必要のない時ばかり
そんなわけで俺はその日は特に狐耳の少女にあった事を気付かれずに済んでいた。
そしてその夜はいつもよりもぐっすりと眠れたのだが、次の日。
何者かの気配を感じて俺は、目を覚ました。
目の前には筋肉質な足とすね毛が見える。
もちろん男の物だ。
朝から眺めるにはあまり気持ちの良くない代物だと俺は深く嘆息した。
そんな俺が起きた事に気付いたらしく、声が聞こえた。
「ふむ。大分この世界に適応したようですな。この調子で幾つもの世界にまたがり頑張りましょう」
異世界の神“ハイパーエンジェル・ラブピース”だと俺は即座に気付いた。
そして彼の中でこの世界の人間であることが決定づけられかけている気がしたので俺は、
「……いや、俺、適応していないので元の世界に帰ります」
「彼女達を置いてですか?」
「……」
「いえ、大丈夫です、今は彼女達がおりませんしね」
「……二人の手伝いはする。それだけだ」
そう言い返す俺に、ふむとその異世界の神であるおっさんは頷き、
「ハーレムにする気になったと?」
「そういうわけじゃない! 確かに火瑠璃は可愛いし氷子だって美人だけれど、そういうんではなくて……」
「もう少し肉食系でもよいと思うのですが仕方ありませんな。ふむ。ですが今は彼女達のお手伝いをするので良しとしましょう!」
「ああ、そうしてくれ。話しているだけでも俺は疲れた」
「はい、では他に何かありますか?」
それを聞きながら俺は、もう少しこの魔法というかチートを何とかしたいと思った。
やはりこの魔法は特殊すぎて目立ちすぎるのだ。
「この魔法を別のチートに出来ないか?」
「おや、気に入らないのですか? ようやく少しずつ使いこなせてきているように感じましたが」
「この世界の人間はこんな魔法は使えないだろう。だからもう少し普通っぽい魔法が良い」
「そうは言われましても根、余り沢山の能力があっても使えこなせませんし、魔法初心者の貴方にはこれが使いやすいんじゃないでしょうかね」
確かに魔法なんてゲームやの世界くらいしか魔法の経験がない。
でも、だからと言ってこの魔法は特異すぎるのではないか?
「このカードの魔法は、変な魔法に思われる」
「そうですか? ただの時空魔法な気がしますが」
「時空魔法は特別なのでは?」
「特別といっても話しには伝わる程度ですからね……それにそういった遺物の様な物も、遺跡から出てくるのもありますから、そこまで珍しくはないと思いますよ?」
「でもカードがチートだから、変に思われるのでは?」
「貴方の才能の一部を目覚めさせているだけなので、それも神である私の力によるものなので、公式チートですかね」
といった話をしていて気付いたのは、何だかんだ言って、この異世界の神はこのチートを変えるつもりはない様だという事実だった。
そんな俺は異世界の神に、
「それで、カードの魔法は変えてもらえないと」
「ええ、それは“いいもの”ですからね。“いいもの”をきちんと評価して見抜いて使って行かないと、その内、玉ではなく、ただの石ばかりを掴み続ける事になりかねませんからな」
「……分かった。それに必殺技もまだ使っていないからな」
「おや、どんな技ですか? 選択画面の物だけではなく?」
「秘密だ。誰にもまだ言っていないし」
その内使って見たい技で、とっておきなのだ。
時空魔法ならではの魔法だと思う。
そこでこの異世界の神であるおっさんが、
「ではまた様子見に来ますので……といいますからそろそろ帰還するのに必要な物を取りに行ってもよさそうですね」
「……もしも、俺達がそれを無視してその遺跡に向かったらどうする気だったんだ?」
「わが神としての力を使い、ありとあらゆる“エロイベント”を勃発させます」
「……」
「それはもう、少年向けラノベでは書けない様な限界突破、展開につぐ展開といった所でしょうか」
「……」
「いや~、仕方がありませんね。これは必要な処置なのですね」
「……」
「それでは、また来週~、ではなかった、また今度ですね~」
そう言って、俺が無言に冷たい視線を送っていたのを無視して、言いたいだけ言って異世界の神であるおっさんは消えた。
あの瞬間移動能力は俺もおしいなと思いながらそこで俺は、火瑠璃に呼ばれたのだった。
朝から仕込みをしようと思ったのだが、今日もまだ調理場の火加減がおかしくて、今日は一日休業らしい
。
それを聞いた火瑠璃が、
「よし、あの遺跡の資料を探しに行きましょう! ついでに、私の剣も! アキトがいるからつい、剣なしでもいい気がしていたけれどあった方が良いわ」
そういえば、火瑠璃の持つ剣も折れたとそこで俺は思い出した。
何でも中古の件が売っている場所でそこの方が安くて良いらしい。
劣化していそうな気もしたが、その分権一本で二本分買えるのだそうだ。
そのうちの一本は俺にくれるらしい。
「お、おそろいの剣とかあるといいわね」
「双剣使い様の剣とかか? 確かにいざとなれば二刀流で戦えるか?」
なるほど、火瑠璃の考えはもっともだなと思っていると、何故か氷子がおかしそうに笑っていた。
そしてティースも、
「ふう、アキトはまだまだだな」
「何がだ?」
「いや、うん、このまま生温かく見ていくぜ」
などと、“フェンリル”にまで言われてしまった。
人間のみならず、何だそれはと俺は思う。
そんな話をしていると、近くの武器屋にすぐに付いてしまった。
剣と楯、槍と杖の看板がついたこの青い屋根の店に入っていく。
中にはファンタジーで見る様な剣などが大量に並べられており、その名じゃには大きな入れ物に中古品と書かれた件が積まれている。
中古品の武器のワゴンセール。
そう俺は異世界のバーゲンセールの様な物を見つつも子の中からhりだし物を探していく。
各々の場所で手分けしていい物を探そうという事らしい。
だが、俺は剣の素人なのでどれがいいのか良く分からない。
考えるな、感じるんだ、そう心の中で呟きながら探していると……赤くうねった模様がつかについた剣、それも二種類見つける。
何故か気になりそれを取り出して火瑠璃に見せながら、
「こういったのとかどうだ?」
「! 何処にあったの? しかもこのお値段なんて」
中古の剣の中からどうやら俺は掘り出し物を見つけたらしい。
何となく火瑠璃に似合いそうだからと選んだ剣は、お眼鏡にかなったらしい。
ついで蒼と水色の付かに何かが書かれた気になる剣を見つけたのでそれを氷子に見せると、
「そ、それは!」
「氷子、何だそんな顔をして」
「す、素晴らしい、これは是非欲しいです。しかもこのお値段!」
どちらも金貨一枚だったので、この前の“フェンリル”をどうにかした礼金で十分に支払えた。
そこで火瑠璃が、
「アキトは他に武器っている? 私が二本使う時でも予備があった方が良いし、男の人だから二本くらい持てるだろうし。武器が多く持っていたほうが安全だと思うのだけれど」
「……そうだな。じゃあそこにある短剣で」
この中で一番軽そうなものを選び購入する。
そして折角なので、紙を切るナイフも購入した。
理由は、カードを作る紙を半分に切れば二倍だと気づいたからだ。
そんな個人的な事情は置いておいて、ここの周辺の情報が手に入るこの街の役所に向かった。
そこには遺跡についての情報もおいているらしい。
そして、移動しながら俺はふと思う。
俺に都合がよく動き過ぎている。
これはもしかして無意識に心を支配する魔法でも使っているのだろうか?
ハーレム作れとあの異世界の神は言っていたようなきもするし。
この今の居心地のいい関係ももしかして俺が何か魔法を使っているからだろうか。
だったらどうしようという不安が生まれ、でも、本当に使っているし使えるなら、そばにいるこの二人に、俺を好きになれと念じてみれば効果が分かる。
前と変わらなければそれで良いし、もし違っていればそれは効果がなかった事になる。
なので試しに念じてみたが、そこで俺が火瑠璃を見ていたのに気づいて、
「な、何よ」
見ていたのが火瑠璃に気づかれてしまった。
俺は念じているなんて言えないので、
「いや、可愛いなって思って」
「な、何よ。もしかして彼氏になってくれるの?」
「いや、いい」
なぜかまた断ってしまい、火瑠璃の機嫌を損ねてしまった。
可愛いし、ハーレムという能力の中でまっ先に試してしまうのが火瑠璃だった。
何でだろうなと俺は思っていると、氷子に、
「アキト、それはさすがに酷いと思いますよ」
「いや、でも俺この世界の人間じゃないし」
「……アキト、もしかして感情が一部欠落していますか?」
「? そうなのか? 未だにゲームの世界なことといい、現実感がなくて、ぼんやりしていて」
確かにこの世界は俺にとって不思議な世界のままだ。
それとも意識的に色々と考えないようにしているのだろうか?
よくわからないなと俺は思って、でもこの様子だと、“好き”といった風に好感度100%な感じにはならないので効果はなさそうだし、俺が魔法を使って関係を結んでいないと気付く。
それが俺には何よりも嬉しくて、
「でもまあ、火瑠璃たちに会えてよかったと俺は思っているよ」
「……こうやって期待させやがって、嫌になるわ」
火瑠璃が仕方がなさそうに笑う。
もしかしたら、魔法なんて無くて、好感度が少し高いのかもしれない。
それが俺の顔に出てしまったのか、
「アキト、何でそこで嬉しそうなのよ」
「いや、うん、一緒にいると楽しいなと思っただけだ」
それに火瑠璃だけでなく氷子も苦笑してから、けれどすぐに氷子が真剣な表情になり、
「でも、感情が少し欠落はしているかもしれません。異世界に来る事による精神的な変化については、一度あの、異世界の神様にお話を聞いておいたほうがいいかもしれませんね」
「そうだな……危険性を考えるとそうだ。でもそれには俺が危機的な状況になるのが一番なんだよな。今朝来た時に聞ければよかった。必要で無い時ばかりあいつは来るな」
そう、俺は嘆息したのだった。




