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★禁忌之呪物 よんっ!

前回のあらすじぃぃぃぃぃぃぃ!!!


『雪の町、白雪!』


『狼、狐!』


『ディオン、ハクにシュゥゥゥウトゥッ!!!』


のどんっ!



「これは知っているだろう?ハク、マグナ。これは『禁忌之呪物』であり、人類が作り出した罪。そして……『禁忌之呪物(これ)』の正体は……マグナ、お前の『父親』だ」



マキナの発言にハクとマグナを除いた一同が思わずその『禁忌之呪物』である醜い金剛石を凝視してしまう。そんな中、桃色髪のミラが異常に身体を震わせながら無意識に姫希の服の袖を掴んでしまう。顔色も悪く今にも嘔吐してしまいそうだ。それに気づいた姫希が黙ってミラの背中を擦りながら[治療術]を施す。



「……そうか。やっと……見つかったのか……この数十年、長かったな」



マグナはなに食わぬ表情で目の前にある『禁忌之呪物』の金剛石を手に取った。その金剛石を眺めながら染々と懐かしい様子で静かに言葉を溢している。


「マキナさん、何処で?」


「うむ。これはな、地球のWAOから届いたのだよ。あるテロ組織の魔法師が所持していたらしい。その『禁忌之呪物』を使っていた影響かその人物は取り押さえられた時には廃人になってたようだ。どうやってそれを手に入れたかはまだようわからんな」


「なっ、なぁ、それ、何だよ……?『禁忌之呪物(それ)』がマグナのじっちゃんのお父さんって……」



ハクがマキナに質問している中、姫希はミラを[治療術]で落ち着かせながら緊張した面持ちで訪ねていた。何せ『禁忌之呪物』であるその金剛石の正体がマグナの父親だと言われても理解が出来ない。だが、マキナが言ったその言葉は文字通りの意味であった。



「これはな。『禁忌之命金剛石』と呼んでいる。見た目は赤黒く酷い物だが……これをある者達は『賢者の石』等とほざいておるな。実際は『賢者の石』と似ている力はあるが、しかし異なっている。そしてこの『禁忌之命金剛石』の材料は……生きた生物だ」


「生きた……生物……?」


「あぁ、そうだ。しかもこれはマグナの父親を犠牲にして生み出されてしまったものだよ」


「そんな……誰がそんな事をっ」


「……姫坊、落ち着けよ」



怒りが込み上げて殺気が漏れそうになっていた姫希をマグナはタンタンとした口調で止めていた。だが、マグナが手に持つ『禁忌之命金剛石』から怨念が溢れてくる。



"やめろぉ……"


"ラクリア……マグナ……ゼシア……"


"死にたくない……"


"殺す……"


"コロス……"


"ノロイ、コロシテヤル……"


"帰らなきャァ……"


"家族を……"


"許してくれ……"


"ユルシテクレェェ……"


"フレルナぁ……"


"イナイ……"


"ダレカ……"


"ヴァリアス……スィエラ……"


"妻と……子供達を……"


"キコエナイ……"


"ミエナイ……"


"ダゼェェェェエ……"



重々しく痛々しい呻き声が肌を伝うように直接身体全体に響き渡る。それは呪いの言葉の様に痛み・憎しみ・後悔等の負の感情であった。



「……親父、俺はここにいるぜ?」


"ア……アァ……キコエル……誰だ……?"


「マグナだ。あんたの息子の、な」


"マグナァ……?アァ……マグナ……か?……チガウ、チガウ!俺の息子は!そんな声ジャナイ!……貴様……キサマァ!俺の、オレノムスコニ!ナニヲシタァ!"


「……」


"ラクリア!ゼシア!オレノツマトムスメニモナニカシタノカッ!"


「……ハク、頼めるか?」


「わかった」



怒りに満ちた『禁忌之命金剛石(ガアス)』は息子であるマグナを判断できずに、自身を醜い金剛石にした敵だと思い込んでいる。正しくは『禁忌之命金剛石』となりガアスは今にも壊れそうな状態となっていた。だから誰が誰なのかも一切判断できなくなっていたのだ。


ハクはマグナに渡された『禁忌之命金剛石』を受け取るのだが拒絶する様に攻撃しようとする。が、相手は『白炎帝』。幾ら所有者の力を倍増させる代物とは言え傷一つ付ける事も叶わない。




白炎帝。


『天空之覇帝』の義息であり、白炎を得意とし操る『超越者』。

かつては『白雷』や『白き戦聖乙女(ヴァルキリー)』等の異名で呼ばれている。こう語れば戦闘が高いだけだと思われるだろう。だが、一部ではこうも呼ばれていた。


『不可視の炎』


『蒼炎帝』


『煌炎』


そして、『全てを癒す者』。



『禁忌之命金剛石』を持つハクの両手から輝く翠のオーラが現れる。その穂のかに輝く翠のオーラは『禁忌之命金剛石』を包み込み赤黒い色も見えなくなるように覆われていく。



"ナ、ナンダ……コレハ……"



禁忌之命金剛石(ガアス)』は戸惑いつつもその優しいオーラを受け入れている。徐々に酷く赤黒かった色も汚れが落ちるように透明に変化していく。目を閉じながらハクは横にいた姫希に言い聞かせる様にこの『禁忌之命金剛石』について話す。



「(流石、『白炎帝』だな。その[治療術]……いや、[全癒]はこれまでに見たことはない。やはり神々からも認められし癒し手だということか。だが、まさか、『禁忌之命金剛石』の穢れをも癒し浄化するとは……)」



確かにハクの『全癒』は『この世界』でも唯一と呼んでいい程のものだろう。しかし、『全癒』とはいえ、不可能な事はある。それは死人を蘇らせる事、『全癒』の効果が凄まじく種族的な位で身体が持たないのだ。



「姫坊、さっきこれを生み出した奴がどうとか言ってただろ。それについては安心しろ。俺達が姫坊位の歳だった時に全て潰したぜ。でもよ……俺の親父を含め何千もの人の命が犠牲になった。『禁忌之命金剛石(これ)』に成り果ててな」


「助ける事……できないのか?」


「無理だ。何せもう死んじまってるからよ。残ったのは残留思念のみ。だからハクに頼んで浄化してもらうしかない」



既に死んだ者を生き返らせる事が出来ないのは姫希も理解している。だが、その『禁忌之命金剛石』はまだ生存しているかの様にも見えるから、金剛石となって閉じ込められている様だったのだ。しかし、マグナの事実を知らされた事に生きた救済の措置は不可能だと理解した。



「姫希よ。『禁忌之命金剛石(これ)』は吾輩やマキナが生まれるより前、古代の昔から存在していたのである。その太古の先人達は何故この様な物を生み出したのかは理由があるのである」


「うむ。カーズの言う通りだ。太古の先人達は何の理由もなく『禁忌之命金剛石(これ)』を作り出された訳ではない。作らなければならない理由が確かにあるのだ」


「理由……」


「姫希様……」



『禁忌之命金剛石』が作り出された理由について姫希は考え込むでしまう。人をこの様な『禁忌之命金剛石』にしてしまう事に理解ができなかった。そう考えていると横にいたミラが心配そうにしていた。すると[全癒]を行っていたハクが声をかけた。



「姫希。お前はまだ若い。けどね、これから確実に強くなるだろう。強くなるということは幾ら若いとはいえ、知らなければならない事実がある。子供でもね。それは理解しているね?」



姫希は黙って頷く。


ハクの言うことは確かにそうだろう。


日本の様な先進国、安全を保証された生活があるなら知らなくてもいい事実は多くあるだろう。その事実の中には大人になってから知る事がある。それを知る事によりその者達は衝撃を受け、心を病むこともあるかもしれない。子供にはまだ早いと見せられない物も必ずしもあるだろう。


だが。


子供だとはいえ、力を持つ者であれば理解しなければならない。


幾ら心が病もうが、泣き叫んでも目を背ける事は出来ないのだ。


姫希は『白炎帝』の孫であり、『不動明王』と『剣聖』の息子である……が、『落ちこぼれ』だと陰ながら言われていた。


(ひめき)にな実力がなかった。


だが、彼は諦めずに努力し続けていた。


正直な話、姫希は現実的であり努力でどうにかなるとは思っていなかった。


祖父である『白炎帝』、ハクや親友である『赤鬼』、マグナ達に御願いして修行を開始してからだろうか。その現実的な考えは既に無かった。いや、考える暇がなかったのだ。


血反吐を吐く等まだまだ軽い。


死を何度も経験した事は当たり前である程の辛く厳しい修行であったのだ。


そして気づいた時には『落ちこぼれ』という名は無くなっていた。


今では一流の冒険者として、地球では組織の真序列1位となっていた。


姫希は強くなった。


だからこそ、知らなければならない。


強者だからこそだ。



ハクは[全癒]で浄化を終えると透き通った美しくも綺麗な金剛石(ダイヤモンド)へと変貌を遂げていた。マグナに『禁忌之命金剛石』を渡すとまず最初にこう言った。



「姫希、もしもだ。もし、『禁忌之命金剛石』を見つけたら、浄化……は無理だろう。なら、必ず破壊しなさい」









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次回は戦闘に戻ります!

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