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とある休日にて

 どうやら今日はこの世界の休日であったようだ。

 調理場関係でお手伝いができない俺は朝から街に出てふらふらしている。

 そういえばこういった異世界の町並みをゆっくり観察したことは一度もなかった。


「ゲーム内のものとは違うんだな。正確にはこの街関係が“無かったから”だが」


 ゲームと言っても全ての町並みが作らえているというわけではない。

 確かに移動に日数はカウントされるが、現実の時間と同じように時間変化するゲームでは無かったはずなのだ。

 俺のは。


 そうなると必然的に、歩いている道などは俺にとって“初めて”見る光景である。

 そこで何が起こっているのかを俺はあまり知らない。


「元の世界に戻ったら、もっと色々な場所に行ってみるのもいいかもしれないな。まだまだ俺の知らない世界があるかもしれないし」


 綺麗なものも、見たことのないものも沢山あるのだろうか。

 そもそもがあの移動中の草原でなければ、火瑠璃や氷子にも会えず、“フェンリル”のティースとも出会わなかっただろう。

 そういえば、ティースは今日も自分の恋人を探しに行っていたような気がする。


「今日も失敗だろうな」


 この調子だとと思いながら、エサのお肉を少し奮発しておいてやるかと思った。

 昨日は随分と助かった。

 案内役としてティースは最適だった。


 けれどもまさか自分の親兄弟があんなことになっているとは思わなかったと俺は思う。


「まさか異世界でヒーローやら何やらをやっているとは思わなかった」

「そうでしょうね」


 俺の独り言に、答えを返す男がいる。

 そしてこの声を俺は知っている。つまり、


「おまえか、またお前か……」

「そうです、私です!」


 自信満々に答えたこの異世界の神という“ハイパーエンジェル・ラブピース”というおっさん。

 振り返らずとも分かるその存在感に俺は、


「お前、実は知っていたのか?」

「はい、もちろんですとも。世界を股にかけるヒーローたちですからね。まあ、たまに神々と戦闘をやらかしていましたが」

「……全然知らなかった」

「でしょうね。貴方は“平凡”ですからね」

「……そう、“平凡”だ」


 俺はそう、“平凡”な男子高校生なのだ。

 妙に優れた両親や兄弟に囲まれているが俺は“普通”なのだ。

 うん、そうそう……。


 俺がそう心のなかで納得していると、ふうとその異世界の神は嘆息して、


「貴方の能力はご兄弟の中でも桁違いに高いですからね。けれどそれを薄々貴方は感じ取り、押し込め、念入りに封印しすぎているのではないでしょうか」

「……俺は平凡だ」


 その言葉に異世界の神は再び嘆息してから、


「まあいいです。それで、この世界の感じはどうですか?」

「居心地は良いかな。でも戻りたい」

「そうですか、彼女たちのお手伝いはするのですか?」

「それは……約束したから」


 約束は守る、それぐらいは大事なことだ。

 そう俺が思っているとそこで、


「ふむ、相変わらず真面目ですな。ふむふむ、では、そういうわけでまた失礼致します」


 そこですぐにあの異世界の神であるおっさんは消失した。

 だが、ハーレムを作りましょうと言ってこなかっただけでもマシだろう。

 そう深々と俺は嘆息しているとそこで、


「あ、お兄さん。今日はお休みですか?」


 直ぐ側の路地から、あのきつね耳の少女が現れたのだった。











 それからきつね耳の少女と俺は歩き、実は調理場がおかしいことを告げると、


「そうなのですか。お兄さんのご飯美味しかったのに」

「そう言ってもらえて嬉しいよ。また作ったらあげるから。内緒で」

「本当ですか! わー……お兄さん、私のものになりませんか?」


 そこで目を輝かせてきつね耳の少女が俺を見上げてそんなことを言い出した。

 だがその言葉を聞いて俺の頭に“幼女愛好者”“犯罪”“変態”の3文字が浮かんで消えた。

 そちらの趣味はないので、


「ごめん、おれはその……一緒にいる仲間が決まっているから」

「そうなのですか? ではその人達事まるっと面倒見ます。だから、私の家で、お稲荷さんを毎日作ってください」

「……栄養が偏るからそれは駄目だな。野菜も食べないと」

「う~、苦手な野菜が多いんですよ~」


 呻いたきつね耳の少女。

 それを見ながらそこで、そういえばあの時使った魔道具はと思ってポケットに手を入れると消えてしまっている。

 発動すると消えてしまうのかもしれない。


 だから俺は、


「その、この前の魔道具は助かった。まさかあんなことになるなんて」

「? 奥の方まで潜ったのですか? 罠に引っかかってしまったと?」

「奥の方には進んだが、罠に引っかかって巻き添えに」

「それは……ご愁傷さまです。でも役に立てて、お兄さんに怪我がなくて良かったです」


 ニコリときつね耳の少女が微笑んだ。

 その素直な様子に俺はこんな妹が欲しかったと思って……妹の『晩ごはんまでに帰ってくるように』という言葉を思い出す。

 ここに来て数日たっているはずなのに、あちらはまだ一日も経っていないようだ。

 

 どういう事だと俺は思っているとそこで、


「どうしたのですかお兄さん?」

「いや、妹のことを思い出して」

「妹さんがいるのですか? ……私には弟しかいないので、どんなふうなのですか?」

「うーん、活発、かな」


 それにそうですかときつね耳の少女が頷く。

 そこで丁度目の前に公園が現れて、しかも屋台で揚げたドーナツを売っている。

 きつね耳の少女が美味しそうと見ているのを見て俺は、


「俺もドーナツを食べたいから一個おごるよ」

「! そ、そんなわけには……」

「命の恩人だからそれくらいはさせてくれ」

「……は、はい」


 顔を赤くして頷くきつね耳の少女。

 そして俺は、砂糖のまぶされたドーナツを二つ購入したのだった。


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