異変!
前回のあらすじぃぃぃ!!!
『ラヴィ登場!』
『性別?無いよ(ヾノ・∀・`)よ』
『支配の名は?』
「むぅぅ……。どうしたものかのぅ……」
ギルドマスターの部屋でイルディアは手を額にやりながら頭を悩ませていた。彼女は手元にある報告書を目の前の机に置くと溜め息をついた。
「(シキ……クロが屋敷に潜入して証拠をつかんでから10日は経った。ブーブルの屋敷は抑えたが……)」
彼女の悩みはブーブル公爵の悪事を働いていた証拠を掴んだものの、ブーブル本人が未だに捕まっていないのだ。ブーブル公爵の屋敷は既に王国騎士団が抑えており、そこにいたブーブル公爵の騎士達と盗賊達は全員拘束している。その拘束した者達から拷問をして何とかブーブル公爵が何処にいるかはわかっていた。
「『海神の神殿』か……。あそこには只深い迷宮の筈じゃがのぅ……」
『海神の神殿』とはブーブル公爵の領土であった場所に存在する複数の迷宮の中で最も深い場所である。しかし、その迷宮は海に突き出た場所に存在しており、危険度は高くないが兎に角深い迷宮だ。今現在、ブーブル公爵の行方を追うために王国騎士団と冒険者達で連携してその迷宮へ向かっているのだが、未だに連絡はついていない。恐らくまだ、捕らえていないのだろう。
「あとは捜索に出した冒険者と騎士団達が帰ってくるのを待つだけ……なのじゃが……」
待つだけなのに何か胸騒ぎがするイルディア。何かとてつもない『何か』が起こりそうな気がして不安なのだ。
そんな事を考えていると副ギルドマスターがノックをした後に入ってきた。
「ん?なんじゃ」
「ギルドマスター、シキさん達が来たのですが……」
「シキ達か。ここに来てもらってくれ」
「わかりました」
暫くするとシキ達がギルドマスターの部屋に入ってきた。メンバーはシキの他にリゼット・アルトレア・スミリア・シリルの5人である。マシロとクリム、そしてテイムモンスターであるクルルとネルクは[箱庭]で待機をしてもらっているのでこの場にはいない。
「何じゃ?シキ、わしに何かようかの」
「ギルドマスター、ブーブル公爵は捕まえれたのか?」
「……いや、まだじゃ。じゃが、捕まるのも時間の問題じゃの。ん?そちの獣人は……シキが保護した……」
「は、はい!シキさんの奴隷のシリルです!」
「おぉ……元気そうでよかったのぅ。それにお主の恋人達も元気そうでなりよりじゃ」
イルディアはシキ達を見ながらそう言うと座っていた椅子を降りて客用のソファーへと移動した。
「なぁ、ギルドマスターさんよ。何か悩んでんのか?」
「ほぅ?御主はリゼット、じゃったな。何故わしが悩んでると思ったのだ?」
「何て言うか……あんたの魔力が微妙に乱れてるんだよ」
「わしの、魔力が?(何じゃ、この者。前と会った時とは別人ではないか。人の魔力を見るだけでなく乱れで精神状態を読み取るとは……。しかもリゼットだけではない。他のアルトレアとスミリア、そして奴隷のシリルまでもが前に会った時と雰囲気が違う……)」
イルディアは種族進化の可能性ではないかと考えたがあの短期間で進化することは不可能と思っていた。しかし、不可能とは言え目の前に座っているシキを見るとこの者ならその不可能を可能にすると理解する。その種族進化は半端な努力、どれだけの『勇者』等の才能がある者達でも最短でも半年は掛かるだろう。それを可能にしたシキのやり方に気にはなったがその内容を聴くのが恐ろしく感じてしまったのでこの事はとりあえず置いておく事にした。
「実はの……」
悩み事についてはシキにもお見通しだと思いイルディアは何か言おうとするのだが、それを遮る様に大規模な地震がディーサルヌ王国を襲う。
ーーーゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!
「なっ、何じゃっ!?」
この世界でも地震はあるのだが、これ程の揺れは今までに感じた事の無いものだ。大地に突き上げられる様な左右ではなく上下に激しく揺れるもので部屋にあった本棚や置物が倒れ、窓のガラスは軋みながら割れてしまっている。
揺れは約10分程続いて収まったが窓の外でも被害はあった様だが部屋の中では本棚や置物、割れたガラスの破片は地面に落ちる事なく時間が止まったかの様に停止していた。
「なっ!?」
物が倒れる寸前で停止しているのはシキが『無重力』を使ったからだ。[重力魔法]で本棚や置物を元に戻した。砕け散ったガラスの破片はシキの右手に集まり凝縮されると一つの綺麗なガラス玉に変身してきた。そのガラス玉を掴んで机に置くとシキは焦った様に呟いた。
「地竜王の言った通りになってしまったか」
~~~~~
「グフフフフッ!!!やっとだっ、やっと……」
歩く豚と言った表現が正しいかもしれない人物、ブーブル公爵は『海神の神殿』の最深部より更に下。所謂隠れ大部屋にいた。彼の後ろには魔法か何かで爆発されたかの様に大穴が開いていた。
「よくやった!よくやったぞ!ラバス!お前の魔法が無ければここまで辿り着けなかっただろう!このワタシが王になった暁にはお前を大臣とするのを約束しよう!」
ブーブルが後ろに振り向くとそこには全身青と黄色の鎧を来た騎士がそこにいた。それだけなら只の騎士だと思うだろうがその騎士には片腕が無い隻腕の者だ。彼以外の者達はここに辿り着く前にモンスターや罠で亡くなっている。
「グフフフフッ、この王国は、『海の勇者』の末裔であるこのワタシが手にいれーーー」
「ブーブル公爵様……いや、ブーブル。貴様はもう用済みだ、死ね」
隻腕の騎士は盛り上がって興奮気味のブーブルに向かって槍の様に腕を突き出した。そしてブーブルの腹には白い鎧の手が生えながら、そこから血の花びらが舞い上がる。
「ガハッ!?……何故だ……ラバスッ!」
「悪いな、お前が言うラバスなんていない。俺の名はラバラス!」『七天魔皇』の一人、といった方がいいな」
「……まさ……かっ!」
「その通りだ。貴様が産まれる前からラバスとして『海の勇者』の一族である力を利用する為に潜入していたのだ。この『七天魔皇』でたる俺でも『海の勇者』の結界は解除できぬからな。礼を言うぞ、ブーブル・タントーン。その貴様の黒髪黒目は目障りだ、楽になれ」
「ガッ……!?」
地面に倒れたブーブルの首を跳ねた後ブーブルの懐にあった『支配の宝玉』を手荷物とこのフロアの奥にある泉へと向かう。その泉の中心には蒼白く大きな宝石があるのだが、その中に何かがいる。まるで胎児の様にくるまっているようだ。
「フハハハハ!あのガルディアスを支配下に置くことはできなかったが、次は『海の支配者』を支配下すれば!『七天魔皇』で最強になり!この世は俺の物になるッ!……ガルディアスはラースに頼んだのは愚かだったが、やはり俺自身がやれば容易いことよ。さて、『海の支配者』を手に入れる前には、そこにある『卵』を支配すれば……」
ラバラスは右手にある『支配の宝玉』を泉にある宝石に向けて掲げる。その『支配の宝玉』から禍禍しいオーラが放たれるとその泉に浮かぶ宝石に纏っていく。
しかし、そのラバラスがした事は自分自身を破滅に追い込む事になるとは思いもよらなかっただろう。
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