シキさんって規格外ですよね
前回のあらすじぃぃぃぃぃぃぃぃぃい!!!
『目覚めたら……』
『美少女がっ!?』
『お待たせっ!シキとシリルが登場っ!』
のどんっ!ι(`ロ´)ノ
「えっぐ、ひっぐ、……」
「少し落ち着いたかい?」
僕はシキさんの胸の中で暫く泣き叫んでいたが、無意識に溜め込んでいた感情を吐き出せて大分楽になっていた。本当にこれほど泣いてしまったのは何時以来だろう。僕は顔を埋める様にシキさんの胸にしていたが、よく考えたら女性にこんな醜態を晒してしまったことに恥ずかしさが込み上げてくる。それに僕、シキさん真っ正面から抱き付いているし……。
……胸は無いけど、程よい柔さといい匂いです。
「……そろそろ御主人から離れて、葵」
「俺は別にいいけど……」
「駄目だよっ!御主人には奥様方がいるし、幾ら相手が同性でもこれ以上の密着は看過できないよ!」
奥様?同性でも?
……聞き間違いだろうか。
まるで、シキさんが男だと言っている様な……。
「あ、あの……シキさんって、女の子……じゃないんですか?」
「葵っ!?それ言っちゃ駄目なやつっ!!!」
「へっ!?」
「……女……の、子……俺が……女……同じ、高校生に……間違われた……うっ」
見ると、シキさんが身体を震わせながらぶつぶつと呟いている。僕はシキさんの胸元から離れるが、髪が長いせいかよく表情がわからない。……だが、多分、シリルさんが慌てることからすると……ヤバい事を、言っちゃったのかもしれない。
謝った方がいいか、と僕はシキさんに謝罪しようとするが……。
「うぅ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁあん!!!」
先にシキさんが泣き出してしまった。
いや、僕と同じくらいの歳な筈なのに……
でも、やっぱり泣いてても男とは思えないくらいに少女が子供の様に泣いているみたいだ。
そんな呑気な事を思っているとシリルさんが近寄ってきて焦った様に言ってくる。
「ちょっ、御主人は女性と間違われる事を気にしてるんだよっ」
「で、でも、本当に女の子しか見えない……」
「……気持ちはわかるよ。でも、御主人に謝って!誰だって嫌なことされたら嫌だよね?」
「そ、そうだね」
確かに誰だって気にしている事を言ってしまえばショックを受けるだろう。シキさんが美少女にしか見えなくても男であるなら僕は失礼な事を言ってしまったんだ。謝るのが筋ってものだろう。
「シキさん、ごめんなさいッ!」
「うぅ~~~……」
恨めしそうに見てくるシキさんだけど、その表情だけでなく仕種等全てが女性にしか見えない。でもそんな事を言っちゃったら余計にややこしくなるから……。そうだ、何かシキさんにとって良いことを言えば……!
「よ、よく見たらシキさんって、格好いいですよねっ!」
「……ぅ(ピクピクっ)」
「それに強くて優しいから、えっと……その……男の鏡、ですよね!!!」
「……(ピコピコピコッ!!!)」
もう、何言ってるか自分でも解らないけどとりあえずシキさんを格好いい!とか連発するように言ってみることにした。泣き止みはしたが、俯いたままで表情が見えない……けど、多分喜んでいる、と思う。
だって、シキさんを格好いい!男の鏡っ!とか言う度に金色に戻った狐耳と尻尾が反応してるし……。
これまで、見た目が美少女だから周りから必ず間違われたんだろうね……。多分、男として嬉しい言葉に飢えているのかもしれない。
苦労してるんだろうな……。
暫くシキさんを褒めまくっていると、シリルさんが僕の肩を掴んだ。
「葵、よくやった……けど、御主人、嬉しいのと恥ずかしいのがごっちゃになって……また、泣きそうになってるから」
「……えぇ」
もう、本当にどうしたらいいのさ……。
よく見れば、シキさん恥ずかしそうに顔を両手で覆ってるし……男として褒められるの、馴れてないのかな?
「……そんな事言っても、何にも出ないからなっ」
「は、はい……」
「も、もうこの話は終わりっ!で、葵。右目はまだ見えていないのか?」
「そうですね。まだ見えてないです……」
前にも確認したが、右目……『永遠の眼』は見えていない。まず、どうすれば見えるかなんてわからないし不明だ。レベルを上げるにも方法がわからない……。
お手上げ状態だ。
「そうか、なら……」
「御主人?何するつもりですか」
「右目が見えないとこの先不便だからね。葵、右目を閉じて。ちょっと触るよ」
僕の右目を覆っていた布を取るとシキさんは閉じた右目瞼の上から左手の指だけで優しくそっと触れる。そして魔力が流れ込んでくるのだが、僕はシキさんを信じてそれを受け入れた。
右目に流れ込むシキさんの魔力は強くはあったが、僕の身体を考えてかゆっくりとした丁度いい。疲れた目を強めにマッサージしているみたいだ。気持ち良くて左目も閉じてしまう。何にも言われないから問題ないだろう。
「……よしっ。目を開けてごらん」
「はい……ぇ?」
指示通りに目を開けてみると……。
「見えてる……」
今まで見えなかった右目が見える様になっていたのだ。
僕は驚きながらも、自身のステータスを確認する。
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名前 アオイ・サクラマ
性別 男
職業 --
レベル 16
体力 3470
魔力 3010
筋力 3190
耐久 2890
俊敏 3600
ーーー
[絶対固有スキル]
永久之右眼.E
ーーー
[固有スキル]
ーーー
[スキル]
木魔法. 3
水魔法.1
土魔法.1
光魔法.1
弓術.1
ーーー
[称号]
異世界から巻き込まれし者
勇気在ル者
ーーー
超越者の加護
天照大御神の加護
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『永遠之右眼』のランク?がFからEになっている。シキさんに魔力を流してもらうだけでなんて……本当に凄いなぁ……。
「葵、見えているか?」
「は、はいっ!ありがとうございます!」
「御主人ってほんと、規格外ですよね……」
ボソッとシリルさんは改めて痛感する様に言っているが、前にも色々規格外な事をしていたんだろうか。
シキさんって何者なのだろうか。日本人であることは間違いなさそうだけど……只の日本人じゃないのは確実だ。だって、ケモミミ尻尾、生えてるし。身体能力とか魔法とか、この世界であっても規格外過ぎる。
……もしかして、この世界以外にも異世界が存在している?
そんな事を考えていると、シキさんは手を横に出すと何もない場所に手を伸ばす。そして伸びた手が……。
「消えた……!?」
「う~んっと……あ、あったあった!」
僕が驚いているのは気にしていない様に伸びて消えた手を引き出すと、何か服の様な物が現れたのだ。
「はい、これ」
「え……ぇ?」
「どうしたんだ、葵。固まっちゃって」
「御主人。さっきの行動に驚いたんだよ……」
「あ、なるほどなるほど……ま、気にしないで、はいっ!」
そう言って差し出されたのは、袖が広く赤い紋様が刻まれた黒い上着と黒の短パンであった。
「これは……何を?」
「え、着替えるんだよ。これから下の階層に行くためにね」
「下の階層に何かあるんですか?」
「葵が寝ている時にシリルに見に行ってもらったんだ。そしたら……」
「溶岩が流れてましたよ」
「っと言うことなんだ」
……溶岩が、流れてる?
え、火山地帯か何かですか、この下の階層は。
何か、その階層に入っただけで灼熱の炎にやられそうな気が……。
「多分熱いからこれ着といた方がいいよ」
「あのぅ……死んじゃうと思うんですけど。あと、多分じゃなくて、間違いなく熱い……」
「うんっ。だからこれ着てね?俺のお古だけど、そこは許して」
「いえ、あの……その服って何かあるんですか?」
「この服は耐熱性のあるやつだから熱くは感じないと思うよ。それに着たら身体を包み込む様に魔力の膜が張るから、万が一溶岩の中に落ちても大丈夫だよ」
中々高性能な服の様でした。見た目では全然わからないね。
お古とか言ってたけど……全然綺麗だ……。
僕は有り難くシキさんから貰った服を受け取るとその服の大きさを見てみる。多分、僕に合った大きさだ。
「……これって……シキさんが作ったんですか?」
「そんな高性能な服作れないよ。それはある超絶的に開発好きの人から貰った物なんだ。耐熱性以外にも自己修復とかもついてるから、売ったらかなりの値になるらしいよ」
いや、らしいって……自己修復だけでもあれば高値になりますって!それに誰ですか、その超絶的に開発好きの人って!凄すぎでしょっ!
「御主人。それを差し上げてもよかったの?」
「構わないよ。他にもあるから……あ、シリルも欲しい?俺のお古だけど」
「えっ!?い、いや……。お、おれは御主人から貰ったこの『すーつ』があるからっ!」
あ、そのスーツもシキさんのなんだ。シリルさんの着ている黒一色スーツも高性能な気がする……。一体何着凄い服兼防具を持っているのだろう。かなりの数持っていそうだな……。
「でも、いいんですか?幾らお古とはいえ、こんないい服貰って……」
「いいよ。貰った人からも着なくなったら、俺が心許した者に譲っていいってね。さ、早く着ようっ!」
「あ、ちょっと、シキさんっ!?」
こうして僕はシキさんに服を強制的に着替えられる事になるのであった。
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