VS泥人形?
前回のあらすじぃぃぃぃぃぃぃぃい!!!
『強者共と対決っ』
『シキ、大丈夫かっ!?』
『マーリンっ!?』
のどんっ!ι(`ロ´)ノ
僕とシリルは鎖に繋がれた泥人形と対峙していた。
しかし、あの時の泥人形とは少し様子が変だと感じる。
だって、前なら何かしらの言葉を発していたが今の状態は我を忘れてしまった狂者だ。叫び声なのか雄叫びなのかわからないが兎に角叫びながら襲い掛かってくる。
多分僕の事を認識しているとは思えない。
鎖によって拘束はされているものの、まるである程度の自由は許されているのか泥人形は僕達に向けてゆっくりと歩いてくる。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あぁ……」
「葵、行くよっ!」
「はいっ!」
僕とシリルは両サイドから挟み込む様に駆けていく。
右側は僕。
左側はシリル。
泥人形は僕達の動きを捉えてはいるものの身体が鎖によって繋がれているので思うように動けないみたいだ。でも、動きを捉えられているのであれば何かしらの攻撃に対しても考えた方がいいよね。
「さぁ、いくよっ!『魔剣』っ!」
シリルの手から『魔剣テルヌーラ』が姿を現すと、主に応える様に闇のオーラが強まっている。そしてその力は今シリルの感情によって更なる力を増しているみたいだ。
そして僕も袖に仕舞っていた短剣を二本取り出し、それを掴む。
速さで翻弄すればあの泥人形は手足も出せないだろう。
「あ゛あぁ……あ゛あ゛あ゛あぁあ゛あ゛あ゛あ゛あぁっ!!!」
「≪我が魔剣に、静寂をもたらす、闇の力をこの刃にっ、『漆黒之大刃』≫っ!」
「≪我が双剣に、始まりを告げる、光の力をこの刃にっ、『閃光之双刃』≫」
僕の『閃光之双刃』とシリルの『漆黒之大刃』が泥人形の両側に斬り込んでいく。
泥人形は怒り狂った様に叫びながらも両腕を盾の様に構えて防いでしまう。しかし、防いでしまったといえど僕とシリルの二人の攻撃に相当なダメージを受けたのか苦しんだ声を出しながら僕達の剣を押し返した。
「くっ!?」
「おわっ!?」
泥人形の力は思った以上に凄まじく、押し返されただけでも吹き飛ばされてしまう。
何とか態勢を立て直して、次の一手を出そうとするが泥人形は叫びながらも何かを言い出してきた。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ!!!許サナイッ許サナイッ許サナイッ許サナイッ許サナイッ許サナイッ許サナイッ許サナイッ!!!オ前モッ、オ前達モッ、!!!ソシテ、神モッ!僕ヲ、私ヲ、俺ヲ、儂ヲ、我ヲッ!!!コンナ、姿ニシタ、オ前達ヲ、許サナイッ!!!助ケテクレナカッタ、神モッ許サナイッ!!!殺スッ!殺スッ!全テヲ、壊ス、殺シテヤルッ!!!ア゛ァ゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ!!!」
この泥人形は、何を言ってるんだ?
許さない?
こんな姿にした?
助けなかった、神も許さない?
それを聞いた僕は、何故か他人事では無いように感じていた。しかも、泥人形は僕自身に対して言っている様で……。
その血走った泥人形の目は、積年の怨みが、積み重なって混じりあった様な気もしてしまう。
それほど、泥人形の発言は背筋の凍る程の怨念に満ちていたのだ。
「……っ」
「葵っ、どうしたのっ?」
「な、なんでもないっ」
いや、そんなの気のせいだろう。
僕はそう気持ちを切り替えて、泥人形を倒す最善の策を試みる。
「ウォォォァァァァァァアア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ!!!」
「「ッ!」」
泥人形は奥底から身体を震わせる程の響きく叫びに一瞬、硬直してしまう。短時間の間ではあったが、何か金縛りにでもあった様な感覚だった。
叫び終わると自身を拘束していた鎖を引きちぎり、身軽になったかの様に身体をスムーズに動かしている。
「死ネェェェェェェェエエエエ!!!」
そして身体を砲弾の様に飛び出してくると、直ぐ様僕は相手を封じ込める様に魔法を放った。
「≪顕現せよ、数々の樹木ッ!我が標的を、拘束し、そして封印せよっ!『樹木之拘束』≫ッ!!!」
ーーードドドドドドドドドドドドドドドォォォォォオオオ!!!
僕が生み出した樹木達は泥人形に向かって拘束していく。そして蝕む様に締め付けも強くなっている。泥人形は完全に飲み込まれる様に樹木達の根の中に取り込まれてしまった。
前までは樹木を生み出しても数秒経てば消滅していたが、この樹木達は顕現したままだ。これを修得し、維持するのには集中力と精神力が必須となってくる。それもこの『迷宮』での特訓、修行で得られたものだ。
そして、僕の攻撃に加えてシリルの魔法も発動する。
「≪我が闇は、更なる力を開花する。さあ、解き放て、全てを呑み込むが如く、全てを堕とせっ!『全落下』ッ!!!≫」
樹木達によって拘束されて呑み込まれてしまった上に、その上の宙から暗い紫の魔方陣が現れる。その魔方陣が回転すると捩じ込まれる様に僕の樹木事をとてつもない重力によって押し潰されていった。
あんなとてつもない重力に押し潰されれば普通の人間なら即死するだろう。その証拠に樹木達もぺしゃんこになっているし……。
だが、あの泥人形はやはり普通ではないのかシリルの魔法を膝を着かせたまま耐えているのが見える。けれど、少し苦しがっている様に唸り声をあげていた。
「葵っ、今だっ!」
「うんっ!」
今動けない瞬間がチャンスだと理解して、僕は『アイテムボックス』から一本の細い棒に近い槍を取り出す。
これは『赤竜』の素材で生み出した少し歪なものだ。しかし、前にモンスターに対して使用すると身体を易々と貫通する程の殺傷能力を持っている凶器だ。
その槍に魔法を発動する。
槍の上から包み込む様に樹木が絡み合う様に新たな形の槍に形成されると、更に僕はその樹木の槍に『光魔法』を[付加]させる。
「≪我が光の樹槍よ、暗黒を払いて、敵を討ち滅ぼせっ!『聖ナル樹之槍』≫っ!!!」
放たれた『聖ナル樹之槍』はシリルの魔法で苦しんでいる泥人形に向かって直撃する。
この魔法は僕の[付加]の中では最も強力な一撃で、諸刃の剣でもある。
『聖ナル樹之槍』を使うのは条件があるのだが、それは耐久性がある武器でないと駄目なのだ。尋常じゃない程の魔力を流すので下手な武器では流した瞬間に破損してしまう。
今、使用した武器である『火竜』の素材で作った槍は……正直な話、この[付加]でギリギリだと思う。前に使用した時には見事に出来たのだが、最後は砂の様に崩れる様に破壊してしまったのだ。
そして、今のが最後の一本。
だからこその、諸刃の剣なのだ。
「ヴア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ガァアア゛ア゛ァ゛ア゛ア゛ァァァァァっ!!!」
泥人形の胸部を貫いた『聖ナル樹之槍』はまだ破損する事なく、光の力が強まっていた。恐らく、あの時に放ったのが槍を破壊する前に丁度魔力を抑えられていたのだろう。
泥人形は痛々しい悲鳴を上げながらも必死に胸部を貫いた槍を引き抜こうとしていた。
弱点であろう心臓部へと放った筈なのだが、何故まだ生きているのだろうか。
あれで仕留めたと思っていたのに。
「ァァァァ゛ァ゛ァ゛ァ゛……ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ、ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ッ!!!」
悲鳴は力なく消えゆこうとしていたのだが、突如力を取り戻したかの様に声が大きくなっていった。
そして泥人形の身体は何度か痙攣したかの様に大きく動いていたが、身体の部位が膨れ上がる様に巨大化していったのだ。
「ァ゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ……」
「痛イ、痛イヨォ……」
「何デ……何デ……」
「マタ、殺スノ……?」
「ヤメテェ……ヤメテクダサィ……」
「助ケ……助ケテェヨォ……」
泥人形が巨大化すると、身体の至る場所に人の顔が敷き詰められる様に現れたのだ。
全ての顔は僕を見て怒り・悲しみ・憎悪の感情を向けられていた。
誰……だ。この人達は……。
老若男女、問わず、そんな、僕を、恨む様に見られて……。
「うぅ……ぁぁ……っ」
この時、僕はこの人達を殺めたと錯覚してしまう。
いや……僕が……殺したの、か?
全ての顔が、死人の様で……。
「あ、ぁぁぁ……」
「葵っ!」
恐怖によって、僕はその場で腰を抜かしてしまい座り込んでしまう。横からシリルが駆け寄って僕に呼び掛けるが、恐怖を少しも和らげる事は出来ない。
「っ、あれは!?」
シリルは巨大化した泥人形を見て少し拒絶的な表情をしている。
それはそうだろう。
足も、手も、腹部にも、口の中も、全ての身体に死人の顔があるのだから。
「死ニタクナイッ……」
「命ヲ、返シテッ!」
「返セッ!オレノ家族ヲッ!」
「オ母サン……オ母サン……」
「殺ス……子供ヲ、カエセェェェェ!!!」
巨大化な泥人形は『聖ナル樹之槍』を吸収、消滅させると、僕に向かって片手を伸ばしてきた。その迫る手の全てにも顔があり、怨念に道溢れた目で睨んでくる。
もう、その時の僕は恐怖しかなかった。
「うっ!?」
横にいたシリルも僕と同じで恐怖に満ちた表情をしていた。
あぁ、もう、駄目かもしれない。
大きな泥の、そして顔の敷き詰められた手が目前に迫る時、僕の目の前に白き一線が見えた。
「ギャァァァァァァァアアアア!!!」
「痛イ!痛イ!」
「嫌ダ、嫌ダ、痛イノ、嫌ダ!」
「殺サナイデ……」
泥人形の大きな手は、二度も切断され、そして地に落ちていた。その手は地に落ち、身体本体から切り離されながらも呻き声を上げている。
その手を切断した張本人は、舞い降りる様に僕達の目の前に現れた。
その人は、白き鎧を身に纏った金髪の少女であった。
年齢は中学生位だろう。
碧眼は宝石の様に美しいものだ。
そして手には一本の白き剣を握られている。
その風貌は、百合の様な美しい少女騎士。
僕は思わず彼女に質問する。
「君、は……?」
その質問に少女は僕達に向け、こう言葉を放った。
「私は六華。シキ様の腹心です。お怪我はありませんか?葵様、シリル様」




