と話してみたい……」
「おいっ!てめぇら、後ろごちゃごちゃうるせぇっ!!!」
アイアスは防ぎながらも女神クーディア達に叱咤する。酒呑童子だけでなくアイアス、ブリュンヒルデも完全体ではないのでこの衝撃波を受ければ只では済まされないと理解していた。
こんな力を持つシキを見ながら女神クーディアは驚きはするものの更にシキに対しての執着心を抱いていく。
そんな事が起こっているのを知らない二人は一歩も引かない状態だった。
マーリンは『創造・輝波王聖剣』を保ちながらシキに改めて問う。
「何故だい?君は、何故今は亡きアーサーの聖剣を生み出せる?君は、君はアーサーの聖剣を見たことがあるのかい?」
「っ、あぁ、見たことあるさっ。言っとくがマーリン、俺はアーサー王と知り合いだぞ」
「なっ!?」
その答えに思わず心を乱してしまうマーリンだったが、シキの発言に更に質問をする。
「アーサー王と知り合い?……何を言っているんだ、君はっ。アーサーは死んだ筈だ。例えあの戦いで生き残ったとしても寿命で死んでいる。君は、何を言っているんだっ!?」
初めてマーリンはシキに対しての怒った表情を見せる。
しかし、シキはそんなマーリンを余所に淡々と続けた。
「アーサー王は、生きている。だが、お前が言うアーサー王では無いと思うけど……なっ!」
そんな言葉を言い切ると、シキはマーリンを力で押し返した。
押し返されたマーリンはシキの言葉に驚きを隠せない様だが、シキはそんな事はお構いなく神剣『エア』に『輝波王聖剣』だけでなく、他の『力』を宿していく。
「更に、力を宿せっ。『幻想・天頂妖刀』ッ!!!」
シキの持つ神剣『エア』に既に宿っている『輝波王聖剣』だけでなく、『天頂妖刀』を力を宿していく。
新たに力が宿った影響か、神剣『エア』の形状が変化する。
普通の剣と形は変わらなかったが今は日本刀の様に薄く、そして全てを切り失せさせる様な鋭い刃を持つ剣。
まるで西洋剣と東洋剣を合成させたかの様な細く鋭い、刀剣。
その脅威的な存在感にマーリンは気付く。そして今ある『輝波王聖剣』では対抗できないと悟ったのか自身を守る為に魔法を発動する。
「≪天頂に輝く、大いなる刃、『聖妖ナル斬撃』≫ッ!!!」
シキがその刃を降り下ろした瞬間、『輝波王聖剣』とは比べ物にもならない程の威力がマーリンに襲い掛かる。それは威力だけの問題だけでなくその衝撃波は鋭い刃が降り注ぐ。一つ一つの刃は肉を抉り取る、よりかはかっ斬る様なものだ。
その切れ味は、まさしく『天頂妖刀』の力を宿しているからだと納得するだろう。
刃の衝撃波は暫くして止むのだが、そこにはマーリンではなく七枚の動物の革を貼り付けられた青銅の盾によって防がれていたのだ。
その盾を構え防ぎきったのはアイアス。
しかしシキの絶大な攻撃には堪えたのかかなり疲労の様子も見てとれる。もし、完全体ならこうも疲労もなかっただろう。
「すまないね、アイアス」
「っ、別に助けた訳じゃねぇよ。あの女神に命令されてな」
「……防がれたか。流石はアイアスの盾、か」
そう感心したかの様にシキはアイアスの盾を見ていた。
だが、防ぎきった事には感心するが戦いはまだ終わっていない。シキ自身も女神クーディアに対して怒りがまだある。正直な話、女神クーディアが謝ればこれで終わる。
だが相手は神だ。
そんな事は神として全く謝るという選択肢は無いのかもしれない。
いや、謝る以前にシキを己の物にしたいという慾望が明らかに強いだろう。
イアの生み出した水のベール内で傍観するしかなかった葵とシリルは更に戦いが激しくなるかと思っていた。
彼等二人もこの現状に何も出来ない事に酷く無力感を覚えていた。上には上がいる、というがこの差は天と地以上を越える差があるとこの戦闘を見て感じている。
あの泥人形の戦闘だってシキが居なければ敗北していたのは目に見えていた。
何も出来ないまま戦闘が繰り広げられると感じた二人だったが、突如両者の動きが止まってしまう。
戦闘を止めてしまう程の何かに気が付いたのはシキとマーリンであった。
「……っ!?」
「これは……っ」
両者が気付いた後に遅れて女神クーディアもその何かを感じ取り、何も無い場所へと目を向ける。その何も無い場所とはシキとマーリンの丁度中心であった。
「えっ?」
「人……?」
その中心には何も無い筈だが、その場の空間が歪んだのだ。
そしてその歪んだ空間から現れたシルエットは人の形をした何か。
この時にシキと女神クーディア、そしてイアはその正体が大体何者なのかは直ぐに理解した。
そこに現れたのは……執事服を着用し、背中からは『天人族』の様な純白の翼を生やしていた人物。
執事服に純白の翼、だけなら、まだいいだろう。
しかし、ここからが問題であった。
顔が、白馬だったのだ。
「ブヒュヒュヒュヒュッ!!!」
「「「……」」」
この時、その馬執事は奇声の様に馬の鳴き声を放つ。
いや、顔が馬なら別におかしくは無いのだが……その鳴き声にその場にいた全員が思わず沈黙してしまった。いきなり奇声を上げられても困ってしまう。
しかも今この状況は緊迫していた筈だ。
だが、この馬執事によってぶち壊される。
長い沈黙の中、葵とシリルに関してはもう恐怖でしかないのか今にも泣きそうである。
そんな長い沈黙を耐えられなかったのか、馬執事は回りを確認した後にもう一度自己紹介かの様に振る舞う。
「ブヒィヒィヒィヒィヒィヒィヒィヒィヒィヒィヒィヒィ!!!」
「黙れっ、この馬鹿息子っ!」
「ブヒィンッ!?」
いきなり馬そのものの顔を殴打したのは馬執事の後ろにいた一人の女性……女神であった。
その女神は騎士の様な武装に容姿は美女ではあるが、何処か性格がキツそうな感じだ。髪は白金で、髪型は一瞬ショートカットに見えるもののよく見れば極端に長かったり短かったりと疎らだ。しかし、髪型はともかく髪自体は非常に美しいだろう。
「女神……メデューサ様……」
「……不知火姫希か。天照大御神と戦女神様の仰有る通りこの世界に飛ばされたのだな。にしても貴様は……」
女神メデューサは手に持っていた蛇に巻き付いている杖をシキの頬にグリグリしていく。別に只グリグリされているだけなので何も無いのだがシキは何故こんな事をされているか分からない様子でされるがままとなっていた。
「何、この世界の神と戦っているのだ~~~貴様ぁ~~~!」
「や、やめふぇ……」
暫くしてシキにグリグリを止めると女神クーディアに目を向けて話す。
「お前はこの世界の神だな?」
「えぇ。貴方は地球の神みたいですね。……何の御用でしょう?」
女神クーディアは女神メデューサに対して警戒心を抱いていた。いや、シキを狙っている輩ではないかと微笑んでいる表情の中に敵意も抱いていただろう。
女神メデューサは言う。
「双方、これでこの戦いは終わりだ。もし、これ以上の戦いを望むのならこちらも考えがあるぞ?」




