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事前に説明してくれてもいいじゃないか!

 ここで俺はのようにこれまでの経緯を頭に浮かべていた。

 このゲームのダンジョンと呼ばれているもの、そこに偶然であった人物に驚いて俺は逃げ込んだ。

 そもそも何故、どうして姉さん達がいるんだ、買い物に行ったんじゃないのかと俺は混乱していた。


 だってここはゲームの中というか異世界で、そんな場所に居れの兄弟がいるとは思えない。

 なのに俺を見て俺の名前を彼らは言ったわけで。

 どういうことだ、これは一体どういうことなんだろう。


 繰り返し呟きながら考えてみるが答えは出ない。

 そもそも俺の持っているこの世界の情報が少なすぎる。

 ゲームについては知っているが、この魔法の使い方も含めて、知らないことだらけだ。


 しかもこの逃げこんだダンジョン。

 この変なおっさんが言うには、“虹の破片結晶”がないとこのダンジョンから出れないらしい。

 なんだその“虹の破片結晶”って。


 そもそもそのダンジョンに入る前に説明とかないのかよと俺は思った。

 思って耐え切れずそのおっさんに向かって、


「不親切すぎるだろう……せめてどんなアイテムなのかを事前に説明してくれてもいいじゃないか! ……あれ」


 そこは草原だった。

 ゲーム内では見覚えのない世界。

 まだクリアしていないダンジョンの世界なのかもしれない。


 そこまでは良いのだが、先ほどまですぐ傍で説明していたおっさんがいない。

 ダンジョンという名の世界に入り込んだらいなくなるとか酷過ぎるだろう、そう俺は嘆息した。

 周りを見回すとただただ草原が広がっているばかりで、遠くに森が見える。

 

 少し離れた場所で土のむき出しの道が見える。


 あの道を歩いていけば人のいる場所に辿り着くだろうか。

 俺はそう思ってその道に向かって歩き出そうとした。

 そこで、音が聞こえた。


「爆音?」


 ゲーム内で爆発するような魔法を使った時のような音だ。

 その音の方角を見ると、噴煙ががあがっている。

 それがだんだんと俺の方に近づいてきている。


 ちょっと待ってくれ、初戦闘かよ。

 というかカードの使い方は!?

 俺はそう不安を覚えているとその間にも更に音が近づいてくる。


 近づいてくると空飛ぶ蛇の様なものが口から火を吐きながら女の子を追いかけている。

 女の子は二人。

 赤い髪に青い瞳の、ポニーテールの活発そうな少女。

 もう一人は薄水色に紫の瞳の短い髪の大人しそうな少女だ。

 

 どちらも普通よりは可愛い、美少女などを家族的な意味で見慣れている俺の目にも美しく見える。

 そんな彼女達は、髪の色ににあった魔法を使っている。

 現に赤い髪の少女か、炎の矢の様なものを三本同時に蛇に打ち付けて、それでもものともしないとなると水色の髪の少女が氷の矢を打ちつける。


 けれどそのどちらも蛇にはそれほど聞いておらず、口から炎を放出している。

 どうやらあの爆音は少女達が攻撃している音であったらしい。

 とはいえ先ほどの魔法を見ていて俺は自分の魔法では太刀打ちできないと思う。


「カードを使うとどうにかなるのかもしれないが、現状では関わらない方が良いよな。それよりもまずは紙を手に入れないと」


 そう俺が呟いた所で……目があった。

 あの二人の可愛い女の子とならば、まだ報われるような気がする。

 けれど俺が目があったのはあの、空飛ぶ蛇とだ。


 蛇の表情は分からない。

 けれど俺は、“嗤った”と思った。

 簡単に倒せる獲物だと。

 俺はここから今すぐ逃げなければ、と思った所で蛇の動きが速度を増した。


 あの少女達を無視して俺を目指してくる。

 な、何で俺なんだ、そもそも俺が一体何をした、そうか、夢か、夢……。

 現実逃避している俺に、赤い髪の快活そうな少女が叫ぶ。


「危ない! 狙われているわよ! ……この!」


 そんなのは言われなくても分かっている言い返したかったが、そこで彼女が炎の矢を放つ。

 だがそれでも蛇の動きは止まらない。

 そして目前まで迫ったその蛇の口が俺の目の前で大きく開かれて、そこで、


「魔法、パーンチ!」


 突如現れたあのおっさん、“ハイパーエンジェル・ラブピース”によって下からパンチをくらわされて吹き飛び、その蛇は消滅する。

 後には赤色の石が一つ落ちてきたのだった。









 その赤い石を拾いながら俺は、何となく魔力がある気がした。

 あくまでも感覚だし魔法なんて本日初めて使った俺だが、この赤い石から魔力を感じた。

 そこでおっさんが俺に振りむいて、


「全く、もう少し気を付けて頂かないと困ります」

「いや、いきなりこんな世界に連れてこられたんだから仕方がないだろう! お前もいなくなるし!」

「いえいえ、やはりご自身の道はご自身で切り開いて頂かないと。ですが私は何時でも見守っていて死にそうになったら何とかしますのでご安心ください」

「……もういっそ、崖から飛び降りてやろうか」

「お姫様だっこがよろしいでしょうか」


 男にお姫様だっこされる展開なんて御免だと俺は思った。

 しかもこのおっさん、異世界の神であるムキムキ角刈りな“ハイパーエンジェル・ラブピース”いかがわしい相手に。

 俺が心の中でつぶやきんがら早く家に帰ってゲームをしたいと心の底から思っていると、そこで“ハイパーエンジェル・ラブピース”が、          


「では後はご自由に。そしてそこにいる女の子全員をハーレムにするのです」

「……もうどうでもいい話は、ほどほどにしてくれ」

「残念ですね、では!」


 そういって、あの謎のおっさんは消え去った。

 本気でどうしよう、ああそういえば、“虹の破片結晶”を探さないと俺はここから出られないのかと嘆いた。

 そんな俺に近づく人影が一つ。


「ねえ、貴方。それを渡してもらえるかしら」


 赤い髪の少女が、瞳に不穏な気配を漂わせて俺に微笑みながら問いかける。

 この表情は姉ちゃんに、無理やり買い物に付き合わされる前触れの顔だと俺は気づく。

 断ればどうなるのかが分かった俺は、


「これか? 渡してもいいけれど、二つお願いがあるんだ」


 そう告げると更に彼女は笑みを深める。 

 そんな彼女に俺は、


「この世界から抜け出すための“虹の破片結晶”をもしもっていたなら貸してほしい、後、紙が欲しいんだ」


 そうお願いしたのだった。

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