狐さんと白猫さん
前回のあらすじぃぃぃぃぃぃぃい!!!
『助けにきたら……』
『裏切られちゃったっ!』
『泥人形に攻撃されて……』
のどんっ!ι(`ロ´)ノ
夢を、見た。
そこは何もない白い空間で、只一人僕だけがいた。
何が、どうなっているのかと思い返すと、僕は、裏切られた事を思い出した。
いや、裏切られたというより、僕が彼等に期待していたのを裏切られただけだ。
そして、最期、あの泥人形に……。
「(あぁ、死んだ、のか……)」
そう思うのが普通だろう。
僕は、死んだ。
その現実を受け入れるのは意外にも容易いものだった。
と、いうことはだ。
ここは死後の世界ということになる。
「……ぁぁ、何にもないな」
この世界は文字通り何にもない。只白い空間が広がっているだけ。僕以外が何にもない世界だ。
人は死を恐れるのは当たり前だ。死というものは十分恐ろしいが、それ以上に死後というのは誰も解らず、理解が出来ない。だからこそ、人々は死を余計に恐れるのか、と僕は唯唯当たりをゆっくり見渡しながら思っていた。
「……暇だなぁ……そう言えば、どれくらい時間が経ったんだろう?」
死後の世界だからなのか、時間の感覚が全く解らない。五感の中でも視力位しか生きていない様だ。もしかすると、既に何十時間、何日、何年、もしかすると何前年もの時が既に経っているのかもしれない。
「このまま一生、こうなのかな……」
そうなれば、最悪だ。
何もせずに時間が過ぎていくのを黙って見ているだけ。
もし、時間の感覚が正常であれば気が狂って自害していたかもしれない。
このまま眠ってしまえば、もう目覚める事はないのだろうか。
ふと僕はそんな事を考えながらゆっくりと無い瞼を閉じ始めようとする。そして瞼を閉じた瞬間、これで本当に『僕』という存在が消えると思った同時に聞き覚えのある懐かしい声が聞こえてきた。
「馬鹿野郎。まだ、死んでねえよ」
その声に閉じた瞼を慌てて開けると目の前にはある人物が立っていた。
「ぁっ……」
忘れもしない、懐かしい人。
僕の命を救ってくれた存在。
そして、僕の、義理とはいえ、尊敬する父親であった。
「おと……さん……?」
「おぅ!久しぶりだなっ」
「何で……生きて、るの?」
「んな訳ねえよ。俺はとっくに死んでるさ」
有り得ない。
確かに死んだ事は知っている。この目で間近で見たのだから。
でも、目の前にいるお父さんは生前と変わらない姿で僕を優しい瞳で見てくれている。
「お父さん……僕……」
「お前も大変だったな。……だけどな、お前はまだ死んでない。お前は生きているんだ。」
「生き、てる?僕が?」
「おうよ!ちょっと俺も無茶しすぎて……完全に消滅しかかってるんだけどなっ!」
よくお父さんの身体を見ると所々に罅割れた様な跡が何ヵ所もあり、そこから少しずつ消滅するかの様に光の粒になって消えていく。それは今いるお父さんが完全に消えてしまうと冷静に判断が出来てしまっていた。
「消滅……?何で?」
「何言ってんだ、息子がピンチの時に命を張んのが父親ってもんだろうが。あ、もう死んでるから命はねえな。……まあ、最後の最期に父親としてこれくらいしか出来ねぇ情けない父親だ。すまないな、葵」
最後の最期?
お父さんは何かやり遂げた様な表情をしながらもわしゃわしゃと僕の頭を撫でてくれる。これは僕が落ち込んでいた時によくやってくれたもので、僕自身をお父さんに頭を撫でられるのは素直に嬉しい。でもこの時のお父さんの表情は少し名残惜しそうな感じも影ながらあった。
「それって、どういう……」
「葵、よく聞け。お父さんはもうお前の側で守ってはやれない。ごめんな。けど、安心しろ!俺の代りにお前を守ってくれる奴がいる。奴には強引に頼んで迷惑だったかもしれねぇが、何とか承諾してくれた。だが、それは只じゃない。……勝手に決めて悪いとは思うが……、葵。お前は奴の従者となれ」
「はっ!?え、いや、何言ってるかわからない……」
「ま、頑張れよっ!」
「えぇ……」
何とも絞まらない感じでお父さんは僕の目の前から光の粒となってそのまま完全に全て消滅してしまった。
……もうちょっと、詳しく話して欲しい。
奴の従者になれ?
奴って……だれなんだろう?
僕はお父さんの発言に多少混乱しながら、意識が眠る様に失っていくのであった。
~~~~~
最初に感じ取った感覚は肌に、身体全体を包み込んでいる様な優しく柔らかなものであった。少し身体を動かすとその柔らかな感触は程よい温もりとほんのりと刺激のない華やかな匂いも感じ取れる。
何の匂いだろうか。
「(……あれ?匂いを感じる……?……嗅覚がある……感覚も……ってことは……まだ、僕は生きている?)」
そう考えながらも今自分がどうなっているかが全くもって想定がつかないので恐る恐る右目を開けていく。しかし、この時に感じたのは開けた筈の右目から何も写らなかったのだ。何か布によって遮られていたが、それを退かしても変わりがない。つまり、視力を失っていた。
「う……そ、だ……」
恐らくあの泥人形の攻撃の時に失明したのだろう。しかし、どうなって失明したかはわからない。加えて奇妙なのが失明している筈なのに出血もなく、しっかりと手当てがされていた事だ。もう片方の目を開けるとその布は千切れた部分のあるの黒い布だった。少しその布を触ってみると中々上等なものだと素人でもわかるほどのものだ。
その布を右目を隠す眼帯の様になっているので少し違和感があるものの、邪魔にはならないと思う。
それにしても、一体誰が手当てをしてくれたのだろうか。
他には身体中の怪我等は完璧と言ってよいほど完治している。あれほどの怪我を治すなんて、一体……。
「……んっ?」
僕は膝に少し重みを感じると、少し名残惜しくなってしまいそうなこの柔らかで快適な『何か』から身体を起こすと、その膝上には白く小さな生物がいた。
「……は?」
「にゃ?」
にゃ……そう、猫だ。
とても可愛らしい白猫ちゃんであった!
猫か犬、どっちが好きかと言われると……決める事はできない。だってどっちも大好きだからだっ!そして今僕の膝の上にちょこんと乗りながら僕を見てコテンっと顔を傾げている所が堪らない。
何だが義姉妹達に裏切られた事はどうでもよくなってきた。うん、もう、彼等の事は忘れよう。そうしよう。
今は白猫ちゃんが先決だ!
僕はここが迷宮だったこと、そして泥人形に襲われた等ということを忘れてしまい、その小さくて可愛い白猫を恐る恐る触ろうとする。
そこで、ふと今僕が身体を預けているのは何だろうと考えてしまう。
"目覚めたかい、少年"
「えっ?」
僕は頭の中に直接語りかける様な……そう、テレパシーを感じ取った。その声は中性的……どちらかというと凛とした少女の声に近いと思う。
"あ、右だよ、右"
「み、右……?」
そう指示に従って僕から見て右側に顔を向けると、そこには癖っ毛のある金色の美しい狐……僕が泥人形に襲われた後、意識が朦朧としている時に見たあの狐さんだった。あの時はよく分からなかったが、この狐さんの目は右が碧眼、左が新橋色のオッドアイといった印象深く綺麗なものであった。
"……?どうした、……あ、聴こえてる?"
「え……えぇ!?」
この声が狐さんのだとわかった瞬間、僕は思わず情けない声を出しながらその美しさに暫く見蕩れてしまったのであった。
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