第一部完
そして中に入った俺達だが、魔物に次から次へと遭遇する。
それを新品の剣で攻撃を開始する火瑠璃と氷子。
良い剣が手に入ったとの事でなかなか手際が良い。
その間に俺はカードの魔法を使って、すぐにまたただの紙に戻ってしまったそれに魔法を込めて行
く。
七枚のカードを使い分けていくが、あまりにも魔物が出現しやすくて面倒だ。しかも、
「おい、ティース、少しは働け」
「いや、何か俺がいなくても大丈夫そうだしな」
「……少しは手伝え。餌の代金分くらいは」
「……そうだな、食事の分くらいは頑張ってみるかな。体もなまるし、軽い運動でもするか」
そう“フェンリル”のティースは大きな欠伸をしてから、走り出す。
黒い影が高速で過ぎ去ったようにしか見えないが、今、目の前にいるネズミの様な形をした、俺の膝ぐらいの大きさの魔物を一気に倒して。
「きゃああっ」
「やぁああっ」
その風でさりげなく、火瑠璃と氷子のスカートをめくっていきました。
本日は、青い下着と黒い下着です。
ですが俺は二人にじろりと睨まれたので俺は知らん顔をした。
そして更に俺達は深くに潜っていく。
階段や明かりなど、そういったものは古いようだがきちんの使えるようになっている。
途中でお掃除用の魔法ロボットの様なものが走っていった。
うっかり間違えて攻撃してしまいそうになったのだが、何でもそういった謎ロボットの様な魔法装置があるらしい。
そしてそれが機能しているから、こういった遺跡に入っても大丈夫なのだそうだ。
しかもこのロボットの様な物を壊しても何故か再生されるらしい。
だったら多少壊しても大丈夫な気がするが、
「有限みたいなの。そしてこういったものが機能しなくなるとその遺跡は壊れてしまうから使い物にならなくなってしまうのよ」
嘆息するように火瑠璃が言うので、なるほどと俺は頷いた。
しかし、ほろんだ高度文明とか、SFのディストピアっぽい描写はあまり好きじゃないんだよなと心の中で思いつつ、でも、面白い話もあるから一概にそうとは言えないかとも思う。
そうして更に奥の方まで進んで行った所で、あの狐耳の少女が現れたのだった。
どうやら待ち伏せしていたらしい彼女だが、俺ににこりと笑って挨拶をする。
それに向かって俺も挨拶するが、そこで火瑠璃が、
「どうしたの? アキト、立ち止まって」
「……見えていないのか?」
そういえばあの食堂にいた時も皆も気づいていなかった、と俺が思っていると、
「失礼します」
そう告げて少女が目にもとまらぬ速さで飛びあがり、何も分かっていない火瑠璃へと向かい、そこで俺は火瑠璃の手を掴んで後ろに放り出した。
「きゃああっ」
大きい声を上げる火瑠璃と、氷子は目を見張っているが、そこで俺は、
「氷子、ここ周辺を凍らせてくれ!」
「! 分かりました」
同時に呪文を唱えて、周辺の地面が凍るが、その冷気は俺達の足をも軽く凍らせるのは良いとして
、
「む、うみゃああ、尻尾が!」
そこで地面にくっつきそうなくらいない少女の尻尾が、先端部分だけ凍りつき、それに驚いたあの狐耳の少女が姿を現したのだった。
現れた狐耳の少女に、火瑠璃が、
「舞風、なんでここに?」
「別に、たまたまここにいものが眠っていないかなと覗きに来ただけです。そうしたなら貴方達がこ
こに来たので、丁度いいから奪ってやれと思っただけです」
「……子供の場合、保護者がいるはずでしょう?」
「凪の事ですか? 姫が怪我するのはとうるさいので巻きました。魔力のある“姫”の中でも強い方の私が、遠慮なんてするはずないでしょう?」
そう言って笑う少女だが、いつもの俺に見せていた朗らかさはまるでない。
それに火瑠璃が睨みつけながら、
「……あんたの所はこの戦いに勝利しなくても平気でしょう?」
「だって私が待得た所で私に何の得があるというのかしら。それなら、戦って勝利した方が楽しいじゃない」
「私達の国にある剣も、本当に制御できると思っているの?」
「ええ、だって私達の国には豊富な人造魔石を作る者たちも含めて、魔石の鉱山もありますし、魔法技術も遺跡から回収したものが多数ありますもの」
「それは貴方の過信じゃなくて?」
「過信できるだけの実力がありますわ」
幼女なのに、この狐耳の少女は容赦がない。
それとも子どもゆえの残酷さだろうか。
だが、子供であるのならば、
「今の話を聞いていて思ったんだが、一ついいか?」
「あ、はい。どうぞ」
何故か俺にはにこにこと幼女が対応してくれる。
どうやら俺の事は気に入っているらしい。
そんな子の少女に俺は提案して見た。
「油揚げの煮付けたものが、気に入ったみたいだな。あの舞風が好きな食べ物、茶色くて平べったい……」
「はい! あの後も凪に作ってもらったけれど、貴方ほど美味しくはできませんでした」
「ちなみに油揚げには、他にも食べ方が色々ある」
「な、そうなんですか? ぜ、是非、知りたいです」
「じゃあ交換条件でそのバッジをくれ」
狐耳の少女が沈黙した。
何やら絶望的な表情になっているが、俺は更に囁く。
「ここで交渉が決裂したら、二度と俺は舞風のために油揚げの煮たものは渡さない」
「そ、そんな……」
「色々新作も試そうと思っていたのに俺は残念だ」
「ひ、酷いです、そ、そんな話を聞いて私が頷くと思ったのですか?」
「本当に酷いよな。それで、どうする?」
その囁きに、この狐耳の少女、舞風は自ら敗北を宣言したのだった。
こうして仲間になった狐耳の少女、舞風だが、
「でもあそこで降参しなかったら、どうしていたんですか?」
「“フェンリル”のティースに奪ってきてもらう予定だった。動きも速いし、舞風の動きも見えるし」
「なるほど……というか、火瑠璃お姉ちゃん達は役立たずですね。これではお兄ちゃんは簡単に奪えそうです」
「なんですって?」
そう告げた瞬間に、火瑠璃と舞風が喧嘩を始めた。
口喧嘩から始まって実力行使に変わろうとした所で俺は止めたが、氷子曰く、何でも昔からこんな感じであるらしい。
「仲が良いんですよね」
「「そんなわけない!」」
と、二人で返してきていた。
タイミングもバッチリで、やっぱり中が良いのかと俺は思う。
そして舞風に、姿が見えなくなったりする能力を聞くと、風系統の“空気”を操る力を使っている
らしい。
視覚の捕らえる事が出来る光の波長は、物体に吸収されない波長、つまり反射した波長なので、そ
れを空気の屈折を利用して背後の映像を自身の周囲に浮かびあがらせているらしい。
面白い技だなと思っているとそこで、
「それでお兄ちゃんの魔法はどんなものなんですか?」
「ああ、カードを使った魔法だ」
またしても変な顔をされてしまう俺。
やはりこの世界に存在しないものは奇妙に見えるらしい。
そう思った所で火瑠璃が、
「現状の最深部についたわよ。そして守人のゴーレムがいるわね」
そう緊張したように告げたのだった。
その守人であるゴーレムは、大きな石がつぎはぎされた人形の様な形をしている。
その石は灰色の大きなものなのに、立ち上がる仕草も俺達と同じようで、走る速度も俺達よりもやや早い。
額の辺りに赤い石が張りついているが、それが弱点なのだろうか、などと考えている内に俺はカー
ドを取り出し、珍しく“フェンリル”のティースも攻撃を開始した。
それも含めて、火瑠璃達の一斉攻撃もあって、どうにか一体はゴーレムを倒せた。
ちなみに額の赤い石は弱点ではなかったらしい。
けれど一体を倒して安堵していれば遠くから、ドシン、ドシンと重いものが移動する音がする。
「ちょ、何体も来ているじゃない!」
火瑠璃の悲鳴はもっともだと思う。
けれどだからと言って素直に頷いている暇があるなら攻撃を続けたほうが良いが、一度カードを使えば、それに再び魔力を込めなければならない。
そのわずかな時間が、火瑠璃達の負担になる。
しかも魔力には限度があり、この中では一番魔石を持っていたらしい舞風だが、
「量多すぎるよ! 何でこんな沢山……」
そう悲鳴を上げる。
しかも動きが早いので、逃げるのも難しい状況だった。
けれど背丈がほんの少し違う俺には、その遠方で数が途切れているのが見えた。
つまり今、ここに見える範囲の敵、10体以上を倒してしまえば終わりだ。
そして今の所あの変なおっさんの異世界の神は出てきていないって事は、同意にか俺にできる状態なのだろう。
「というか、今こそあの新技を試す時なのか?」
「ちょ、アキト、ぼんやりしていないで手伝ってよ!」
火瑠璃に言われて俺は、そうだなと頷いてからカードを一枚、高く手を伸ばして掲げた。
そして、確かこのカードは時空系の魔法で作られているんだよな、と思いながら一気に下まで降りおろす。
実はまだそこまでできる自信はなかったのだ、もし失敗しても自分が囮になって、危険な目に会えばあの異世界の神が召喚できる。
そういった打算があったからだ。
そして結果だけを見れば、俺の推測は当たっていたらしい。
振りおろしたそのカードは、15枚程度に増えて空中で停止している。
「“発動”」
その一言で、カードから一斉に魔法攻撃が発動されて、そのままふゴーレムの一群をせん滅したのだった。
最後に使った魔法を問い詰められたので、俺は火瑠璃達に説明する。
「“時間”は、幾つものその“時間”の連続体である、つまり神に絵を描いて連続して移動させると動いて見えるような状態が起こっているわけだ。でもその微小な時間で分けていくとその時空間上には、このカードは一つしかないけれど、空間を操作する事によってその空間をとどめればそこにはこれが一つ存在しているから、複数の時空間で固定したカードをこの世界に示した。だから一枚が15枚になったわけだ」
そこまで説明した所、意味が分からないからそれ以上説明しなくていいと俺は言われてしまった。
そして、そこの奥の資料からカードを作るヒントを得たらしい。
また、その場所で俺が戻るのに必要な“虹の破片結晶”を手に入れる事が出来たのだった。
火瑠璃達の約束があり、俺は一度帰還してもまた、この世界に戻る事になっていた。
目が覚めると元の俺の部屋に戻っており、夢かと思ったがすぐにあの異世界のおっさんに現実だと教えられた。
「というわけでこれからもよろしく」
だそうだ。
でも火瑠璃達にまた会えるのは嬉しいと俺は思っていたから、それは特に嫌な感じはしなかった。
他にもまだまだ知らない事はあり聞きたい事もあるのだが異世界のおっさんは逃げてしまう。
さしあたって気になるのは、
「俺の家族のあの感じだよな……」
もうすぐ夕食というこの時間。
俺は、まず家族の秘密について色々聞かねばならないと思うけれど。
「でも俺を必要としてくれる人もいるってことか」
それも俺だから、と思うと何となく嬉しい。
そこで俺は夕食に呼ばれる。
今日が新たな始まりだと、俺は思ったのだった。




