冗談だと思われてしまった
“燃料石”の採掘場までやってきた火瑠璃達。
そこそこ人が多い。
ここは自由に採掘できるこの街の管理下にある遺跡だったりする。
日常的に使うものなのでこの街の人達に共有化されているのだ。
だが、妙に量が少ないというか……。
「小さな欠片が多いわね。少し掘ってみたほうが良いのかな? 周りの人達もそうだし」
「そうみたいだね。……どうりで売っていないはずだよね」
困ったように氷子が呟く。
それは掘ったとしても“燃料石”が出てくるのかということだ。
炎の系統の魔力がここは主になっているようだが、それの影響もあるのか、その“燃料石”といった素材は遺跡のによって生成されていることが多い。
そして出てこなくなっているというのは遺跡が少し動きがおかしいということにもなりうる。
「遺跡がおかしいから、先ほどちょっと強めの魔物が来たのでしょうか?」
「……確かに冒険者の素養がある子供なら取ってこれる、だったわよね。その割には何だか強かった気も」
そう火瑠璃と氷子が話しているとそこで、近くで掘っていたおじさんが声をかけてきた。
「お嬢ちゃん達は、何かいいものでも掘り当てたかな?」
「いえ、全然。“燃料石”がほしいのですがないですね。でないと調理場が直せないんですよ」
「それは大変だ。お嬢ちゃん達のお店にはたまに行くが、あそこは美味しいからな」
「あ、いつもありがとうございます」
火瑠璃と氷子はその時々食べに来るおじさんに、ペコリとおじぎをすると、彼は、
「いや、時々だから。気を使わせたかな。でもあそこは安くておいしくて、最近は変わった美味しいものがあるんだろう? ぜひまた食べたいな」
「はい、また来ていただけると嬉しいです」
「そう言ってもらえて嬉しいよ。そうそう、話しておこうと思ったことがあったんだ」
「話しておきたいこと?」
「うん、ここに人がやけに多いと思わないかい?」
おじさんに言われて、火瑠璃は周りを見回すと、まるで待っているかのように地面に座ったり立ち話をしている人達がいる。
妙に人が多い気がする。
手に入らなければ掘るし、掘っても無理そうなら人は帰りそうだ。
なのに待っている人達が沢山いるのはおかしい。
まるでこれから“燃料石”が大量に出てくるかのように見える。
そこでおじさんが肩をすくめて、
「実はさっき、伝説の“六賢人”の一人、ユリカが来てね。たまたまここにたどり着いたらしくて、ちょっと遺跡の動きが悪いから調整しに行く、と言って奥の方に行ったんだ」
「! そうなのですか?」
「ああ……何だか揺れていないか?」
おじさんがそう呟くのを効き、火瑠璃は周りを見る。
確かに小さく揺れているようだった。
離れたほうがいい、誰かが叫んで火瑠璃達はその場から少し離れると……妙な音がした。
ボコボコっ
何かがむき出しになるような音がして、灰色の壁から黒いものが現れてくる。
正確には赤黒いそれだけれど、それは四角い物をいくつも連ねた形で、まるで水面に泡が浮かび重なりあって大きくなるがごとく生えてくる。
そしてしばらくすると、動きがなくなった。
「“燃料石”だ、復活したぞ!」
誰かが叫ぶのを聞いたのだった。
火瑠璃達が帰ってきた。
丁度俺は温かい紅茶を入れている所だった。
なので火瑠璃達に聞くとごきげんなふうな彼女は、いると元気に答えた。
なのでその紅茶を、火瑠璃と氷子に渡し、
「おいしいドーナツを売っている店があったから、買ってきた。食べるか?」
「「食べる!」」
二人揃って大きな声で答えた。
持ち帰りの5個セットだとほんの少しお値段がお安いのだ。
それを購入した後俺は、今日は降られて帰ってきていじけるであろう“フェンリル”のティースに、変わった肉を買ってきた。
それ購入し戻ってくると、すでにティースは戻ってきていたが、部屋の片隅で一人座って床を見つめていた。
だいたい何があったのかは分かったのでそれ以上は言わず肉を差し出すと、
「あ、哀れみなんていらないんだからな!」
「……肉、いらないのか」
「……くう」
そう答えて、もさもさ肉を食べ始めたが、
「何だか上手いなこの肉」
「もさもさ羊の肉というらしい」
「ああ、そのお前が着ていたコートの……」
「そうなのか? それで美味いか」
「美味い」
ティースはそう答えてもぐもぐと食べ終えてそのまま毛布にくるまって眠ってしまう。
ティースも色々と大変なようだった。
そう思いながら俺は、それから自分用に紅茶を淹れていたのだが、火瑠璃達が帰ってきたので彼女たちの文を作って手渡したのだ。
そこで俺はある話を聞いてしまった。
「“六賢人”? 伝説の」
「うん、そうそう。まだ一度も出会ってないから、一度くらいはあってみたかったけれど、ちょっとまっても来なかったから帰ってきたの。また遭遇できるといいな」
「そうだな」
俺は至極もっともそうに頷いた。
完全にあの時の記憶は、火瑠璃達からは消えているようだ。
だが火瑠璃があってみたいなと行っているのを見ると、何となく罪悪感を感じてしまう。
やはり記憶消去の魔法は極力使わないようにしよう、そう俺は思った。と、そこで、
「でも遺跡を直すなんてすごいよね。どうやっているんだろう」
「多分、叩いて直したのではないかと」
「まさか~、アキトは面白い冗談をいうね」
火瑠璃がおかしそうに笑うのを聞きながら思った。
ユリカ姉は大体いつもそんな感じだ。
だが夢を壊すのも気が引けたので俺は、それ以上は何も言わなかったのだった。




